勿忘草(わすれなぐさ)
「素敵」がテーマの物語集。
素敵なんだけど、ちょっと長くなった呟き。
まだジャンル分け出来ないけど、素敵だと思った作品集。 ジャンル分けしたら、別の場所に移す可能性があります。 ※2024年9月18日更新 【短歌】【俳句】は『素敵な季節のうた』というマガジンにお引越ししました。
移りゆく季節の素敵を集めた、詩歌集。
大きなピアノが置かれているステージ。 そのステージは、スポットライトと月光に照らされている。丸いステンドグラス製の天井窓から、月光が差し込む。月光を受けたステージは、神秘的で小さな物音ひとつ許さない静謐さを秘めている。 客席には誰もいない。私の他には誰もいない。 今にもコンサートが始まりそうなほど会場は整っている。 コンサートホールの責任者である私は、明日行われる有名なチェリストの復帰コンサートのために、ステージの最終チェックをしていた。 もう大丈夫だろう。コンサート会場を
舞台裏へのご案内 この度は、こちらの作品にお越しいただき、誠にありがとうございます。 ○この作品は、『【物語】共演者』をご覧になってからお進み頂くことをお勧め致します。目次より、『【物語】共演者』へご案内いたします。 ご準備いただけましたら、 どうぞこちらにお入りください。 【物語】共演者 ※この下から『【物語】共演者の舞台裏』となります。 【物語】共演者の舞台裏 ~始まりのチェロ~ 最初は、背中の温かさ。 次に、わたしを圧倒する光。 そ
「おじさん、どうしてこんなことするの!!!ひどいじゃないか!!!!」 茜色に染まる空と美しい桜の花びらを見ていたら、突然少年に怒られた。少年の短い髪が怒りで膨らんでいるように見える。 私はただ、写真を撮っていただけだ。 写真を撮って何が悪い。 少し腹が立った。 だから私は、少年に向かい合い大人の威厳を見せるため、話しかけた。 「なんだい、君。大人に対して失礼じゃないか。」 私の様子におびえることもなく、少年は一歩私に近づいて言った。 「桜の木は弱いんだ。枝が折れた
おせっかいだけど、語る。 1, 切ない、言葉達 「自分がいなくなって大丈夫。」 「自分には何にもない。」 そんな言葉を聞いた。 なんだか胸が苦しくて、語りたくなった。 もし時間があったら、ちょっとだけ耳を貸して。 2, 何色? ねえねえ、今見えている空って何色? 青?蒼?碧?あお?アオ?blue?空色?水色? それとも、黒?紺色?白?黄金色?グレー?鼠色? 私が見えている空はね。 雨を連れてきそうな鼠色の雲と雨を阻止しようと戦う太陽が混ざった、白と鼠色と薄橙の
ラベンダーのにおいがする。 雨のにおいと混ざって、ラベンダーの香りが閉じ込められてしまったようだ。 濃い紫の香りが、あたりを包んでいる。 目の前には、紫の海が広がっていた。 波のように、風に吹かれた紫の花が揺れている。 梅雨。 雨と雨の間にできた曇り空を狙って、私は紫の花を摘みに来た。 小さな花一つひとつを見廻る蜂や蝶の邪魔をしないように花を探す。 誰もいない花を見つけたら、小さな花と葉が2つ、3つ目までのところを鋏でちょんと切る。 ラベンダーの花は、それ以上切ってしま
完成した呟き。 四季の移り変わりと連続性を詠みたかったから、最近、季節外れのうたを創っていた。 読者様にサプライズしたかったから、一つのテーマだとばれないように単発で投稿した。(多分気づかれてない。) 四季がそろった今、一つのマガジンにした!! 『素敵な季節のうた』完成!!
汽笛鳴る海猫歌う夏の空 白波拍手港の調べ 【旅立つ夏の物語】 ブォオオオオン、という船の汽笛が鳴った。 その音に惹き付けられたように、海猫が出港間際の船に寄り添う。白波がバシャバシャと大きな拍手を上げる。 そうして、波と海猫を引き連れて、船は水平線に向かう。 私は、コンクリートでできた港で海に出る船を見送りに来た。潮風が肌にまとわりつく。 今日は、ずっとそばにいた息子の門出。 嬉しくもあり、寂しくもある。 船の中に消える息子を見た時、うみねこのように船について行けたなら
ドッキリが好きな呟き。 ふふふ。 実はあと一つで、とあるシリーズが完成する。 何故か「季節外れ」の歌ばかり読む私の、ちっちゃなちっちゃなサプライズ。 明日完成だー!! へへへ。 明日はどんな言葉を紡ごうか。
枯れ木咲く寒さにもえる名はりっか 【冬の物語】 ふわふわの布団を踏むような覚束ない足取りで、私は家に向かう。 新雪はふわふわふかふかなのだ。 午前中にしんしんと降り積もった雪が、歩く度にブーツの中に入ってくる。足先が冷たくなって、ジンジンしてきた。 はあ。歩きにくいし、寒いし、冷たくて痛いし。 雪国なんて散々だ。 ぶつくさ文句を言う。 足元に気を取られていたら、おでこがヒヤッとした。頭になにかが当たったようだ。 なんだろう。 すっと視線を上げる。 真っ白な花びらが
首都圏観光に来たぜ!! 長かった夜行バスを降りて、俺は両手を天高く伸ばした。片道5時間かけて、やっと新宿についた。 空を見上げようと目線をあげた。 しかし、空よりも先に近代的な広告塔が見えた。3D眼鏡もかけていないのに、広告から猫が飛び出してきて驚く。 辺りはざわざわしていて、どこを見渡しても人人人。広告の音に混ざって、信号機が黄色になった瞬間に出す警告音が鳴り響く。 俺は、近未来的な都会の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。 田畑しかない田舎で、一生懸命農家のお手伝いア
この町の図書館には、屋上に大きな望遠鏡がある。 静かな町の、静かな図書館。 僕は、夏休みの自由研究の課題を探すため、2階建ての図書館にやってきた。2階建ての図書館の入り口には、掲示板があり、小学校のみんなで書いた星空のポスターが張られている。僕のポスターは、片隅にひっそり飾られていた。 扉を開けて1階に入ると、これまたかわいらしい絵やイラストが飾られている子供図書室がある。中には、絵本や子供向けの物語、子供向けの図鑑が所せましと並べられている。奥には小さなお座敷があり、子
春になる飛び立つ君にあうカラー 【解説という名の鑑賞】 カラーの花を見たことはあるだろうか。 くるっとした一枚の花弁が可愛い花。 特に、結婚式でよく見かける白いカラーは、花嫁さんが持っている花束になっている。見ると幸せがもらえる花だ。 カラーの花は、トランペットやホルンに似ていて、今にもお祝いの音が「鳴り」そう。 結婚式は、別れと出会いの象徴だ。 カラーは、白だけでなく様々な色がある、カラフルな花。 結婚式を終えた二人の人生は、どんな「色」になるのだろう。 ある春の
閃きが訪れる前の呟き。 一昨日の夕飯が秋の味覚たちだった。美味しかったから、その感想を呟いた。 そして今日、自分が呟いた文章を見て、短歌が生まれた。 いつかの閃きのために、今日を残そう! 今日の月はレモンみたい。 絶対酸っぱいよ、あの月。 これ、作品になるかな?
秋泳ぐ鰯の雲と秋桜 【小さなお話】 2024年の9月も暑い日が続いている。 毎日30度を超える日ばかり。 窓を開けても、熱風しかこない。 涼しい風が恋しい。 秋が来ないなあ。 そう思っていた真昼。 なんとなく、ベランダから空を見上げる。 鰯雲が、蒼穹を泳いでいた。 私が思っていたよりも、空が遠い。 秋、来てたんだ。 思い返せば、次々に秋が見つかった。 お店に並んでいた美味しい秋の味覚、秋刀魚に栗に葡萄。 ベランダから見える、薄紅、白、橙のコスモス。透き通るほど薄
noteを書いていると妙にハイテンションになるので、語る。 寝ても覚めても文章を書くことに囚われていることがある。 たとえ些細な音や感覚さえ、言葉にしたくなるのだ。 「この音、擬音語ならなんて表現するかな?」 「この触感、何に似てるかなあ?」 自分の中で言葉が生まれる瞬間はとても心地がいい。しっくり来た言葉があてはまると、バズルの最後の1ピースがはまったような爽快感がある。 言語化は楽しい作業だ。 そんな私の中に、あるブームが来ている。 物語を創ることだ。 物語を
これは、森の雨が止む瞬間の話。 どこかの遠くの、昔の話。 小さな光が、瞬いた話 ――――――――― ザァァ ザァァザァァ ザァァ ザァァ ザァァザァァ ザァァ 雨の音しか聞こえない 雨に叩かれているようだ。 顔も服から覗く手足も、痛い。 それでも、私は地に膝をつき祈り続けた。 雨を止めてくださいと。 雨の冷たさも厭わず、私は少しだけ目線を上げた。 雨に打たれて跳ね返る緑の道が見える。 真っ直ぐに伸びる木々と、篠突く雨。 紫がかった空は時折光り、大きな音とともに雷が落ち