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教員時代の実践記録(2012~20)

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公立高校の教諭として勤めた8年間(2012.4〜2020.3)の記録です。授業実践やクラス運営における生徒たちとの関わりについて、自分が実践してきたことを書き留めています。これか…
公立高等学校での実践と経験を有料マガジンにまとめました。授業が成立しなくて悩んだり、働き方に疑問を…
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記事一覧

大学院生と現役教員の架け橋(研究と現場をつなぐ)

(2025.2.25更新)2020年にオランダへの移住を決定し、残りの1年で公教育の中でやっておきたいと思っていたことの3つ目は、「現場の教員」と「教職大学院の学生」をつなぐ活動です。インターンシップに来てくれた教職大学院生との話し合いの中で、研究と現場が手を取ればもっと良い教育の実現に向かえるのではないかというささやかな疑問から企画することにしました。 大学院生のインターンシップ 私が勤めていた高等学校では、大学からの実習生だけでなく、教職大学院の学生の実習も請け負ってい

高校生が「読書」の魅力を感じる読書会

(2025.2.25更新)私が日本の公教育から一度離れる前に公立の高等学校で取り組んだ実践内容についてまとめています。この記事では、特に高校生に「読書」の大切さをどのように伝えるのかを記録しています。 「短絡的思考」への危機感 私が高等学校で授業をしていた頃、学年を問わず「社会とのつながり」を生徒に意識してもらうために、ニュースや自分が読んだ書籍を紹介して、授業の初めにブレインストーミングやディスカッションをする時間を設定していました。  生徒達にこれまでしてきた「言語活

アクティブで結果も出せた公民「政治経済」の受験対策(2019年実践記録)

(2025.2.24更新)ここでは、私が日本の公教育から一度離れる前に公立の高等学校で取り組んだ実践内容について、特に大学受験を控えた生徒が多くいる3年生に関する授業面での実践記録をしています。 生徒からのメッセージ 私が公立高校で勤めた最後の年は、1年生の担任でありながら教科担当としての関わりはほとんどなく、自分のクラスの世界史のみでした。そして残りの7クラス14コマは、3年生の授業を担当するという異例の担当になっていたのです。これまでほとんど関わりのなかった3年生と苦し

日本に残った1年で私が高校現場で取り組んだこと(概要編)

(2025.2.24更新)私たち家族は現在オランダで暮らしています。妻と娘は2019年の5月、私は2020年の3月に移住してきました。本当は家族で一緒に移住するつもりでしたが、私が日本の高等学校でどうしてもやりたいことがあったので、1年だけ日本に残らせてもらうことにしました。移住までに残された1年の間に、公立高等学校で私が取り組んだことをいくつかの投稿に分けて記しておきたいと思います。  この記事の表紙として掲載している写真は、私のプロフィール写真でも一部使っているのですが、

授業が成立しない学校で何をしたのか?

(2025.2.24更新)先日、2008年に出版された林壮一氏著『アメリカ下層教育現場』(光文社新書)を読みました。この本を読むにつれ、私自身の教員として経験したことをいろいろと思い出しました。大学を卒業し初めて勤めた高校で、授業を成立させることが難しく、教員という仕事に絶望を感じたり、自分なりに授業を成立させるために試行錯誤を繰り返したことをここに記録しておきたいと思います。 孤独を感じていた新人教員 私が初任校で勤めていた時のことを思い出したきっかけは、この本を読んだこ

自分の意見を自分の言葉で言えますか? - 高校生の面接指導で感じる課題

(2025.2.24更新)オランダに来てから、日本で教員として働いていた時に経験して気づいたことを記録しています。私は授業と面接・小論文指導に大きなやりがいを感じており、生徒たちが「自分で考えたことを自分の言葉で話す場面が十分に確保されていないのではないか」と感じていました。 授業へのこだわり

生徒のための業務で、目の前の生徒への個別対応ができなくなる

(2025.2.24更新)私がかつて勤めていた公立の高等学校の現場では、勤務時間内には到底終えられない業務量の仕事を抱えることで、生徒への細やかな対応ができなくなってしまう状況が多々ありました。生徒のためにいろいろやっているつもりが、結局のところ目の前の生徒を大切にできていない状況が発生していました。今日はそのことを記事にしたいと思います。 人物重視の入試が増えている 私は工業高校で6年間、普通科高校で2年間社会科の教諭として働きました。進路指導部に所属していたことと、3年

入学式で伝えたこと@高校1年生担任(2019年度)

(2025.2.22)こちらの記事では、平成31年度に「高校1年生の担任」をした時の取り組みについて書き留めています。  私がかつて勤務していた学校は、ほとんどの生徒が4年生大学に進学し、部活動や学校行事も盛んです。多くの生徒が国公立大学や難関私立大学に進学します。そんな学校なので、生活指導よりは進路指導の方が忙しい学校です。生活指導に関して言えば、前の勤務校では授業中の妨害や対教師暴言、生徒同士の喧嘩、喫煙などの事案が会議の議題になることもありましたが、その学校ではほとん

「考える」社会科への挑戦 中学生の高校授業体験

(2025.2.22)私が勤務していた高校では、中学生が学校見学を兼ねて授業体験をするというイベントがありました。 社会科を勉強する時のイメージ 私が学生の頃に抱いていた社会科の勉強のイメージは、ひたすら効率よく暗記していくことが重要で、なるべく多くの知識を暗記できていることが良いことだと思っていました。  そして高校に入るまでは、私自身も短期的な暗記によって高得点を取ることができました。それが、高校の定期テストまでは同じような方法で何とかなるとしても、大学受験の勉強となっ

国際バカロレア(IB)の魅力と「逆向き設計」の見直し

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国際バカロレア(IB)を学び、公立高校の社会科の授業で何を変えたのか

(2025.2.22更新)前回は、私が公立高校の現場で働きながら、父親になったことがきっかけで、今の学校教育に疑問に抱き国際バカロレア(IB)のカリキュラムに出会った話をしました。  今回は国際バカロレア(IB)について学んだその後、私が勤務していた公立高校に戻り、どのように授業を変えたのかについてまとめます。IBというのは、簡単に言うと「探究や概念をベースとして学ぶ」のが特徴の教育です。IBがどういう学びなのかについては以下の記事を参照なさってください。 「木を見て森を

自立と探究を教育の根幹に

(2025.2.22更新)ここでは、私が2019年国際バカロレアのカリキュラムに出会い感じた魅力についてまとめています。探究をベースとするIBに出会ったことで、今の日本の学校教育に対する疑問が大きくなり、自分自身も探究できる人間になろうという気持ちを持ち始めたのです。 教員が一人の子の親となって学校教育の見方が変わる現場で感じていた今の学校教育に足りないもの  私は2012〜20年まで、日本の公立高等学校で社会科教諭として働いていました。教員生活はとても充実しており、忙し