マガジンのカバー画像

どこか遠くへ

7
素敵な靴が思ってもみなかった場所へ連れて行ってくれるように、この読書記録がどこか遠くへ連れて行ってくれますように。
運営しているクリエイター

記事一覧

レビュー|ノルウェイの森(下)泣きじゃくり感想 2023.12.24

レビュー|ノルウェイの森(下)泣きじゃくり感想 2023.12.24

 ワタナベ、お前ってやつは、、!好きだから絶対に見捨てないと言い切る覚悟、そして大人になるんだという意志。お前はすごいよ、俺なんて二十一だったけど、そんな覚悟も意志も持てなかった。お前が羨ましいよワタナベ、待つのも辛いし、そういうものだと世界を受け止めるのも辛いだろう。

 でも、そこから逃げて、逃げたって構わないのに、気持ちを切り替えたり自分のコントロール出来る範囲で生きていくのではなくて、向き

もっとみる
レビュー|『ノルウェイの森(上)』抱えきれない感想集、雑多な盛り合わせ。2023.11.20

レビュー|『ノルウェイの森(上)』抱えきれない感想集、雑多な盛り合わせ。2023.11.20

 村上春樹の文章はよく言えば整っていて、悪く言えば少し着飾っていて、一度読むと引き込まれる不思議な魅力がある。江國のような気品や上品さとも少し違う。過剰な自意識を含んだ言い回しは揶揄されがちだけど、空虚さもドライさも、なめらかに読ませるのは技量なんだろうな。排気ガスで淀んだ街というよりは清潔で冷たい風が吹いている。これまで行った場所だと高松かな、松林が海風に吹かれていた。

 江國がセックスなら、

もっとみる
レビュー|TSUTAYAで借りた漫画5冊 2022.9

レビュー|TSUTAYAで借りた漫画5冊 2022.9

『ブルーピリオド』1巻
このワイン瓶、どうやって描けばいいんだ?と瓶を見て悩む主人公。いやちょっと待て、もうワイン瓶は作者によって描かれている、、この漫画面白いなと思った。将来を約束されることのない芸大受験へと駆り立てられていく八虎がいい。悩みながら、「美大って俺、入れると思います…?」とぎこちなく笑う八虎がたまらん。

これは印象的だった美術部の先生のセリフ。

❇︎

『呪術廻戦0』

やさし

もっとみる
レビュー|アキラとあきら 2022.11

レビュー|アキラとあきら 2022.11

映画ハイライト
「誰にでも宿命というものがあるのなら、それはどんな風に乗って現れ、どこへ僕らを運んでいくのだろう」で始まり、クライマックスで「全部この時のためにあったんだ」と宿命の最中でそれに気付く。

 成長した山崎が提出した稟議書には承認の印が押されている。「お前の経験、無駄じゃなかったと思う、いい稟議だった」と言葉を残して去って行く背中。その後、水島が慌てて来て我に帰る感じもいい。

1
 

もっとみる
レビュー|アキラとあきら(続き)2022.11

レビュー|アキラとあきら(続き)2022.11

7
 良すぎてまた観に行ってしまった。映画への没入感で言うと、1回目に劣るけど、2回目だからわかったこともあったし、1回目とは違う視点も見つけられた。

 まず、山崎が井口ファクトリーから担当を外されたのは割と真っ当な判断に見えた。その後の不動の差押えもやり過ぎではあるが、山崎が銀行員の立場を忘れて熱くなりすぎてしまったのも否めない。
 その後、再会した二人。山崎は「理想の何がいけないんですか。理

もっとみる
レビュー|コンビニ人間 2022.11

レビュー|コンビニ人間 2022.11

 古倉恵子という人の話をどう消化していいかわからない。ホラー小説じゃん、と時折思ったけど、それだけ終わらせてしまえるものでもない気がして。全体を通して彼女の”異常性”が目立つけれど、彼女はコンビニに対して敬虔と言っていい程ひたむきに向き合っている。卓越生とは実に多彩である。彼女を見ていてもそう思う。「コンビニの声が聞こえる」という最後のシーンに少し奮い立った。これまでの経験が、直観となってビリビリ

もっとみる

レビュー|ケーキの切れない非行少年たち 2023.11.4

概要
精神科医が少年院での経験をもとにして書いた本。犯罪を総なめにしてきたような少年たちを診察する中で、彼らが反省する以前の問題を抱えており、認知の能力に乏しいことに気付く。ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動性障害)と言ったメジャーな発達障害の陰に隠れる、知能障害の人たちについての支援において、見る力、数える力、写す力、そういった認知のトレーニングを提唱している。

特に気にな

もっとみる