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【映画】365日のシンプルライフ 人生における「モノの価値」について考える

自分の人生に本当に必要なモノとは何か?

そんな問いに真正面から向き合うドキュメンタリー映画が「365日のシンプルライフ」。モノであふれている現代において、物質的な価値とは何なのかを検証する実験的な作品です。

日本でもミニマリストという言葉は広く知られるようになりました。「フランス人は10着しか服を持たない」という書籍は女性を中心に人気が高まりシリーズ化。エコの視点も加わり、シェアリングエコノミーという価値観も広がってきています。

現代において、この映画から学べることは多いです。この映画の魅力について見てみましょう。

「365日のシンプルライフ」とは

ヘルシンキ在住の26歳の青年ペトリが主人公。前の恋人と別れて以降、ヤケを起こして物を買い漁ってきた。物だらけの生活に疲弊し、真逆の生活であるシンプルライフを実行します。全ての所有物を倉庫に預け、取り出すのは一日に一つだけというルールに基づいた実験をスタート。人生に本当に必要な物とは何かをテーマにした、ライフスタイル・ドキュメンタリー。

主人公のペトリが自分に決めたルールは4つ。

1.全ての持ち物を貸し倉庫に預けること
2.倉庫から持ち帰るのは一日に一個であること
3.一年間続けること
4.一年間物を買わないこと

ペトリは、縦横10m、高さ3mの倉庫を借り全ての所有物を倉庫に収めて家の中を空にします。本当に何もない空っぽの部屋。ここから実験はスタート。

重要なキャラクターとしてペトリは祖母が登場します。戦時中の物資不足を経験している祖母は、現在は大切な物だけを手元に置いて生活しています。物語の冒頭でこの祖母は「人生に必要なものが何かわかるだろう」とペトリの計画を後押ししてくれます。そして、実験初日の夜、ペトリは自宅から離れた倉庫まで裸かつ裸足で走り、コートを取り出します。見るからに寒そうです…。

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実験2日目、友人が食料を持って来ます。冷蔵庫がないので窓の外に食料を置いたりします。ペトリは深夜0時に倉庫に行って2日分の持ち物を取り出すことを思いつきます。人気のない夜のヘルシンキをコート一枚で走り抜け、ペトリは倉庫からブーツとブランケットを持ち出します。

その後、日を重ねるごとにネックウォーマー、ズボン、仕事用の襟付きシャツを取り出します。実はペトリが靴下も下着も着用していないことに誰も気付きません。

ペトリは日を追うごとに必要な物が一つずつ増えていくことの喜びを味わいます。しかし、ある日生活に必要な物は7個で十分だと感じ、何を持って帰れば良いのかわからなくなります。

仕事以外では携帯電話を使わず、パソコンのメールで友人と連絡を取ってます。もちろんタイムリーな連絡ではなくなります。携帯電話を持たないことで縁遠くなる知人も出てきますが、携帯電話から解放されたことに喜びを感じます。

実験開始から半年後、ペトリは故郷に置いたままの車を取りに帰省します。その過程で、今の自分には恋人が必要なのだとしだいに気付いていきます。
そしてある女性(マイヤ)と知り合います。ペトリは倉庫から衣服を取り出し、マイヤとのデートに向かい、二人は交際を始めます。アウトドア志向のマイヤに合わせ、ペトリはキャンプや釣りなどのデートを楽しみます。精神的に満たされているペトリは、倉庫に行かなくなっている自分にきづきます。

物語の後半、祖母が転倒による怪我のため入院してしまいます。ペトリは入院中の祖母を見舞った際、ペトリはマイヤについて祖母に話します。祖母はペトリの恋を応援し、「人生はモノで出来ているのではない」と話します。

そして物語はクライマックスへ。果たして365日目にペトリがたどり着いた答えとは?彼はいったい何を得るのでしょうか。

この映画のここがスゴイ

ペトリが自分に課した4つのルールの中で「4.一年間物を買わないこと」このルールが実は一番大変で意味深いルールとなっています。

象徴的に登場するのが冷蔵庫。新しくモノを買わないため、何度も何度も修理することになります。物々交換のサイトをチェックしたり、いろんな手を講じますがなかなか冷蔵庫が手に入らない。

「モノを修理して使う」「誰かが不要と思っているものを譲ってもらう」こうした発想は今の我々は希薄になりがちです。後者は日本ではメルカリという手法で実行している人もいますが、「モノを売ってお金に変えること」が主ではなく、「使えるものを譲って誰かに役立てる」方が先にある考え方としてこの映画では描かれています。

「使えるのに捨てている」ことが我々の生活にいかに多い事か、この映画を観て痛感します。私は反省しきりでした…。

ペトリは「生活に必要な物はせいぜい100個で、次の100個は生活を楽しむためのものだ」と語ります。また「所有とは責任を伴う行為であり、何が必要かは自分で決めるべきだ」と言います。実際の体験を通してたどり着いたこうした考え方はとても意味深く、学ぶところが多いです。

まとめ

この映画は、ドキュメンタリーでありながら、映像や音楽にもセンスを感じるエンターテイメント性も兼ね備えた作品です。モノに振り回される人生ではなく、自分の人生を生きるために必要なモノは何なのかということを考えさせられます。

劇中、必要な物が無くなったペトリは祖母に相談するシーンがあります。そこで祖母はこんなアドバイスをします。

「持っているモノの多さで幸せは計れない。
人生はモノでできていない。別の何かが必要だよ」

このアドバイスこそが、この映画の中心にあるメッセージです。ペトリは恋人を見つけ、自然の中で豊かさを感じていきます。

この映画を観ると、「モノを買う」という行為を改めざるを得ません。自分はいったい何を求めてこれを買おうとしているのか、本当に所有する意味があるのか、そんな検討の先に出会ったものはずっと寄り添ってくれる、人生を豊かにしてくれるモノなのではないないかと思います。

モノから解放された時、自分の人生で豊かさを届けてくれるものは何なのかを改めて考えてみたいと思います。80分のコンパクトな映画ながら、いろんな気付きを与えてくれる良作です。モノの価値、モノの意味を改めて考えてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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やわらかメガネりょう
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