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定食屋さん

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食を通じて感じたこと
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#食事

冬の始まり サイゼリヤ

冬の始まり サイゼリヤ

昨日は出張だった。
片道3時間。
帰る途中で日も暮れた。
薄闇の中、運転する。
…たまらなく寒い。
昨日から急激に冬の気温になった。
手先が冷え、身体全体がこわっていく。
空腹も拍車をかけて、体温を下げる。
まずいなぁ。
と思っていたところに、
『サイゼリヤ』の看板。
救われた…!
迷わず入店することにする。
冷たい風に、縮こまりながら急いで店内へ。

店内はオレンジの明かりに包まれ、暖かく感じた

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三方良し

三方良し

金曜日、夜21時、
定食屋さんへ行った。
久しぶりのおひとりさまにワクワクする。

夜ご飯のピーク時間を過ぎたからか、
店内は、仕事終わりであろう男性たちばかり。カウンターにずらっと座って、黙々と定食を食べている。
バラエティ番組と気のいい店員さんの声だけが響く店内。
この疲労感がうっすら漂う、"食べる"ことだけに集中できる感じが好きだ。

ガッツリ食べたい気分。
今日は夜に滅多に食べない揚げ物に

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食べる 笑う 生きる

食べる 笑う 生きる

「ただいま。」
仕事から帰り、誰もいない部屋に向かって声を掛ける。
今日はちょっと授業が上手くいった。
いつもは帰って一人反省会鬱々タイムを過ごすことが多いけど、今夜は珍しくご飯を作りたい。自分にご褒美だ。

かぼちゃと人参たっぷりのクリームシチューにしよう。
一口大に切った鶏もも肉、玉ねぎをバターで炒める。
くたっとなったら、レンジでチンした人参とかぼちゃを入れる。
コンソメの代わりに、魔法の調

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料理の中の機微

料理の中の機微

料理の中に存在する様々な機微。
炒めるうちに水分が抜けてパチパチと跳ねる油の音。
じっくりことこと煮た時の、ふわっと出汁が香ってくるあの優しい瞬間。
揚げ物をしている時の衣が狐色に変わりゆくのを見るわくわく感。
糠床を混ぜている時、手に当たるふんわり柔らかな糠と瑞々しい野菜の感触。
それらの繊細な機微を愛おしく思う。

「手を入れるほど素材の味は落ちる」
という言葉を聞いたことがある。
あれもこれ

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手に入れられなかった物は必要ない

手に入れられなかった物は必要ない

また一人、私の元恋人が結婚をした。
彼は、一番私の家族のことを理解してくれていた人だった。付き合う人に口煩い母も彼だけは唯一気に入っていた。



彼の家は両親が幼い頃に離婚し、
お母様も外国の方。身よりもない中の一人で子育て。お母様もさぞ大変だっただろうと思う。
彼も小さい時から苦労していたそうだが、自分で一生懸命努力して大学まで奨学金で通っていた。心から尊敬できる人だった。



大学の頃

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「手」を感じるご飯

「手」を感じるご飯

一人暮らし。
仕事が終わったあと、冷たいコンビニご飯を黙々と食べる。
…味気ない。
詰め込むだけの惰性飯。
作った人の「手」が思い浮かばないような食事。
そんな時、昔のことを思い出す。



小学生の時、
母に1000円を渡された。
「これで何か食べて来て。」
お金を渡されたのは初めてで、不安で胸がぎゅっと掴まれたような気持ちになった。
「どうしよう…?」

母は、父と喧嘩するといつもそう。

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