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週刊私自身

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サウダーヂなアーカイブ。
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さざなみダイアリー⑤

. 喫茶店をしていて嬉しいなあと思うのはやっぱり「おいしかった」と言ってもらえる時。まあ社交辞令かもしれないけれど、そんな一言があるとそわそわする心も少しは落ち着くのだ。だけど、いつでも「おいしい」が手放しに嬉しいかというとそういうわけでもない。 11月の青い鳥ハモニカでの滞在制作期間にご飯を担当することになった時のこと。海太郎さんとトウヤマさんは普段どんな生活をしてるんだろうか。店のメニューと冷蔵庫、それから味付けのリズムに練習中に食べやすいもの...、あれこれ考えなが

さざなみダイアリー④

さざなみハウスのモーニングに使う食パンは、岡山のキムラヤで仕入れている。私の近所にあるお店は朝の6時から開いているので、長島に向かう前に寄っていけるのがとてもありがたい。 今、キムラヤではポイントカードのキャンペーンが始まっていて、スタンプを集めたら500円の金券がもらえる。期間も長いから、店員さんはこのキャンペーンを超推奨してくれる。レジの度にカード台紙の有無を聞かれ、ズボラな私は以前もらったカードの所在を確かめることなく「いいです」と答える。すると「新しい台紙作りますね

さざなみダイアリー③

子供の頃、春になると生活のいたるところで発見される真っ黒でチクチクした毛虫が嫌いだった。アザミを摘もうとしたら茎の部分にヨチヨチ登っているし、物干し竿や玄関なんかにも気づけばくっついていた。げんなりするほど大発生して道路の上をたくさんの毛虫が横断するようになる。足元で見かけたと思ったら、目線を30センチそらした先でもヨチヨチやっているほどなので、車にぺちゃんこにされるかわいそうなヤツも少なくない。夏には毛虫に負けないくらいのカエルが道路にあふれ出す。これまたぺちゃんこになって

さざなみダイアリー②

お店を作る時、自治会の石田さんから「昔はさざなみ食堂っていうのがあった」と聞いて、それにあやかって『さざなみハウス』という名前をつけた。 お店がオープンして少しずつ馴染みの顔が増えてきて、私は衝撃の事実を知る。さざなみ食堂は職員専用で、患者だった人たちは立ち入ることができない場所だったということ。今の時代では信じがたいけど、療養所の中は区切られていてハンセン病の患者は、自分たちのエリアを無断で越えることが許されなかった。今、80代や90代の人が若くて元気だった頃の話。(元気

さざなみダイアリー①

長島のさざなみハウスで仕込み中のできごと。 「整理してたら亡くなったカミさんの指輪が出てきたからあげる。」と90を超える紳士が唐突に、携えたセカンドバッグの中から立派なパールの指輪を出してきた。 いやあ、私なんて指もゴツいし、カサカサのしわしわだし。ってコンプレックスを並べながら、その指輪をはめてみるとピッタリだったので、そのまま譲っていただくことに。 いいんですか、奥さんの大切なものじゃないんですか?って聞くと「カミさんは洒落ててアクセサリーようけ持ってたんよ。だけど

投票済ませて、寿司。

昨晩、イオンモールで初めて投票をした。噂に聞いていた投票所は迷路のようで矢印に導かれていくスタイル。 その先で私を待っていたのは笑顔の優しい女性であった。名前を伝えるだけで選挙権があるか確認してくれ、投票について説明してくれる。だけど、私は説明どころではないくらいに動揺してしまっていた。彼女の歯にネギか青のりらしきものがコンニチハしていたからだ。 こ、これは伝えねば!と思いつつタイミングをはかるも、私と彼女の距離感、周りの人の数をみても、超困難。あっという間に次のコーナー

平成最後の大晦日。

オープンして間もないヒバリでsakanaのライブを初めてみた。pocopenさんがMCで「ヒバリのスタッフさんがこんなんだと困りますけどね。」って喋って歌い始めたスカイは、私の胸にずっと住みついた。すぐにBLIND MOONのアルバムを買って、私はいつかスカイみたいになりたいなんて年甲斐もなく憧れたことを今でも思い出す。 ヒバリを退職して短くて長かったなと思いながら、そんな感傷に浸ることもなくせわしく年の瀬を迎えている。 恋人たちが素晴らしきタイミングの良さにますます胸を

いちから、ということ。

『カレーライスをいちから作る』という映画を見た。これはグレートジャーニーの関野吉晴さんが1年かけて自分のゼミ生たちに「食べる」ということを教える内容となっている。私の住む街には岡山映画祭というものがあるからありがたい。気になっていた映画を見事にピックアップしてくれるのだから。 いちから作る、ということは私の両親が私に教えてくれたほぼ唯一のことではないかと思う。とにかくうちの家族は、あらゆることをいちからやった。トイレの汲み取りは自分たちで肥溜めの畑まで運んでたたことは当時恥

よそへの慕情。

「パッタイ」のパッはタイ語で炒めるという意味であり、パッタイとはタイを炒めたものらしい。つまり、日本にいながらタイを丸ごと満喫できてしまう一品なのである。海外へ行ったことはほとんどないけど私は異国の料理が大好きなので、うちの台所でも再現しようと奮闘する。現地の味も知らぬのに邪道かもしれないが、満足すれば問題ない。異国の味を作る時、重要になってくるのが現地にしかない食材や調味料。そんなのを揃えていると、醤油や味噌みたいに毎日使わないからとにかく残る。珍しい調味料はそこの文化に馴

「質問」して自分を暴くこと。

はじめまして ひょんなことから毎週日曜日「サウダーヂな夜」の昼営業にて働くことになりました。城下をぶらぶらする際には、ぜひ私の話し相手になってください。もしくは面白い本もあるのでふらりと読書に寄っていただけたら。 そして今日から週に1回ブログを書くことになりました。なにを書けばいいのか迷ったのですが、サウダーヂのテーブル席で寺山修司の秘書の方が書いた「質問」という面白い本を見つけたので、自分の近況もふまえてその本に少しだけふれてみようかと。 まわりはどんどん変わるのに私

真田丸とサウダーヂな夜。

歴史オタクで真田ファンの森山城主に「きり」と呼ばれています。どうやら私は大河顔らしい。顔だけにとどまらず髪型までも大河カットと言われます。 もしくは金太郎。LEONのマチルダを意識した髪型のつもりなのに。 私は日本史があまり得意ではないけれど、なぜか歴史オタクが周りに多い。みんなお気に入りの戦国武将を答えることができる筋金入りのオタクっぷり。 祖父の話によれば、私の苗字には由緒正しき由来があって、実はある武将のおかかえ武器屋だったらしい。この話を軽い気持ちでオタクの友人に

人が珈琲と出会うとき。

カフェバーというくらいだから、サウダーヂな夜は珈琲にもこだわっています。 ただ私は珈琲について素人なので詳しいことは割愛。お店で聞いてください。 今日、私は人生で初めてドリップをした。(家ではいつもポットや急須で適当にいれる) お湯を注ぐと粉がカルメ焼きのように膨らんでおお〜と感動した。豆が新鮮な証拠らしい。本当に生き物みたいでじっと見ていても飽きなかった。水面のきらきらと似ている。 珈琲っていうと、いかにも「大人の象徴」って感じがする。サニーデイサービスの曲に「ひとり飲

外の世界を教えてくれる場所。

まだ5月だけど、もうすぐ5月も終わるけど、長雨が続いてなんだか早くも梅雨入りしたような気分です。そんな月末、サウダーヂな夜では4日間ぶっ通しでイベントを開催しています。本来イベントって晴れの方が印象良く感じるけど、クレイジーにぶっ飛ばしているサウダーヂをみていると雨のテンションが似合っているような気もする。 今日が3日目、そして明日の「マンデーナイトモンドリアン」で怒涛の4日間の幕が閉じます。ぜひ、皆さんブルーマンデーを吹っ飛ばしに来てください。 私はそんな慌ただしいサウ

無意識と自意識のはざま。

ジェンダー論っていうと大げさだし、別にどっちが偉いなんて思ったことないけど「女性」と「男性」について考えることがよくあります。 世の中を幸せに生き抜くための手段として、女性には「たくましさ」が本能的に備わっていると私は思う。そのたくましさゆえ、自分の中にいる怪物が強すぎてたまらないことがあるのです。 大好きなHi-posiが「手におえないよって逃げだしたりしないで。寿命縮まるってシャットアウトしないで。『おそろしい』『かなわない』いい加減にしてよ。誰かこんなあたしをうけと