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おかえりなさい!放蕩息子サピエンスの「自然界」への帰宅を歓迎する 〜 “サル目ヒト科動物”としてのみなさん #ULPR ⑼ |エボサイマガジン


" 進化が行動に与える影響〔=究極要因〕は、渡り鳥だろうと、他者に印象づけようとする人間だろうと、直接意識されるものではない。────だが、実は至近的な要因による影響の多くも意識されてはいないのであり、それを正しく認識しておくのは大切なことだ。”

たとえば進化の研究者たちは、至近的な要因であるホルモンのレベルと各種の社会行動とのあいだに様々なつながりがあることを発見している。内分泌学者でもない限り、自分のホルモンを的確に思い浮かべることができる人などいないだろう(もちろん、ホルモンが原因で生じる興奮、恐怖、欲情などは体験したことがあるだろうが)。"

"「怒り / anger」の感情もまたホルモンと関連しており、そのホルモンは、先祖たちが攻撃的に行動すると有利になるような状況で流れはじめていたものだった。────だが人は怒っているとき「オレはテストステロンとノルアドレナリンの上昇を体験しており、したがって繁殖の成功を確固たるものとするため、オレの地位に挑んでくるこの人物に怒鳴ったほうがいいな」などとは考えない。むしろ「このクソ野郎ときたら、まったく頭にくるぜ、何様のつもりだ!」と思っているのである。"

D.Kenrick 2011 ────『Sex, Murder, and the Meaning of Life: A Psychologist Investigates How Evolution, Cognition, and Complexity are Revolutionizing Our View of Human Nature/邦題:野蛮な進化心理学』より)


前回からの続き(読まれてない方はまずは以下から)




# “サル目ヒト科動物”としての皆さん: われわれに最も身近なアニマルを生物学の俎上に乗せる❷


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────さて、これまでも述べてきたように、「進化心理学 / Evolutionary Psychology」という学問は、当初は"社会生物学/Sociobiology"という学問の一部に含まれており、その「社会生物学」自体は、リチャード=ドーキンスの名著『利己的な遺伝子』や、E.O.ウィルソンがまとめた『社会生物学』に端を発した

そしてまた、これまで述べてきたように、進化心理学者は(生物学者と同じく)サピエンスを動物だと考えている

それは、「当たり前じゃないか」と多くの人間が口先だけで軽く言うようなレベルではなく、マジの話としてだ。

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────そういうわけで、進化心理学のお隣の学問、社会生物学のラボも少し覗いてみよう。:とはいえ、やっていることはほとんど同じだ。

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【「サピエンスの心と行動のロジックを隠れた生物学的動機から読み解くマガジン。進化心理学のフォースを身につければ、世界が変わって見えてくる。】

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