メンバー2名で始めた新規事業がWEBマーケ費用ゼロ、開始約1年でARR1億円に到達するまで
この記事は BtoB事業開発アドカレ 2日目の記事です。
前回は 株式会社LayerXの @gokan_yu による『事業開発としての動きを組織に浸透させることによる価値』でした。
はじめに
まずは簡単に自己紹介をさせてください。
株式会社スタメンで営業部門の執行役員をしております、丸岡と申します。
スタメンでは主力のTUNAGの営業部門の管掌と、新規事業の漏洩チェッカーの営業部門管掌をしておりますが、今回はTUNAG周辺領域の新規事業である、TUNAG for UNIONの立ち上げについて記載させていただきます。
TUNAG for UNIONについて
知らない方も多いと思いますので、簡単に弊社とTUNAG for UNION の紹介をさせてください。
スタメンは2016年に設立し、2020年に働きがいのある会社ランキング1位を受賞、設立4年でグロース市場への上場をしたスタートアップ企業です。
直近では株式会社スタジアムや株式会社STAGEなどグループ会社を設立し、会社・事業の多角化も推進しております。
主力事業は祖業であるTUNAGで、『エンゲージメント向上』を目的としたSaaS事業になりますが、直近ではノンデスクワーカー業界の人手不足解消を業務効率化×定着率改善で支援させていただくことが非常に増えており、導入企業は700社を突破しました。
TUNAGは企業を顧客にしているのに対し、TUNAG for UNION は労働組合を顧客としており、『労働組合と組合員をつなぐ場所』というコンセプトを掲げています。
直近では、労働組合100組合の導入を実現し、売上もARR1億円を超える規模にまで急成長を遂げている事業となっております。
事業立ち上げの経緯と取り組んだこと
事業立ち上げの経緯としては、先駆けでTUNAGを導入いただいていたジェーシービー従業員組合様や、イオンフィナンシャルサービスユニオン様が企業とは異なる属性ながらもTUNAGをアクティブにご活用いただき、『他の労働組合にも展開していけるのでは?』と仮説を立てたことが発端です。
メインのTUNAG事業が成長する中で、通常企業とは違った角度のニーズを検知し、それを具体化していきました。
事業化に向けて取り組んだことは以下になります。
▼ 企画
企画は、1週間程度の超短期間で行いました。
ニーズが存在して市場のポテンシャルがあることはある程度明確だったので、検証ステップに進むための社内承認を得たり、関係者が数値の具体イメージの共通認識を持つために当時の上司とすり合わせを行っていきました。
実施したこととしては以下2点です。
①TAMの想定
TAMとは『獲得できる可能性のある最大の市場規模』のことで、そもそも市場が存在するのか?市場規模がどのくらいなのか、想定することを行いました。
TUNAG for UNIONの場合だと、(a)労働組合の総数(b)メインターゲットとなる一定の規模以上の労働組合数(c)顧客単価 などの数値をざっと試算し、TAMを算出しました。
②マーケットへの提案ストーリー構築
TUNAG for UNIONにおいては、すでに先行して労働組合におけるTUNAGの導入事例があったことから、事例の共通項を提案ストーリーに落とし込みました。
具体的には(a)労働組合→組合員への情報伝達(b)労働組合業務の効率化を実現するソリューションの立ち位置で、通常企業向けのエンゲージメント向上の文脈とは異なるストーリーを構築しました。
▼ 検証
最も重要で難しいフェーズは、この検証フェーズだと思います。
アポが取れるか→受注ができるか のステップを踏むイメージで、まずは専任のインサイドセールスメンバーのアサイン→フィールドセールスメンバーのアサインを行い、売上がついてくるか検証を進めました。
このフェーズは、UNIONチーム立ち上げメンバーで今も常に最前線で事業を牽引してくれているレイ(@reihonma7 )が中心となって以下の3点を実施しました。
①一次情報を元にしたマーケットの構造の把握
架電や商談を繰り返す中で、一次情報を取りに行き、顧客と同等レベル以上に顧客の解像度を上げることを徹底的に行い、情報を蓄積しました。
具体的には、(a)組織文化や組織構造(b)現場の悩み事や業務内容(c)競合情報や利用サービス といった情報を把握し、労働組合マーケット構造の解像度を上げました。
②市場をセグメント、1点集中で成果最大化
実績やリソースが少ないこともあり、労働組合マーケットをさらにセグメントに分けて局地戦に持っていくことで、勝てるセグメントにリソースを全振りして勝ち行く戦略を進めました。
具体的には、労働組合マーケット特有の『横のつながりが強いこと』を踏まえ、サービス正式リリース前から長くご活用いただいていた顧客が所属している特定のセグメントに全リソースを投下して、想定通りの売上が立てられるか、検証を進めました。
まさにランチェスター戦略でいう『弱者の戦略』で選択と集中による局地戦を徹底的に行い、分母50件→アポ獲得30件→受注15件と、非常に大きな売上成果につながりました。
③②の勝ちパターンを横展開する
ここまできたら、あとは横展開するだけということで、他のセグメントにも横展開を進めていきました。
オセロにおいて隅を取ることと同様に、一点ではなく”面で抑えにいく”ことが重要で、『影響力のある顧客の獲得』に注力しました。
結果として、伊藤忠商事労働組合様、ダスキン労働組合様、本田技研労働組合様、全森永労働組合様など、大手企業の労働組合様に多数ご導入をいただくことができました。
今回はさらっと書きましたが、この辺りの苦労やさらに具体的な取り組みなどはレイ(@reihonma7 )がまた別途まとめてくれるそうです!(楽しみ!)
▼ 推進
一定の売上が見込めることがわかったら、組織化や独自の営業戦略の推進を行っていきました。
営業戦略においては、まだ推進中ということもありますので、今回は組織化について2点触れさせてください。
①専任担当のアサインと組織化
検証フェーズからすでに行っていたことではあるのですが、明確にやって良かったことの1つは、兼任ではなく専任で担当をアサインすることです。
ベンチャー企業は常にリソース不足で弊社も漏れなくリソース不足ではありましたが、足元の売上と未来への投資は常に両方重要。思い切って専任担当をアサインして、徹底的に新規事業の成果にコミットできる環境を整備することが非常に大切です。
②評価設計
新規事業における評価は非常に難しいですが、弊社では新規事業であることを加味したチーム予算や目標設計を独自に行っています。
また、大幅な達成を実現した際には、会社負担でチームでインセンティブ旅行に行く権利を付与し、UNIONチームでは実際に京都旅行に行きました。
この辺りは、メンバーとの対話を重要視しながら、臨機応変に対応していくことがベターかと思います。
合わせて、新規事業の価値を会社メンバーに説明していくことも重要ですが、この辺りは書くと長くなるので今回は割愛します。
まとめ
すみません、つい長くなってしまいました。
色々と記載しましたが、正直結果論の内容も多く(笑)、とにかくチームメンバー全員ががむしゃらにマーケットに向かって全力投球し続けた成果だと思います。
新規事業立ち上げを行う方、特に営業ドリブンで事業開発を行うみなさまの少しでも参考になれば嬉しいのと、こういった情報発信はX(Twitter)でも行っていますので、フォローいただけますと幸いです。
最後に
スタメンの営業部門ですが、0→1フェーズ、1→10フェーズ、10→フェーズそれぞれの営業チームが存在し、どのチームでも積極的に新メンバーを募集しています!
『事業開発セールス』と呼んでいますが、どのチームも単なるSaaSセールスではなく、マーケットに向き合い、開発部門や他部署と連携しながら、事業開発を行っていくことが求められる営業の仕事になります。
少しでも興味を持っていただけた方は、ぜひお話ししましょう!