「最後の一人」~#青ブラ文学部お題「魔法の言葉」
わたしは魔法の言葉を知っている。
正確に言えば、幼い頃、とても悲しい日の晩に街の川縁のベンチに座って何時間も泣いていたわたしに通りすがりの少女がその言葉を教えてくれたのだった。今もはっきりと覚えている。亜麻色の巻き毛の少女で透き通るような白い肌と海の底を思わせる深く青い瞳をしていた。その少女は泣いているわたしの隣に空気の如き軽さで腰をかけ耳元で魔法の言葉を教えてくれた。
「誰にも言っちゃだめよ」少女は赤い舌を出して茶目っ気たっぷりにわたしに手を振ると滑るように満月の川縁を