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レビュー|ノルウェイの森(下)泣きじゃくり感想 2023.12.24

おいキズキ、と僕は思った。お前とちがって俺は生きると決めたし、それも俺なりにきちんと生きると決めたんだ。お前だってきっと辛かっただろうけど、俺だって辛いんだ。本当だよ。これというのもお前が直子を残して死んじゃったせいなんだぜ。でも俺は彼女を絶対に見捨てないよ。何故なら俺は彼女が好きだし、彼女よりは俺の方が強いからだ。そして俺は今よりももっと強くなる。そして成熟する。大人になるんだよ。そうしなくてはならないからだ。俺はこれまでできることなら十七や十八のままでいたいと思っていた。でも今はそう思わない。俺はもう十代の少年じゃないんだよ。俺は責任というものを感じるんだ。なあキズキ、俺はもうお前と一緒にいた頃の俺じゃないんだよ。俺はもう二十歳になったんだよ。そして俺は生き続けるための代償をきちっと払わなきゃならないんだよ。

ノルウェイの森(下)204頁

 ワタナベ、お前ってやつは、、!好きだから絶対に見捨てないと言い切る覚悟、そして大人になるんだという意志。お前はすごいよ、俺なんて二十一だったけど、そんな覚悟も意志も持てなかった。お前が羨ましいよワタナベ、待つのも辛いし、そういうものだと世界を受け止めるのも辛いだろう。

 でも、そこから逃げて、逃げたって構わないのに、気持ちを切り替えたり自分のコントロール出来る範囲で生きていくのではなくて、向き合うことを選んだんだね。自分の好意を大事にすることを選んだんだね。俺は君のようにはなれなかったけど、だってそれは辛すぎるもの、俺には耐えられなかった。それに俺は彼女から拒絶されていて、待つことも叶わなかったんだ。

 それでも、君にとっても、責任を貫く生き方は相当な重荷だろう。ワタナベが心の中で泣くから、俺も泣いた。でも、君がそれを選ぶような人だから俺は君が好きだし、君のことを何でだろうな、誇らしく思う気持ちすらある。

 自分の心の内面を見つめることに注意が向きがちで、人から理解されたいと願いながら理解されないだろうと寂しい諦めを持っている所も、誰か一人分かり合える人がいててくれればそれでいいと思っている所も、自分は人とは違うからのんびりやろうと半ば開き直ってるような所も、わかる気がすんだよな。俺はバーで女の子誘って寝たりはしないけど、すごく寂しくなることがあるし。「人生の本質」なんて軽々しく言葉にするような人を見ると、そんなもんが人生なの?本質なの?ってがっかりしちゃうんだ。人生ってもっと切実でままならなくてぐちゃぐちゃで、それでも生きていきたいと思うようなものだと思うから。だから、俺も生きるんだと思うよ、ワタナベも元気でいて欲しい。

 どうも、ワタナベが他人には思えなくて勢いで書いてしまった。元恋人への気持ちも自分のアイデンティティも、ワタナベに投影せずにはいられなかった。

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建内 亮太|Ryota Takeuchi
最後まで読んでくれてありがとう〜〜!