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ノルウェイの森(上) 抱えきれない雑多な感想集

 村上春樹の文章はよく言えば整っていて、悪く言えば少し着飾っていて、一度読むと引き込まれる不思議な魅力がある。江國のような気品や上品さとも少し違う。過剰な自意識を含んだ言い回しは揶揄されがちだけど、空虚さもドライさも、なめらかに読ませるのは技量なんだろうな。排気ガスで淀んだ街というよりは清潔で冷たい風が吹いている。これまで行った場所だと高松かな、松林が海風に吹かれていた。

 江國がセックスなら、村上は射精だなという俗っぽい感想が一つ目。ごめんね一つ目から下品で。二つ目がシエラザードもカサブランカも知らない自分を恥じた。映画も観なくちゃね。三つ目、直子がめっちゃ好きだと思った……白状すると、直子に元恋人を重ねている。元恋人も素直に尋ねる人だった。自分の考えを論理という型に落とし込んで、パウンドケーキを焼くような人だった。言葉にならない何かを探していて、それが言葉として焼き上がると嬉しそうに教えてくれるのが愛おしかった。は〜あ、やめやめ。四つ目、でもね、あたらしい世界が楽しみでもある。とても。新しい恋人を見つける予感がする。ワタナベが本の中で言わば旅をしているように、俺もそうなるんだろうなという気持ちがある。五つ目、ノルウェイもつくばと似たような、ゆったりとした時間の流れと無気力感、ささやかな絶望みたいなものがある。そのような穏やかな流れに身を置くことを求めているとも言えるし、そこから逃げたいとも思っている。六つ目、でももしワタナベがいたら絶対声をかけてしまうだろうな。だって面白いもの。俺の中にもワタナベが生きている、というより、ワタナベという鏡を見ながら自分を見ている。

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建内 亮太
最後まで読んでくれてありがとう〜〜!