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📖『永く短いお別れ。』
ジェシカ、貴方には言わなきゃならないことがあるんだ。
ごめんね。すまない。ごめんなさい。すみません。
どんな謝り方をしても戻らないものは戻らないね。
僕は知らなかったんだよ。
愛や恋は果てしなく不合理だということを。
貴方は知っていたんだね。
いつ知ったんだろうか。
それは教えてくれないだろうね。
僕は頭ばかり大きく複雑なものになってしまって。
単純な物事にさえ理論が必ずあるのだとばかり思っていたよ。
あの日も、貴方に不必要な言葉で攻撃してしまった。
あの時の貴方には本当に腹が立って、どうしても許すことが出来なかったんだ。
僕の方から謝る勇気はないけど、貴方を赦す勇気ならある。
今朝の、洗濯物を干している時まではそう思っていたよ。
嫌な奴だね、本当に僕は。
でも謝ることがどんなに大変な勇気がいることか、子供好きな貴方なら分るでしょう?
勇気もなにも、謝るべきは僕の方だね。
もう少し待って。
気持ちとハンカチの準備くらいしたいよ。
ジェシカ。
貴方には幸せになってほしいな。
勿論この世界に生きる全ての命は幸せであるべきだ。
だけどさ、神様は時々意地悪をするでしょう?
誰かひとりだけ、幸せにしたい人を選びなさい。
もしもそんなことを言われたらさ。
僕はジェシカ、貴方を選ぶよ。
僕たち、生まれた時からずっと一緒にいたでしょ。
でもこの先、貴方はそれを望まないでしょう?
僕達を見守ってくれていた人たちでさえ、貴方は忘れることにしたんだね。
誰かを切り捨てて進んでいく先に、どんな幸せがあるんだろう?
それは本当にジェシカ、貴方が望んだ幸せの形なのかな。
誰よりも強く僕たちを愛してくれていた貴方に、その幸せは相応しいものなの?
僕には分からないよ。
貴方を止めることも僕には出来ないよ。
貴方はそちらへ行くんだね。
僕は反対の方へ行くよ。
どこかの未来でその道が交差したり、繋がっていると良いよね。
その時は、まるで昨日も会っていたみたいにお喋り出来ると良いよね。
貴方が選んだ幸せの答え合わせも、聞かせてほしいな。
さようなら、ジェシカ。
大好きだった人。
僕たち幸せだったよね。
それならこれからも幸せになれるよ。
僕は、信じているよ。
大きな愛をこめて。
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