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週刊私自身

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サウダーヂなアーカイブ。
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2018年6月の記事一覧

セレンディピティ。

商店街を散歩していると見つけた、私の胸を騒がせる、とある肉屋の張り紙。 「豚足50円/g」 大好物のから揚げと一二を争うくらいに、私は豚足が好きだ。あいつの魅力は茹でても焼いても煮ても、つまりどう転んだって美味しいところにある。どんな姿になっても私をわくわくさせて幸せな気分へと導いてくれる。 小さな頃から、我が家の食卓では当たり前で、言ってみれば幼なじみのようなもの。大人になって、みんなが生きてきた中であいつと出会う確率はかなり低いんだと知り、これは私と豚足とのセレンデ

なんなん。

宇多田ヒカルの「七回目のベルで受話器を取った君」って歌詞が幼心に忘れられずに、今でもどのタイミングで電話に出ようかな、なんて鳴り続ける電話をしばらく見つめてみたりする。だけど、相手からの着信が切れてしまわないうちにとらないと。時々、思いの外着信が短くて慌ててスワイプするけど間に合わない、なんてこともある。そんな時は相手の見切りの早さに「ちぇ」っとなりながら、変な駆け引きをした自分のことを心の底から恨む。 それにしても電話の、あの独特な距離感は不思議だ。 いくら仲が良い相手

透き通ったもの。

「透明」が最近のマイブーム。きっかけは、本を読んでいて見つけた「透明な客観」という表現で、それ以来自分のまわりにある透明を探している。自分からは出てこない言い回しを見つけると、途端にその言葉が気になって私のセンサーに次々と引っかかってくる。「あなたの気配だけを心に透明に描いた」は、大好きなYENTOWNBANDで見つけた。 朝の空気もそのひとつ。 朝の透き通った時間。ラジオ体操の歌に「うんうん」と頷きたくなるような瞬間。透明は思いがけない幸福。自転車を漕いでほてった頬も、

純粋なるリビドー。

土曜日、しょうぶ学園「幸福は日々の中に」の上映会に参加した。 「普通」という曖昧な海をおよいでるみんなへ。この映画は鹿児島にある知的障がい者施設のドキュメンタリーで、「ずれ」や「不揃い」をそのままにした施設の日々が、不思議な音と一緒に73分。 会場は満員で、施設で暮らす彼らの自由な行動に純粋な笑いが何度も起こった。こんな風に自分も他人も楽しい気持ち、はじらいなんて人生でどれほど役に立つのかしらね、なんて考えてしまう。 はじらう:(世慣れぬ娘などが)人見知りをして、はにか

口内調理。

テレビをつけて、たまたまぐるナイをみてたら、口の中に食べものを放り込んでいくと味が完成するという「口内調理」が紹介されていた。 たとえば、牛肉のローストにタンニンの効いた人参(単体ではおいしくない)を一緒に食べるとさわやかな口当たりに、ラムを噛んでカモミールティーを飲むと干し草の香りが漂って、羊が口の中で遊び出す…など、その人の感性に随分と左右されそうな調理法である。 ああでもそういうのありますね、と考えながら、口内調理の最たるに思い浮かんだのは牛乳だった。 私のささや

カワイイ。

カワイイはつくれる。 某シャンプーの有名キャッチコピーは、女子に希望を与えるものとして、いつの間にかことわざと化した。だけど、次第に気づくのだ。街にはカワイイが溢れていて、自分のカワイイなんて雑踏にもまれて簡単に紛れてしまうことに。 カワイイはつくれるが、同時にフアンもつくれる。自分に自信がないとなおさら。表面的なものにこだわり過ぎていたら、いつまでたっても不安は自分にまとわりついてくる。 世の中にはカワイイ女の子が山のようにいる。毎日を暮らしていたら、女の私でもはっと

小さな自尊心。

ユーミンの「ためらい」を聴きながら切ない恋心に思いをはせる。私の心をピンポイントに“きゅっ”とつねってくるのが上手いなあと惚れ惚れする。 これまでいくつも恋を失って、襲ってくる悲しみの大きさを知っていながら、それでもあなたに恋をする女の子は「私はもうすぐ不幸になりそう いっしょの時間があまりにも楽しく はやく過ぎるから」なんて言う。わかるー!うんうんと首がもげるくらいに激しく同意。だって始まりは終わりのカウントダウンだ。確かな温もりを感じた時間は、ひとりの寂しさを加速させる

贈り物の気づき方。

この世界には、リボンが可愛い贈り物ばかりじゃなくて、わかりにくくて見過ごしてしまいそうな贈り物もある。それは丁寧に包装されているわけじゃないから、すぐには気づけないんだけど、1日が終わった時の気分がやけにキラキラとしていて、あれはプレゼントだったのか!と自覚する。そして心の中で「ありがとう」とつぶやく。 冬の合間の晴れた日のこと。 前日に突然「船に乗る?」と聞かれて「乗ります!」と軽い気持ちで返事をしてしまったのが、すべての間違いだと思った。なんでもふたつ返事で、ひょいひ

ギカイ傍聴日記。

私は、あの日初めて議会へ行った。「面白いけん!」と議会に来るよう勧める城主を、どこか冷めた目でみていた。そもそも議会って何なのか。いや、平日だし、仕事あるし…。理由をつけては遠ざけていたけど、「知らない場所に行ってみるのはいいことだ。」という誰かの言葉を思い出して、不謹慎ながらも、旅行のような軽い気持ちで市議会をのぞいてみることにした。  岡山市議会は、市役所の端っこにある古い建物の4階にある。窓口のおじさんは、私のダッフルコートとスニーカーをちらっとみて、社会見学に来た小

恋人たちの窓際。

サウダーヂな夜の窓際には、クリスマスにぴったりでロマンチックな二人席ができた。東京スピーカーがそっとふたりの存在を隠してくれる。ああ、いいな。あっちは完全に恋人たちの世界だ…。いつか私もあの席で、深夜の桃太郎大通りを眺めながら「誰もいないね。」とか言いたい。(昼間もいないが。)気の利いたムーディな選曲に耳を傾けながら、静かな夜に溶けこみたい。とにかく今の窓際は最高だけど、やっぱりカウンター席も捨てがたい。なんたって、サウダーヂの松潤ことナカチ店長がいるのだから。そんな店長は最

クリスマスの正体。

白くて深い霧が色んなものを包み込んで、桃太郎大通りの信号もぼやあっとにじむ不思議な夜。サウダーヂな夜には、とある客。その人はゴッドファーザーを彷彿させるような出で立ちでクリスマスを目前にして現れた。その人は、周りがゲラゲラ笑っても、どれだけびっくりしても、決して表情を変えようとせず、どんな時でも不敵な笑みを浮かべている。ゴルゴ13の効果音を背負わせると世界で一番似合いそうだ。 クリスマスイヴの夜、その人は教会で歌をうたうと言う。ちょっと歌ってみてよ、なんてそこにいたおじさん

ハロー、2017。

じわりじわりと年の瀬気分になっていたのもつかの間、気がつけばあっという間に新年を迎えました。いつの頃からか、神社では願いごとではなく目標を口にすることにしています。今年のテーマは「健やかに」。変わらずごはんをもりもり食べて、いつでも笑っていられるような過ごし方をしようと意気込む新年、そして私があなたを笑顔に変えたい。そう、今年もロマンチックモード全開です。 昨年を振り返ってみると、平凡なりに色々ありました。美咲町の田舎から、外の世界を知らずに飛び出した犬っころみたいにうろう

電車に乗って。

人からもらった18きっぷで 寝ぼけた身体とショートトリップ 偶然はいつも突然降ってきて 私をいざなう 知らないところへ行ってみようと 山の中にある茶色の洋館へ 抜ける青空 窓には眩しく映る自分の姿 3時間かけたら ここは私のことを知らない 異質が風景にすっと馴染んでいく時が 好きです ヴォージラール通り226番地 金の太陽の部屋 銀色のフォークが クートラスに刺さるのをためらうから 私は素手でかじりつく あなたと来たら「好きそうだね」 って言ってくれるかしらね よくわか

最強寒波。

今週末の冷え込みは、田舎者の私ですら身に染みる。毎年のように温暖化だとか言うけれど、一度は必ず寒波がやってきて、大雪を降らせたり、行き交う人たちのほっぺたをちくちくさせたり、びっくりするようなイタズラを仕掛けては、あっという間に何もなかったみたいに去っていく。そんな寒い日に、京都では女の子たちが駅伝大会を繰り広げているらしい。雪で真っ白になったテレビの画面を眺めて、ふと自分が中学生だった頃を思い出した。 テニス部に所属していた私は、陸上の季節になると毎回選手として招集されて