SS「次は何に生まれ変わるだろうか」~てるてる企画

 初めてこの世に生まれたときは春に大川沿いに咲き乱れる桜だった。大勢が集い愛でてくれた。私は彼らを癒やし魅了した。私は愛を学んだ。あるとき誰かが私を桜の木から摘み取った。次は何に生まれ変わるだろうか。

 鷹だった。大空を滑空し獲物を射止める鷹に生まれた。空の生き物も、地上の生き物も私を恐れた。私は自由と力を学んだ。あるとき鷹狩りに撃たれた。次は何に生まれ変わるだろうか。

 犬だった。厳しく訓練され盲人を導く犬に生まれた。学校を卒業して私が支えた盲人は私を慈しみ大切にしてくれた。私は献身を学んだ。老いてからは人の役に立てなかったが寿命が尽きるまで大切にされた。次は何に生まれ変わるだろうか。

 鮭だった。鱗がすり減るほどの勢いで流れる川を必死に上った。仲間が次々と倒れていく中私は登りきった。私は努力を学んだ。やがて網にかかり人の胃袋に収まるまで自由に泳いだ。次は何に生まれ変わるだろうか。

 孤独な独裁者だった。初めて人間に生まれた。権力を持ちながらも誰からも尊敬されず愛されず辛い日々を送った。私は孤独と悲しみを学んだ。次は何に生まれ変わるだろうか。

 またしても人だった。今度は、何の変哲もない普通の人に生まれた。お金持ちでもなく、権力もない、どこにでもいるただの人だった。しかし、私は既に学んでいた。
 愛、自由、力、献身、努力。他にも色々と学んだ。
 だからお金や権力がなくても平気だ。きっとこの人生でも何かを学べるに違いない。次は何に生まれ変わるだろうか。まあいいさ、それは先の楽しみにとっておこう。
 きっと面白い一生になるはずだから。 
 


次の企画に参加します。元気出してくださいね!

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