勿忘草(わすれなぐさ)
素敵なんだけど、ちょっと長くなった呟き。
私が愛してやまない、大好きで素敵なものを語ります。
「素敵」がテーマの物語集。
短歌と俳句と詩で素敵な世界をうたいます。
まだジャンル分け出来ないけど、素敵だと思った作品集。 ジャンル分けしたら、別の場所に移す可能性があります。 ※2024年10月10日更新 【大好きな本を語る】のシリーズは、【大好きなシリーズ】というマガジンにお引越ししました。
バスが止まった反動で、体がガクッと傾いた。 前につんのめりそうになったのを、足で支える。 秋の行楽シーズン真っ只中の日曜日。時刻は午後2時39分。バスは満席だ。私は1番後ろの席の真ん中に座って、うたた寝していた。 「寺町に到着致しました。お降りの際はお足元にご注意ください。寺町に到着致しました、、、」 寺町か。 銀杏並木で有名な商店街がある町だ。 私が降りる予定の停留所は、葉山四丁目。 頭の中で、到着予定時刻を確認する。 寺町の次は、大杉神社の近くにある、大杉。 そ
ちょっと言いにくいのだけど、語る。 私は、昔から生野菜が苦手だ。 美味しく食べている方を見ると、尊敬する。 どうにも、苦手なのだ。 味覚とは恐ろしい。 一度苦手を意識すると、苦手だと思ったものが入った料理は、どれほど細かくても濃い味付けでも気づく。なんなら、食べる前に匂いで気づく。 生野菜が苦手な私にとって、サラダは遠慮したいものだ。だから、ちょっとオシャレなレストランに行きたくても、前菜のサラダが怖くてなかなか行けない。美味しくいただけないのに、行くことは出来ない。
「好きな本は何?」 そう聞かれて、 さすがに和歌を答えるわけにはいかないので、番外編を作りました。 1,始まりの和歌 どんな形で語るか、悩みました。 大好きな和歌があるのです。 その1首の和歌について語りたかったのです。 しかし、、、 「これ、本を語ってるんじゃなくて、和歌を語ってるんだよな~。」 そう思うと、なかなか語れませんでした。 そこで、よく考えてみました。 この世界には、私が大好きなものがあふれています。大好きな本を語り始めたら、大好きなものをもっとも
季節さえ塗り替え進む北の風それでも変わらずまつたよりなく 【できるだけ変わらずにまつ物語】 空の色が変わった。 青より淡い空色は、冬の訪れを告げる。 朝露に濡れる木々は、まるで秋を惜しんで泣いているようだ。木から落ちた葉は土へと還り、だんだん形を失っていくのだろう。 玄関を出てすぐ、冷たい空気を吸い込んで、そっと白い息を吐く。私が吐き出した息は空に向かって、霧散した。 秋から冬に変わる瞬間は、何故こんなにも心細いのだろう。そんなことをふと思う。寂しさを振り払って、落
かちゃかちゃ、かちゃかちゃ 凄まじいスピードでキーボードを打つ音がする。 僕はそっと隣のデクスを見る。 書籍も書類も角を合わせてきちんと揃えられたデスク。そこに、灰色のビジネススーツをキリッと着こなし、背筋をピンと伸ばして、手元を一切見ずにキーボードを叩く、僕の同期がみえる。 ここ、岬図書館で司書を務める僕と彼。 彼は今、来月この図書館で行われるイベントの資料を作成している。 時間通り、規則通り、一切の無駄がないロボットのような男。僕は、彼の背中に電源スイッチがあっ
冬を迎える夜空が綺麗だったので、語る。 「私には、他の人には見えないものが見える。」 と、言うとかっこいいがなんてことはない。 『乱視』なのだ。 だから、物がダブって見える。 例えるなら、 陰影をつけた文字のような、 水鏡に映る景色のような、 物と物の境界線が曖昧な視界なのだ。 幼い頃、左目が乱視になった。いつからなのかは分からないけど、生まれつきではなかったらしい。成長するにつれ、右目も乱視になった、、、らしい。 ある日突然乱視になった訳ではない。ちょっとずつちょ
水鏡揺れる世界の境界で微睡む落ち葉夢か現か 【どこかの物語】 落ち葉を踏むと、かさりと音がした。 下を向く。 私が歩いてきた道は、砕けた落ち葉が広がっていた。 そのまま、振り返る。 町の中心にある、立派な日本庭園。 ここには、江戸時代この地を治めていた藩主が建てた茶室と、それを囲む池がある。池の周りには、楓、松、もみじ、いちょうが所狭しと身を寄せている。 この庭園の大きな池には、言い伝えがある。 もしこの水鏡を覗いた時、水面が全く揺らいでおらずはっきりと景色が見
ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁぁぁざぁざぁぁざぁぁぁ 土砂降りの中を走る。 ざぁぁざぁぁぁぁざぁぁぁぁぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁぁぁざぁ 前を走る男の背中が、激しい雨のせいで霞む。 この男をここで逃すわけにはいかない。 俺は、右に左に動きながら走るビジネススーツの男を睨む。 逃がさない。 この詐欺師を。 ざぁぁぁぁぁぁざぁぁぁざぁぁぁぁぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁざぁぁぁぁぁぁ はぁ、はぁ、はっ 整備されていないガタガタするコンクリートの道を、俺も男
「さっき見たんだもん!たくさんの蝶が飛んでたんだ!!」 カフェで面接に向けた資料を読み込んでいた私は、隣の席から聞こえてきた男の子の声に、顔を上げた。 隣の席には、6歳くらいの男の子がいた。リュックを隣に置いて、大きな図鑑を広げて、向かいにいる母親に図鑑を見せていた。銀杏色のセーターを着たお母さんは、ニコニコしながら頷いていた。男の子の話は話半分で聞いているようだ。 男の子は、お母さんが聞いていないことを悟っているのか、ムキになって言い募る。 「本当だもん!図鑑にない
もしも今世界が終わるというのなら 【翳る日さえも物語】 夜のような昼が始まった。 大きな星が太陽に重なる。 明るい空色の中に少しずつ暗い色が溶けていく。 薄暗い空の片隅に、おびえたような雲が身を寄せ合い、悲鳴のような、掠れた風が吹き抜けた。 もうすぐ、太陽を飲み込んだあの星が落ちてきて、世界は終わる。 僕は草原で寝転んで、ただ終わりゆく空を見上げていた。 一週間前、世界の偉い人が言った。 「この星に、巨大な隕石が落ちる。誰も止められない。」 たくさんの反論が
たまに、面白いことが書きたくなる。 コントみたいな、ギャグみたいな、面白いこと。 ただ、ちょっとコント風にした物語や言い回しは、私には向かないようで、せっかく思い浮かんでもうまくそれらの言葉を使えないのだ。 ならば。 全部、ボツ!!! しかし、駄々っ子な私が言う。 「せっかく書いたのに、、、。」 「面白いと思ったのに、、、。」 なら、全部まとめてボツ集にしよう!! そう、これは。 物語か詩か短歌か俳句かエッセイのネタかなんかになりそうかなぁと思ってとっておいたけ
深紅の楓に彩られた大きな湖。 そこに大きな青い橋が架かっている。 橋を渡り切った先には、T字路。 左に進む。 そこにある、眩しい銀杏が並ぶ細くて急斜面の坂道。 俺は、今、この道を自転車で進んでいる。 ポタリ、ポタリと汗が止まらない。 晩秋の風さえ、今は心地いい。 足が引き攣れて痛い。 しかし、足を止めるわけにはいかない。 ペダルを漕ぐ足を止めたら、すぐに後ろに戻されるだろうから。 前に、前に進む。 秋の眩しい日差しの向こう、坂道の頂上に赤い鳥居が見えてきた。 つうっ
集中しすぎて頭が痛くなってきたので、一旦語る。 大人になってから、 時間を忘れて集中出来る機会は減った。 仕事もある。 生活もある。 常にマルチタスクが求められているような気がするのだ。あれも、これもと追い立てられて、いつの間にか自分の全てを1つのことに割くことは出来なくなった。 大人になるとはそういうものだ。 そんな風に思っていた。 そう思っていたが、違うようだ。 涼し気な秋風の中に、凛と澄んだ冬の風を感じるように、唐突に新しい風が私の元にやってきた。 「わか
「好きな本は何?」 この質問に、「美術館で買った本でもいい?」と変化球で答えても良いでしょうか? 1,その本は謎 本というものは、奥深いものです。 今回私が皆様に語りたいのは、とある美術館で買った本です。それは、ある本の「オマージュ」作品の絵本だそうです。 「オマージュ作品」。 また新たな大好きが出来ました。 ですので、、、 またも、語ります!! 2,大好きな本 オマージュ それでは発表します。 私が好きな謎の絵本は、、、 『EDNE』 junaida
レギュラーから外された。 何のためにこの頑張ってきたのか、もう分からなくなった。 だから、今日は体調が悪いと言って部活を抜け出してきた。 とぼとぼと音がしそうなほどゆっくりと、私は歩いた。 楓がはらはらと落ちてくる。 私を慰めるように、時折肩を撫でながら、優しく降る。 でも、今はそっとしておいてほしかった。 右手には相棒のフルートが入っているケースををぎゅっと握った。 10分ほど歩いていたら、遠くから、わいわいと声が聞こえてきた。お好み焼き、いやたこ焼きだろうか。屋
「ぽーほけきょ」「?」ちょっと違うねことりさん 【ちょっと違う物語】 やっと銀杏が黄色くなった。 今や文化遺産になりかけている木造校舎の入り口。 そこに大きな銀杏が一本立っている。 その銀杏が、それはそれは見事に黄色に染まっていた。 よかった。 私は安心した。 周りの銀杏は色づいているのに、この銀杏だけ黄色くならなくて、心配していたのだ。 3連休明けの今日。色づいていないかな、と思って早く登校してきた。 朝の学活が始まるまで、まだ時間がある。 綺麗な黄色の葉を