秋ピリカGP応募作品「はじまりをとじる」
溶かしてしまうそうだ。
壁面いっぱいのファイルに目をやる。
入社して初めに配属されたのがここ、資料管理室。あれから20年余、ラベリングとファイリングの日々は時代の変化とともに少しずつ形を変えていった。私は同じ場所で戸惑いながらも変化を受け入れ、現在に至っている。
「のぞみ君」
段ボールの向こうから室長の声がした。
「今日はもう遅いから適当なところで切りあげていいですよ」
偶然にも同じ田中姓だったので「のぞみ君」と下の名前で呼ばれてきた。
「でも明日1日しかありませんし」