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生徒のための業務で、目の前の生徒への個別対応ができなくなる

(2025.2.24更新)私がかつて勤めていた公立の高等学校の現場では、勤務時間内には到底終えられない業務量の仕事を抱えることで、生徒への細やかな対応ができなくなってしまう状況が多々ありました。生徒のためにいろいろやっているつもりが、結局のところ目の前の生徒を大切にできていない状況が発生していました。今日はそのことを記事にしたいと思います。


人物重視の入試が増えている

 私は工業高校で6年間、普通科高校で2年間社会科の教諭として働きました。進路指導部に所属していたことと、3年生の教科担当になるのが多かったことから、学校全体の面接指導に加えて、面接や小論文の添削を個人的に請け負う機会がたくさんありました。

 最近では、総合型選抜(旧AO、公募制推薦)での「人物重視」の評価をする入試が活発に行われており、それはとても良いことだと考えています。しかし、受験人数が全体に比べて少ないことから、それに対応できる仕組みがまだ学校にはありませんでした。そのため、夏を過ぎたあたりから総合型選抜(AO、公募制推薦)を希望する生徒は、志望理由書や推薦状の依頼、面接や小論文の準備を生徒は基本的に自分で進めていかなくてはなりません。

 毎年夏休みに入る前に、生徒から「面接や小論文をどのように準備して良いのか分からない」という話を聞いていました。
 面接や小論文は、自分の考えやこれからの自分の生き方と向き合うことができる大切な活動ですそのため、3年生で面接練習や小論文の添削を希望する生徒は、全員請け負うことにしていました。

個別の生徒対応で業務がパンクする

 2019年から勤務した普通科高校では、秋の面接・小論文対策、センター試験や私立大学の対策、国公立(2次)試験対策(主に小論文)など、受験に向けての準備が本格的に始まりました。大学受験する生徒が多い高校では、入試方式も多様化しているため、夏から翌年2月までは充実しながらもかなりハードな日々でした。
 当時の私は1年生の担任でもあったので、その間「授業づくり」や「学年・分掌の業務」と同時進行で仕事をこなすことはかなり困難でした。当時は教務部に所属しており、テストの時間割や1年生が次年度の科目選択とクラス編成、テスト毎に行われる成績処理に加えて、進路指導部の面接の手伝いもしていました。こういった状況の中で、昼休みと放課後は事前にアポを取ってもらった個人面接や集団面接、小論文の添削に充てていました。

 ただ、授業の空き時間と勤務時間の前後を使って授業準備やその他の業務をこなしていたので、月の残業時間が数ヶ月間100時間近くになってしまい、管理職から注意を受けることもありました。
 もちろん働きすぎてしまうと健康上危ないのは百も承知です。その都度、生徒に直接影響の少ない学校内の業務整理を訴えたのですが、こちらの業務の管理ができていないと言われてしまい、とても残念な思いでした。

 私としては子ども達のために日々業務をしているのであり、個別の生徒対応の時間が最も大切だと考えていたので、業務が忙しいからと言って生徒を追い返してしまうことに、大きな矛盾を感じざるを得ません。客観的に見ても、学校全体でパンクしている状態で、その業務を整理す流のが管理職の仕事なのではないかという疑問がずっと頭の中にありました。

私たちの一番の仕事は一体何なのか?

職員室に来た生徒に「今忙しい」

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公立高等学校での実践と経験を有料マガジンにまとめました。授業が成立しなくて悩んだり、働き方に疑問を持ちつつ自分ができることを考え取り組んできました。 ・工業高校で出会った専科の学びの重要性 ・アクティブラーニングで学ぶ受験対策の授業 ・高1世界史での探究授業 ・大学院生と現場教員の交流会 ・受験が終わった高3生との読書会 など学校現場で取り組んできたことを全て載せています。

公立高校の教諭として勤めた8年間(2012.4〜2020.3)の記録です。授業実践やクラス運営における生徒たちとの関わりについて、自分が実…

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