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【読書ノート】32「ラストエンペラー習近平」エドワード・ルトワック

エドワード・ルトワック氏は米戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問の戦略家。中国に関しては脅威論や膨張論が席巻しているが、氏は中国の強さや脅威に関しては懐疑的なスタンスを取っており、中国の国際社会における弱体化や孤立に焦点を当てている。氏の意見がどこまで正しいか現時点で見極めは困難であるが、中国の現状と未来を分析するために有用な意見の1つであることは間違いない。

・・・海洋力とは、海軍力の上位にある概念だ。それは自国だけではなく、他の国との関係性で決まるのである。
典型的な海洋国家であるイギリスの強さは、単に狭義の海軍力、船の性能などだけによるものではない。友好国との軍事、外交、経済、文化など総合的な結びつきの強さに基づくものだ。そうした関係からは、例えば港湾施設の利用や燃料の供給、船の整備にはじまり、海や気象の状況や敵国の内容といった様々な情報など、有形無形の支援や協力がもたらされる。

P49

アメリカが「G 2」のような議論に反応しないのも「同盟のパワー」を知悉しているからだ。アメリカの強さは、アメリカ時代の国力に加え、イギリスやオーストラリア、カナダ、 EU 、日本など世界の主要な国々との同盟関係にある。それを抜きにして、中国との二国間交渉を行うメリットはどこにもない。 おそらくアメリカで中国との 「G 2」を支持していたのは、ヘンリー・キッシンジャーただ一人だっただろう。

P52

このように軍事テクノロジーの歴史を見た時にいくつかの教訓が導ける。
まず歴史の流れを変える兵器はめったに登場しないということだ。そして、軍隊という組織は、それまでのシステムにない技術の導入に対して、必ず抵抗することである。そのため、画期的な技術ほど、メインストリームでなく、周辺的な場所で発見されることが少なくない。
テクノロジーがどのように発展するか、予測するのは難しい。私の経験からすると、軍事技術において、次に何が来るかを予測することは、ほとんどは無駄に終わる。やらなければならないことは、まだこの世にない技術を予想することではなくて、すでに目の前にあり実現している技術の中から、何が有用かを見極め、採用することなのだ。 現代でいえば、ドローンであり、 AI によるデータ解析だ。

P137-138

(2022年9月18日)


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