画廊ではたらく大北良彦

彩美画廊というアートギャラリーをしています https://www.ambistyle.co.jp/

画廊ではたらく大北良彦

彩美画廊というアートギャラリーをしています https://www.ambistyle.co.jp/

最近の記事

リンゴとアートとエロス

神々の女王ヘーラー・知恵の女神アテーナー・愛と美の女神アプロディーテーの中で誰が最も美しいかを決める審判を託されたパリスが黄金のリンゴをアプロディーテーに渡すシーン。 そらそうだ。アプロディーテーは愛と美と性の女神なのだから。 西洋絵画におけるリンゴには意味がある。アダムとイブがリンゴを食べたことで楽園を追放されたことから、原罪の象徴。 また、その甘さと香り、形からエロスとも結びつけられた。 丸い形が女性の乳房を思わせる。 また2つに割られた果芯は女性器を思わせると

    • ルーベンスの三美神

      左から愛欲、純潔、美。 愛欲と純潔というのは相反する気もするけれど、それを美が和解しバランスをとっている。ギリシャ神話を主題として描かれた作品です。 ラファエロも三美神を描いているけれど あまり可愛くない。 ルーベンスの方がずっといい。 好き。 ぎすぎすした時代。 やせ細ることこそが美という価値観は終わりにしたい。 大いに食べ、飲み、歌おう。 ルーベンスの描く姿こそが「美」だと思う。

      • バンクシーとパレスチナ

        「Love is in the Air」 バンクシーの作品の中でも有名な作品。 オリジナルはパレスチナの壁に描かれています。 暴徒のような姿の男が火炎瓶でなく、花束を投げようとしている。 暴力でなく愛をもって戦おうというメッセージでしょうか。 バンクシーにはペストコントロールという組織があり、そこがバンクシーの真贋を証明し、作品の流通も管理しています。 なのでバンクシー自体はギャラリーと接することはありませんが、作品販売の利益はちゃんと入るようになっています。 バンクシー

        • 星野リゾートの教科書

          先日「星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書」を読んだ。 なかなか良かったので「星野リゾートの教科書」も読んでみた。 星野佳路さんは、アメリカでホテル経営を学ばれた方です。勘、経験、度胸で商売してる人ではない。 そんな星野さんがさらに学ぶために読んできた経営の教科書を紹介してくれている。 経営学の学者が書いた本は机上の空論であり、経営者が書いた実学に劣るという考えもある。だけど星野さんはそうではないとおっしゃる。 経営者は自分1人の経験。 学者は数多くの経営者の事

          積みわら~クロードモネ

          モネは積みわらを多く描いている。 1883年ジヴェルニーに住まいを移した。 それ以来死去する40年あまりに描かれた作品の多くは、自宅から3キロメートル以内の風景を描いたものです。 積みわらも、その作品のひとつ。 モネは多くの積みわらを描いている。 その多くは風景画としての積みわらですが、この作品には人物が描かれています。 帽子を被った少年はモネの次男、ミシェル。白い服の女性は後に妻となるアリス。 だからこの絵は風景画であるとともに、家族の肖像と言える。 2人がいるだ

          積みわら~クロードモネ

          画廊は閉鎖的で入りにくい

          「画廊は閉鎖的で入りにくい」 と言われる。 ごもっとも。 たしかに閉鎖的です。 窓はない。 あっても少ない。 画廊の設備というのは つきつめていうと壁。 絵をかける壁。 床面積でなく壁長勝負。 だから窓は少なくなる。 それに太陽光は、なによりも敵。 だから、閉鎖的になってしまう。 閉鎖的にして高級感をあおってるわけじゃないのです。 どうぞお気軽にお入り下さい。 彩美画廊 大北良彦

          画廊は閉鎖的で入りにくい

          画廊の入場料

          勇気を出して入ってこられたお客様 「見せてもらってもいいですか?」 「入場料は?」 だいじょうぶです。 画廊とは、美術館でも、会員制クラブでもありませんから誰でも、何歳でも、どこの国の人でも入れます。 もちろん入場無料。 地方だろうが、銀座、日本橋だろうがおんなじです。 みなさんの住んでるとこにも画廊があるはず一度その扉を開けてみてはどうでしょう。 彩美画廊 大北良彦

          現代アート大丈夫?

          今のの現代アートはバブルな気がしてならない。 尖りに尖った前衛的で刺激的なストリート系のアートを若い起業家か資産家が買い漁ってるだけに見える。 現代アート面白いけど 「それにそんな価値ある?」 「あなたそれを家に飾りたい?」 とも思う。 オークションで有名どころをバンバン落札してる方がいた。落札するたびに隣の家族とハイタッチ。 「イエー!」 STAR FUCKER というスラングがあるらしい。 自分の目やポリシーでなく、美術誌によく出る有名アーティスト、オークショ

          アートフェア東京2024

          アートフェア東京で撮った写真や、カタログを娘婿に見せた。 「これがアートなんですか?」 まあそうなるよね。 東京アートフェアには国内外のギャラリーが最先端の作品を出してくる。 綺麗な風景画や静物画、美人画などはほぼない。尖りに尖った作品を尖った方々が販売している。 とても刺激的で面白い。 緊張感がある。 だけど、ぼくは疲れた。 味の濃いラーメンはたまに外食で食べるにはいいけれど、家庭料理として3食食べるには重い。それに体にも悪い。 東京アートフェアは尖った刺激的

          星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書

          息子が「星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書」という本を購入。 そして娘に渡した。 「画廊やるんやろ?」 ということでファミリービジネスがスタートした。 同族経営、世襲という言葉をネガティヴにとらえる方がいることは知っている。 ジェフベゾスや孫正義のような創業起業家に格好良さを感じるのもわかる。実際創業者のパワーというのはすごい。 だけど企業の命題とは永続性にあると私は学びました。 近所の美味しいうどん屋が閉店しました。売上不振でも債務超過でもありまさん。後継

          星野佳路と考えるファミリービジネスの教科書

          しばられたキューピッド

          今回はレンブラントの「ダナエ」 西洋美術、古典美術は神話、宗教を主題としたものが、多く、ぼくらにはなんとも馴染みがない。 ダナエと言われて「ああアレね」と言える方は、よっぽどの勉強家か、ギリシャ人。 ダナエとはギリシャ神話に登場する娘。 アルゴス王アクリシオスの一人娘。 王はある日神託を受ける。 「お前の娘が男の子を産む。ほんでもって、そいつがお前を殺す」 親兄弟親族といえども、権力、政治、ビジネスの世界では敵になりうる。 孫に殺されちゃたまらんと考えた王は、ダナエを

          しばられたキューピッド

          ポロックの点と線

          ポロックは高評価なアーティストだが、一般観衆の意見はわかれる。 「絵はわからない」 「アートはむずかしい」 と言われる原因の一人でもあるでしょう。 ポロックはアクションペインティングと呼ばれる。 その言葉の響きと、作風から、絵の具をたたきつけているようなイメージを受ける。 そう思っている人も多いと思う。 絵具の飛翔、飛び散りに見える。 だけど、その作品をよく見ると、それだけではないことがわかる。 叩きつけられたり、落とされた飛翔ではない、線が多い。 下の写真を見る

          アートは癒しなのか2

          アートは癒し。 それはほんと。 だけどアートの力は癒しにだけ使われるものではない。 それに人々がアートに癒しだけを求めているわけでもない。 静かなクラシックを聴きたいときもあれば、激しいパンクが聴きたいときもある。 フォークソングに涙したい人もいれば、ハードロックで拳をふりあげたい人もいる。 クラシックが高尚で、ロックが低俗という単純なものではない。 心静かに休日を楽しむ人も、仕事中はアグレッシブにテンション上げているかもしれない。 絵もそう。 ゆったりと、心静か

          画廊というビジネスモデル

          古典落語を聴きます。 その中に出てくる職業で現代に残っている職業はほぼありません。 「ゴボウ売り」という職業が出てきます。「ごんぼ、ごんぼ」といいながらゴボウを売る職業です。現代にはありませんよね。 古典から今も残っている仕事と言えば、夜鷹つまり娼婦と、飲食業かな。 とは言え娼婦も、街に立ちゴザや、小屋での仕事から、店舗型ビジネスとなり、現代ではスマホによるデリバリービジネスへとイノベーションしてきました。 落語には屋台のそば屋や、うどん屋、団子屋も登場します。これも路上

          画廊というビジネスモデル

          アートは癒しなのか

          「アートは癒し」だと言われる。 アートヒーリングとかアートセラピという言葉もある。 絵、彫刻、書、詩、音楽、香は人を癒す。 だけどアート=癒しというのはちょっと違う。 たとえばピカソのゲルニカ スペイン内戦時、空爆を受けた町ゲルニカを主題とする絵。 絵を見た感想、受ける心情は人それぞれなので、一概には言えない。 少なくとも、ぼくは癒されない。 名作だとは思うけど、我が家のリビングには掛けたくない。 戦争の悲しさ、悲惨さ、反戦のことは大事なことだが、それを365日見つ

          我が子を食らうサトゥルヌス

          あるときサトゥルヌスは「お前の子どもがお前を追放するぞ」という予言を受ける。 王座から追われることを恐れたサトゥルヌスは、生まれてくる子ども達を喰っていく。 この絵はそんな神話をモチーフに描かれた。 ゴヤの代表作の一つ。 若い時は年功序列なんて気にしない。 我が手腕で年寄りどもを押しのけ、上へと登る。 老人のやり方、考え方は古い。老いたるものは去れ。とっとと引退しろ。 そんな若者もいづれは年をとる。下からは力ある若者達の足音が聞こえてくる。 怖い。自分がやってきたことを

          我が子を食らうサトゥルヌス