2024年1月の記事一覧
The Blue Bird【フォトギャラリー短編】
チルチルは言った。
「幸せになりたい。」
チルチルに続けて、ミチルも言った。
「だったら、こんなところにいないで、幸せの青い鳥を探しに行こう。」
さらに、ミチテルも言った。
「今すぐ探しに行こう。」
三人は、家を出た。
三人の目の前を、たくさんの青い鳥が飛んで行った。
「たくさんいるねーーー」とチルチル。
「大きさや形も違うんだねーーー」とミチル。
「どれをつかまえよう?」とミチテル。
チ
ツノがある東館【毎週ショートショートnote】
支配人赤丸剛士、宿泊部長青野正弘、料理長黄島健太郎、仲居長緑埼優子、バイトリーダー黒川亮介は、心を一つに叫んだ。
「ゴーゴーゴー!レッツメイキング!!合体!いけだや別荘!」
怪獣と戦うため、「いけだや別荘」が合体する。
青野が運転する宿泊棟の東館が、天高く浮き上がった。
次に、赤じゅうたんの廊下とロビーを擁する中央棟が続く。中心部は、赤丸が守る。
そして、お食事処「大正ロマン」とキッチンが立ち
アリのちょうじょう【フォトギャラリー短編】
アリのタロウは、今日も行列の真ん中を歩いていた。
昨日も行列の真ん中を歩いていた。
その前の日も行列の真ん中を歩いていた。
もう思い返せない昔の日々も行列の真ん中を歩いていた。
そして、虫の死骸や花びらを見つけると、せっせと運ぶのだ。
仲間と同じように運ぶのだ。
それが、アリのタロウの仕事だった。
それが、アリのタロウの生き方だった。
そのネコに会うまでは。
そのネコは、枝を1本持って、ひ
2024年の生き方【フォトギャラリー短編】
「2024年」
それが、彼の名前だった。
「2023年」でもなく、
「2025年」でもなく
「1024年」でもなく、
「3024年」でもない。
彼は「2024年」だった。
そんな彼は、今年富士山の登頂に挑んでいた。
一歩ずつ山を踏みしめ、進んでいく。
額にうっすらと汗がにじむ。
あと少しで頂上だ。
とうとう、そのときはやって来た。
最後の一歩を踏みしめ、頂上にたどり着いた。
「2024年」
ドローンの課長【毎週ショートショートnote】
「本日をもって課長職は降格。AIを搭載したドローンを課長職とする」
人件費の削減。AIの導入。
わが社は大変な改革を行った。
課長の人件費をドローンの経費に振り替えたのだから、数十台が導入された。一人に1台のドローンの課長が付いてくる。
出張すると、頭上に課長が浮かんでいる。ルートを変えようとすると、警告音が鳴る。
「すみません。トイレに。」
「行ってきなさい。」パワハラ防止機能も設定されて
ホットケーキ303号
今日、わたしは、引っ越した。
ホットケーキの3階。303号室。
上からはバターとはちみつのあまーーーーーい香りが漂ってくる。
もーーーー、サイコーーーー。
床は、ホットケーキ。
天井もホットケーキ。
間に挟まってみる。ふわふわだ。
ちょっとかじってみる。ふわふわでもちもちであまあまだ。
2階の202には、犬が住んでいる。挨拶をしに行ったけど、気持ちよさそうに眠っていた。
1階の101はカエル
noteのベクトル【フォトギャラリー短編】
ベクトルとは、大きさと向きをもった量のことである。
高校の数学に登場する。
一定の長さの直線と矢印で表される。
ああ、記号でも表されたな。OPの上に→。
または、座標でも表されるらしい。このころから、わからなくなってきたのだが、、、。
そのくらいの力を、そっちの方向にね、というイメージ。
さて、note。
スキがたくさんもらえると、とってもよろこぶ。
始めたばかりの初めてのスキは、飛び上が
ジュークとハタチの同窓会【フォトギャラリー短編】
「先生、お元気ですか。私、立岩です。小学校4,5年生のときに担任していただいていました。」
若い女性からの電話。何のセールスかと思ったら、思いもよらない同窓会の誘いだった。私は、小学校の教員をしている。
「担任していただいた先生に、できるだけたくさん連絡しているんです。急だと思いますが、みんな楽しみにしてるので、参加していただきたいです。」
若い女性は、小さくてまじめな印象のあの女の子だった。
田舎の線路、真ん中で手をあげる【フォトギャラリー短編】
電車は、1時間に1本。
もうすぐ廃線になりそうだと噂されて、10年くらいたつだろうか。
中学も高校も、この電車に乗って通った。
小さいころから電車が好きだった。踏切の音を聞くとわくわくした。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
遮断機が降りてくる。
カンッ、カンッ、カンッ、カンッ。
小さな粒だった電車が徐々に大きくなる。
ゴーーーーーーーッ。
過ぎ去った電車は、もう粒に戻っている。
中学校で習っ
ゾウのバオーンと赤ちゃん【フォトギャラリー短編】
ゾウのバオーンは、怒っていた。
「バオオ―――――ン!どうしてみんな、わかってくれないんだ!」
ゾウのバオーンは、泣きながら、怒っていた。
「バオオ――――ン!だれも、だれも、わかってくれない!」
足を踏み鳴らし、声をあげて、ゾウのバオーンは泣いた。
森に咲いていた花は折れて、踏みつけられた。
バオーンの声を聞いた森の動物たちは、みんな身を隠した。
バオーンはそんなことお構いなしに、泣き、怒り