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若草
2020年5月16日 11:06
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様と離れて人間・サクラと暮らし始めた。なお、サクラと一緒にいる間はクロと呼ばれている。お互いが、お互いのいる生活に慣れ始めた。「ただいま、クロ」玄関まで迎えに行くと、靴をきれいに揃えるサクラが、吾輩の頭に触れる。吾輩は甘んじて受け止める。一緒に暮らし始めた当初、サクラは慌てたように帰って来ていた。吾輩のことが心配だったらしい。サクラは今まで猫を飼
2020年4月29日 19:54
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ご主人様を見失った矢先、ニンゲン・サクラと再会した。そして、サクラの部屋にいる。「ほら、クロ。まずは足を綺麗にしようね」さっき「朔」って呼ばれた気がした。だけど、サクラは相変わらず「クロ」と呼んでいる。あれは空耳だったのだろうか。吾輩がそう呼んでほしくて、聴こえてしまったのだろうか。サクラの部屋は、花の良い匂いがした。ご主人様と部屋のサイズは
2020年4月28日 21:11
吾輩は猫である。名前は朔(さく)、のはずだった。ご主人様がくれたと思っていた名前も、呼んでくれる者がいなければ、何の価値もない。この家は本当にご主人様と吾輩の家だったのだろうか。 もうあきらめよう。いくら待っても、ご主人様とは会えないのだ。ご主人様に捨てられたなんて認めない。ご主人様と吾輩は、この家に見捨てられたのだ。そして、知らないオジサンの家になった。だから、ご主人様はこ
2020年4月26日 15:04
「人間とネコではね。生きるスピードが違うんだ」また始まった。ご主人様の独り言タイム。可哀想なので、吾輩が話し相手になってあげることにした。「猫は、人間なんかよりずっと賢くて良いヤツだ」そんなの、当たり前だろう。吾輩は胡乱な目で、酒の匂いがする缶を持つご主人様を見つめる。「だから、神様は人間よりも先に猫を連れて行ってしまう。神様は良い子が好きだからね」カミサマの話、好きだな。また言
2020年4月25日 17:05
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラにもう一度会うために、グルグルと歩いて、ご主人様の家に帰ってきた。ずっと、ずっと帰りたかった家だった。なのに、腑に落ちないのはどうしてだろう。サクラと出会ったことに、何か関係があるのだろうか。とりあえず、落ち着こう。家には帰って来れたのだ。まずはご主人様の顔を見て、カリカリを食べて、それからまたサクラを捜すのでも遅くない。吾輩は平静を保
2020年4月24日 21:59
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。ニンゲン・サクラを捜しに、ご主人様の元へ帰る前に寄り道することを決めた。しかし、困った。吾輩はただ小川のほとりで待っているだけで、サクラに会えていたのだから、全く手がかりがない。そういえばこの前、“病院"とか言っていたような。この近くに病院があるのだろうか。吾輩は、グルグルと歩いた。知らない路地や、車道や、庭を歩いた。何時間も、何日も歩いた。
2020年4月23日 19:45
吾輩、黒猫・朔(さく)にはたくさんの兄弟がいた。「なぁ、頼むよ。一匹もらってくれないか」生まれたばかりで、目がまだぼんやりとしか見えていないころ、二人の男の声が聴こえた気がする(定かではない)。「え、でも俺は独り身だし、動物を育てたことはないよ」「でも、可愛いだろう?うちはもう手一杯なんだ。頼む。どの子でも良いから」こうして、吾輩はご主人様に選ばれた。「いいかい。お前は“預かる”だ
2020年4月22日 20:19
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。好き勝手にクロと呼ぶニンゲン・サクラをこの小川で待っている。ご主人様の家への帰り道は、未だ思い出せない。ある日、サクラはいつもよりたくさんのカリカリを袋ごと渡してきた。何事かと、吾輩は訝しそうな目つきでサクラを見る。「しばらく、病院へ行くのはお休みするね」ビョウインって、あれだろう。知らないニンゲンに尖った針で、刺されるところだろう。ご主人様もよく
2020年4月21日 21:12
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。それなのに最近、サクラというニンゲンに「クロ」という不本意な名前を付けられた。吾輩、未だ納得していない。しかし、このニンゲン、知恵をつけて誘惑してくるようになった。「ほら、クロ。ごはんだよ」カリカリだ。ご主人様がよくくれた味。ネコはネズミを食べるなんて聞くが、吾輩は生まれたときから家ネコだ。動物を狩る勇気は持ち合わせていない。ネコジャラシには目がな
2020年4月21日 08:56
吾輩は猫である。名前は朔(サク)。先日、小川のほとりで、サクラに出会った。桃色の雪の正体を教えてくれたニンゲンだ。桜と同じ色を着ていたから、彼女をサクラと命名した。吾輩、ニンゲンに名を与えるとは、偉い猫である。桜が舞う季節は終わってしまったようだが、彼女は相変わらず、桜と同じ色を着ていた。「こんにちは、クロ」サクラは吾輩をクロと呼ぶようになった。吾輩、誠に遺憾である。ご主人様がくれた
2020年4月20日 21:09
吾輩は猫である。名前は朔(さく)。漆黒の艶やかな毛並みが、月の出ない夜を思わせると、ご主人様に名付けてもらった。しかし吾輩、ご主人様の家への帰り道を忘れてしまった。質の良いネコジャラシを探すのに夢中だったのだ。かれこれ一ヶ月になる。何とか記憶を辿って帰ろうとは試みるも、頭上からヒラヒラと桃色の雪みたいな何かが降ってくる。吾輩、すぐに我を忘れて、追いかけたくなる衝動に駆られる。追いかけても、追