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否定するなら行動を伴わせろ:SES批判と現実を考える

否定するなら、それに伴う行動を

「その考え、どうなの?」と思った瞬間。
皆さんもあると思う。

先日、こう言い放った人に出会った。
「SESは大嫌いなので、つぶそうとしている」
続けざまに「吐き気がする」とまで。

正直、面食らった。
だが、その意見自体を否定する気はなかった。
俺も過去にSES事業を手掛けていた経験がある。
その闇や課題を見てきた分、「わかる」と思う部分もある。

だが同時にこうも思った。
「否定するなら、どう変えようとしているのか?」

そこで聞いてみた。
「俺も課題に感じている。SESを変えたいから意見が欲しい。どうつぶそうとしているのか?」

返ってきた答えはこうだった。
「企業が自社で開発できるように教育する」

……ああ、なるほどね。
一見するともっともらしい意見だ。
だが、この提案に業界全体を変革する力があるのか?


問題構造を見誤るな

SESに課題があるのは事実だ。
派遣先企業がエンジニアを使い捨てにするケースも少なくない。
派遣元も目先の利益を優先し、エンジニアを守れない場面がある。

だが、なぜこの業界が存続しているのか?
それは、「クライアント」「派遣業者」「エンジニア」
この三者の利益が、絶妙なバランスで釣り合っているからだ。

クライアントは即戦力が欲しい。
派遣業者はビジネスとして成立させる必要がある。
エンジニアは仕事を求めている。

この三者が完全に一致しているわけではない。
だが、少なくとも現状、それぞれが「自分にとって得だ」と思っている。

ここを無視して「教育で解決する」と断じるのは、
業界の仕組みを軽視しているとしか思えない。


本気で否定するなら行動を伴わせろ

もし「SESを潰す」というのなら、
まずは業界の利益構造を正しく理解する必要がある。

「教育」だけで解決する?
それでSESに依存する企業が、明日から自社開発を始める?
甘い。

仮に教育を推進しても、現場の即戦力を求める企業のニーズは変わらない。
結果、SESという仕組みが消えずに残るだけだ。

さらに言えば、教育コストを企業が負担するインセンティブも薄い。
「そこまでやるならSESのままでいい」と考える企業は少なくないだろう。


否定の先にある「解決策」とは

否定すること自体は悪ではない。
むしろ業界の問題を指摘することは価値がある。

だが、そこに伴う行動や解決策がなければ、
ただの空虚な言葉でしかない。

たとえば、本気でSES業界を変えたいなら、
「どうやって利益構造を変えるのか」
「エンジニア、クライアント、業者の三者が得られる新しい仕組みは何か」
これを具体的に提示すべきだ。

理想論ではなく、現実的な戦略を語るべきだ。
そうでなければ、ただの「言いたいだけの人」で終わる。


SES業界の問題解消のアプローチ:私ならこう考える

SESの業態は、プロジェクト型ニーズに依存している時点で、その必要性は消えない。
さらに、労働力の流動化が加速する現代社会は、SESの仕組みにむしろ支えられている。

だが、業界の構造が変わらないからといって、問題点そのものが解消できないわけではない。
むしろ、焦点を定めて問題に具体的にアプローチすれば、SES業界を変えることは十分可能だと考える。


SES業界の課題とは何か

SESにおける問題は、一括りに語れるものではない。
たとえば、次のようなポイントが挙げられる。

  • 虚偽の経歴
    スキルや経験を偽った状態でエンジニアが現場に派遣される問題。

  • 経験の浅いエンジニアの跋扈
    未熟な技術者が業界に蔓延し、現場の品質を下げるリスク。

  • SES業者の過剰増加
    業界全体の質を保てないまま、過剰な業者が乱立している現状。

こうした問題はそれぞれ異なる性質を持ち、包括的に解決しようとすると焦点がぼやける。
したがって、特定の課題に絞って対策を講じるべきだ。


経験の浅いエンジニアが跋扈する問題

特に「経験の浅いエンジニアが跋扈する」という課題に対しては、有効な手立てがあると考える。
この問題を軽視するのは危険だ。現場に不適切な人材が増えると、SESそのものの信頼性が低下し、社会全体の鈍化につながる。

この点で、「教育」が処方箋の一つとなりうるのは確かだ。
しかし、先日聞いたような「自社で開発するための教育」では、本質的な解決にはならない。

自社開発の教育は、それが行き届いた場合、そもそもSESを必要としない状態を目指すものであり、SES業界が抱える既存の問題には関与しない。

SES業界が残る以上、労働力の補完としての役割は続く。
その中で、未熟なエンジニアの増加にどう対応するかが問われる。


私ならこう提案する

もし、SES業界の課題を解決しようとするなら、次のような具体策を提案したい。

  1. 「自社に弱いSESエンジニアを雇わないためのテストを実施する」
    SES業者が送り出すエンジニアのスキルを見極めるためのテストを標準化する。
    これにより、派遣先企業は一定以上のスキルを持つ人材だけを受け入れることができる。

  2. 「経験年数に依存しない評価軸の体系化」
    単に経験年数だけでは測れない実力を評価する仕組みを作る。
    例えば、実践的なスキルチェックや、実務ベースのプロジェクト実績を重視するような仕組みを取り入れる。

これらの対策により、SES業界が抱える「人材の質」に関する問題を大幅に改善できるはずだ。
特に経験年数だけで評価されがちな現状を見直すことは、業界の信頼性を高める上で重要だと考える。


問題解決への現実的なステップ

SES業界を根本から否定するのではなく、存在を前提とした上で問題に対処する。
そのためには、以下のプロセスを意識すべきだ。

  1. 問題の特定
    SESのどの部分に問題があるのかを明確化する。虚偽の経歴か、スキル不足か、業者の増加か。

  2. 焦点を絞った対策の実施
    一度に全てを解決しようとせず、優先度の高い課題から順に解決する。

  3. 業界全体での標準化を進める
    スキル評価や派遣基準の標準化を図ることで、全体の質を底上げする。


否定ではなく進化を目指す

SES業界は、プロジェクト型ニーズと労働力の流動化に支えられた存在だ。
その存在意義を無視して否定だけをするのは、現実的ではない。

しかし、問題がある以上、それを見過ごすこともできない。
具体的な課題に焦点を当て、解決策を講じることで、SES業界を進化させることは可能だ。

単に「嫌い」と言うだけではなく、問題を認識し、解決策を提案する──これが、業界を良くするための第一歩ではないだろうか。


最後に

「何かを否定するなら、それに伴う行動をしよう」。

これはどんな業界や課題においても同じだ。
特に複雑な仕組みや利益構造が絡む話では、
表面的な意見ではなく、具体的な戦略が必要になる。

あなたが何かを「嫌い」「否定したい」と思ったとき。
その先に何を変えたいのか、どんな行動を起こせるのか。

それを問うてみてほしい。

驚くほど多くのことが「否定するだけでは進まない」とわかるはずだ。
そして、行動を起こせる人だけが、本当に世界を変えることができるのだから。

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