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詩集 幻人録

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2021年1月の記事一覧

頭から生えたフラワーでブーケを

頭から生えたフラワーでブーケを

私は自分の都合が悪くなると怒鳴ります。
追い詰められると大声を出します。
頭に血が昇ると自制がききません。

弱い人間程よく吠えます。

このままでは私の周りには誰もいなくなります。
孤独な終末を迎えるでしょう。

だから私は目を瞑り、ゆっくり数を数えます。
一、ニ、参、四、伍。

数が大きくなるほどに、右脳よりも左脳が活発になっていきます。
感情に支配されるのは大変にリスキーです。
右脳は使い方

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寄り添いたいのは

寄り添いたいのは

「わたしはあそこに行く、だってあの人毎日お花にお水をあげてるから。その時の笑顔がとっても素敵」

「俺はあの人。バリバリ働く姿がカッコいいじゃん、きっと何事にも真剣なんだ」

「僕はあそこかなー。不幸続きで可哀想」

「わたしはあっち、あのカレーライスがとっても美味しそう。愛情いっぱいって感じ」

「オレはどーしようかなー」

「あの人なんかどう?この間、電車で席を譲ってた」

「まじか、じゃあオ

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星を落としたアールグレイ。

星を落としたアールグレイ。

あなたが紅茶を淹れたから、
真夜中のリビングに幸せの香りが訪れる。

アールグレイの持つ気品と静穏さが、
我が家の偏屈なリビングの格をガククっと上げる。

そういう時間が、シャワーでは落とし切れなかった
1日の消しカスの様に散らばった濁りを、
ひとつにまとめて片付けてくれる。

私はあなたの話しを聞く。

今日という1日の篤行と罪。
そして、なんとでもない小さな事象。

あなたの声が木目の様に年輪

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混じり合う程、穏やかに。

フライパンにオリーブオイルを一周。

ガーリックの一欠片、皮を剥くと包丁の平で潰す。
グチャっとなったガーリックと種の抜いた唐辛子を、オリーブオイルの池に落とす。

フライパンの置かれたコンロの火を着けると、
私はすぐに弱火にした。

隣のコンロでは、パスタが塩分を含んだ湯の中で、
ボコボコとゆっくり姿を変えていく。

最初のうちはスイッチを入れても動かない電池切れのおもちゃの様に、フライパンの上

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雨と私と色の無い事情

雨と私と色の無い事情

冬の雨は嫌いだ。

私は【踏んだり蹴ったり】という言葉を
【冬のザーザー】とよんでいるくらい嫌いだ。

寒いうえに寒い。

透明なビニールの傘も、ボコボコと当たる雨粒に
文句のひとつも言いたいことだろう。

寒さと苛立ちのなかに住む私は、
必然的に目の前にそっと構えるコンビニエンスストアに吸い込まれていった。

店内はお昼時ということもあり、
人口密度が修学旅行生でごった返す東京タワーの
エレベー

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みかんが産んだ厄災

みかんが産んだ厄災

みかんの皮を剥くときは、頭の中で無意識に
自分の理想のみかんの味を思い浮かべる。

皮を剥き終わると、すじを掃除して口に運ぶ。

その一瞬、みかんの実が少しでも酸っぱかったり、甘すぎたりと先程頭の中で思い浮かべた味との
相違が生じるとなんだか少し損をした気分になる。

そして損をしたという感情に支配された直ぐ後には、いろいろな軌跡を辿りいただいた聖なるみかんを、自身の弱々しい直感ひとつで損をした、

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