きり

「サウダーヂな夜」という岡山の変わったカフェバーより創刊された『週刊私自身』がいつのまにか私の代名詞。 時々、誰かが笑ってくれたらいいです。

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マガジン

  • 長島ストーリープロジェクト

    長島愛生園内の喫茶さざなみハウス、日々のこと。

  • 時々、キョクチョー日記

    岡山市議会議員、森山幸治の事務所での日々です。

  • 週刊私自身

    サウダーヂなアーカイブ。

最近の記事

最年長の常連客

オープン当初、いや、改装している時からずっとK志さんはこの店に足を運んでくれている。私が開店準備に長島へいくと、冷蔵庫には砂糖がジャリジャリまぶされたヤマザキのあんまきが必ず入っていたので、改装工事をしているU田さんとK賀さんに聞くと、それはK志さんからの差し入れらしかった。いかにもジャンクな見た目で普段なら背徳感で滅多と口にはしないけど、なぜかそれは妙にそそられる。「きりちゃん食べていいよ」と言われたので食べると、やっぱり甘くて駄菓子のような懐かしい食感と味がした。ショート

    • さざなみについて

      店の由来が「さざなみ食堂」ということは、色んな人に話してきたと思う。店の名前を考えていた時に自治会のI田さんから長島にあった食堂の話を聞いて、さざなみ、という語感にピンと来た。同じく島の中にある「ライトハウス」という盲人会の集会所にあやかり、さざなみハウスと名付けた。店内の壁はブルーにしたかった。もちろん、海と空のブルーってことでもあるが、長島で暮らす画家のK志さんが描いた深い青の絵に本当は一番由来している。K志さんは長島で一番最初のお客さんであり、友人だ。話は戻して、当時の

      • 引き寄せの法則

        昨年の9月にオープンしてから馴染みのお客さんがさざなみにもできた。大体の好みは把握してきたし、喫茶店定番の「いつもの」を聞く頻度が増えてきたと思う。島の外から来るお客さんもいるし、島内の住まいから自分の車や園内のタクシーで来たり、徒歩やセニアカー、職員さんに車椅子を押してきてもらったり、みんな各自の手段でやってくる。長島の平均年齢は86歳を超えていて、愛生園の人口は140名を切っている。限界集落みたいなもので、ここの自治会からも「役員の高齢化により〜」なんて言葉をよく聞く。だ

        • なぞなぞ

          窓から瀬戸内海を眺めていると、頭の中の考え事がどっかに行ってしまうほど穏やかで平和な時間が流れる。潮が引き始める頃は特に静かで小さな波の音、姿は見えないけれど鳥があちこちで鳴いていて、ぬるい空気に染み入るような風がひんやりとして本当に心地よい。 そんな長島でも、今はコロナウィルスの感染拡大防止に備えた自粛のムードに包まれている。ようやく右肩上がりになった売上は4月に入って急に落ち込んだ。自治会と相談して島の中の人たち限定で時間も縮めて営業を続けている。オープンしたての頃はお

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        記事

          まえがき

          私はいつの頃からか「ハッピーエンドの裏側」にとても興味がいくようになった。主人公とヒロインが色んな物語を紡いで最後には一緒になる、そんな素晴らしい結末の一方で、涙したり、どうしようもないほどに胸を痛めている人がいる。フィクションみたいにスピンオフで物語の脇役同士が都合よくひっつけばいいけど、人の心はそんなに単純じゃない。最近のドラマは最終回でも,、変わらず日常が続いてくものが多い気がするけど、そんなもんなんだよなあと納得したりする。ただ、やっぱり劇的なハッピーエンドには小さな

          まえがき

          さざなみダイアリー⑤

          . 喫茶店をしていて嬉しいなあと思うのはやっぱり「おいしかった」と言ってもらえる時。まあ社交辞令かもしれないけれど、そんな一言があるとそわそわする心も少しは落ち着くのだ。だけど、いつでも「おいしい」が手放しに嬉しいかというとそういうわけでもない。 11月の青い鳥ハモニカでの滞在制作期間にご飯を担当することになった時のこと。海太郎さんとトウヤマさんは普段どんな生活をしてるんだろうか。店のメニューと冷蔵庫、それから味付けのリズムに練習中に食べやすいもの...、あれこれ考えなが

          さざなみダイアリー⑤

          さざなみダイアリー④

          さざなみハウスのモーニングに使う食パンは、岡山のキムラヤで仕入れている。私の近所にあるお店は朝の6時から開いているので、長島に向かう前に寄っていけるのがとてもありがたい。 今、キムラヤではポイントカードのキャンペーンが始まっていて、スタンプを集めたら500円の金券がもらえる。期間も長いから、店員さんはこのキャンペーンを超推奨してくれる。レジの度にカード台紙の有無を聞かれ、ズボラな私は以前もらったカードの所在を確かめることなく「いいです」と答える。すると「新しい台紙作りますね

          さざなみダイアリー④

          さざなみダイアリー③

          子供の頃、春になると生活のいたるところで発見される真っ黒でチクチクした毛虫が嫌いだった。アザミを摘もうとしたら茎の部分にヨチヨチ登っているし、物干し竿や玄関なんかにも気づけばくっついていた。げんなりするほど大発生して道路の上をたくさんの毛虫が横断するようになる。足元で見かけたと思ったら、目線を30センチそらした先でもヨチヨチやっているほどなので、車にぺちゃんこにされるかわいそうなヤツも少なくない。夏には毛虫に負けないくらいのカエルが道路にあふれ出す。これまたぺちゃんこになって

          さざなみダイアリー③

          さざなみダイアリー②

          お店を作る時、自治会の石田さんから「昔はさざなみ食堂っていうのがあった」と聞いて、それにあやかって『さざなみハウス』という名前をつけた。 お店がオープンして少しずつ馴染みの顔が増えてきて、私は衝撃の事実を知る。さざなみ食堂は職員専用で、患者だった人たちは立ち入ることができない場所だったということ。今の時代では信じがたいけど、療養所の中は区切られていてハンセン病の患者は、自分たちのエリアを無断で越えることが許されなかった。今、80代や90代の人が若くて元気だった頃の話。(元気

          さざなみダイアリー②

          さざなみダイアリー①

          長島のさざなみハウスで仕込み中のできごと。 「整理してたら亡くなったカミさんの指輪が出てきたからあげる。」と90を超える紳士が唐突に、携えたセカンドバッグの中から立派なパールの指輪を出してきた。 いやあ、私なんて指もゴツいし、カサカサのしわしわだし。ってコンプレックスを並べながら、その指輪をはめてみるとピッタリだったので、そのまま譲っていただくことに。 いいんですか、奥さんの大切なものじゃないんですか?って聞くと「カミさんは洒落ててアクセサリーようけ持ってたんよ。だけど

          さざなみダイアリー①

          投票済ませて、寿司。

          昨晩、イオンモールで初めて投票をした。噂に聞いていた投票所は迷路のようで矢印に導かれていくスタイル。 その先で私を待っていたのは笑顔の優しい女性であった。名前を伝えるだけで選挙権があるか確認してくれ、投票について説明してくれる。だけど、私は説明どころではないくらいに動揺してしまっていた。彼女の歯にネギか青のりらしきものがコンニチハしていたからだ。 こ、これは伝えねば!と思いつつタイミングをはかるも、私と彼女の距離感、周りの人の数をみても、超困難。あっという間に次のコーナー

          投票済ませて、寿司。

          【時々、キョクチョー日記④】

          朝の街宣活動をしていると、だんだん挨拶を交わす特定の人というのが現れてきた。 グレーのスエード生地のコートがベージュの軽やかなものに変わったあの人も、目が合ったら先に挨拶をしてくれるから嬉しい。 誰も知らない中で始めたけれど、未だに名前もわからないけれど、得体の知れない安心感がそこにはあります。 「おはようございます」の挨拶をしていると、小学生の頃の通学路を思い出す。 大阪から美咲町へ転校した時、行き帰りで必ず地域の人が「行ってらっしゃい」と「おかえり」の声をかけられてびっ

          【時々、キョクチョー日記④】

          【時々、キョクチョー日記③】

          一気に春めいてきて、ひなたに幸せを感じる一方で落ちない冬太りに歯がゆい思いをしています。 さて、明日は表町商店街にて森山幸治の恒例企画「マチナカギカイ」。 年下だけどとっても頼りにしてるEVERY DENIMの島田君が、初めて登壇してくれるので個人的にとても楽しみです。 仕事のこととか、暮らしのこと、日々考えていること、そんなことを話せる場を皆さんは持ってますか? 私は大学を卒業して「そんな話」ができる人や場所をずっと求め続けてきて今に至ります。 家族や友達だけじゃなくて

          【時々、キョクチョー日記③】

          【時々、キョクチョー日記②】

          「事務所開き」も終わって、明日から3月。びっくりですね…。 選挙は色んなドラマがある、って森山さんからよく聞かされるけど、本当だなと実感する今日この頃。良いことも悪いこともたくさんあって、気持ちは日替わり定食のよう。 「場所」っていうのは、出会いが起こる性質を持っていて、そこに集まる人たちのムードで形成されて、そこで「キョクチョー」する私は、なんというか言い表しがたい難しさや寂しさを感じます。時々ですけどね。 私がいる表町ベース、森山幸治の事務所でありますが、これは果たし

          【時々、キョクチョー日記②】

          【時々、キョクチョー日記①】

          初めての方もそうでない方もこんにちは。森山事務所の事務局長、きりです。 えーっと、局長なんて言いながら、特定の政治家を応援するのも政治活動を手伝うのも初めてなのですが。そんな私がなぜそう呼ばれているのかと言うと、一人しかいない事務所の中、繰り上がり方式でいつの間にか「キョクチョー」に任命されたからです。 最近、キョクチョーの他にも思いがけない肩書きがうまれました。それは「ブロガー」です。キョクチョーにブロガーに肩書きが一人歩きして戸惑っておりますが、どうせなら虎の威を借りた

          【時々、キョクチョー日記①】

          平成最後の大晦日。

          オープンして間もないヒバリでsakanaのライブを初めてみた。pocopenさんがMCで「ヒバリのスタッフさんがこんなんだと困りますけどね。」って喋って歌い始めたスカイは、私の胸にずっと住みついた。すぐにBLIND MOONのアルバムを買って、私はいつかスカイみたいになりたいなんて年甲斐もなく憧れたことを今でも思い出す。 ヒバリを退職して短くて長かったなと思いながら、そんな感傷に浸ることもなくせわしく年の瀬を迎えている。 恋人たちが素晴らしきタイミングの良さにますます胸を

          平成最後の大晦日。