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日刊雨亭の短く深く

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短く、深く、伝えたいこと
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2023年9月の記事一覧

あの子が書いた私の名前

あの子が書いた私の名前

『親友』

『花鳥風月』

『わたしの名前』

あの子が描いてくれた習字

貰ってからずっと部屋の壁に飾ってある

あの子は「適当に書いた」と言うけれど

紙の上で強かに踊るあの子の字が

一人暮らしの静かな部屋を照らすので

秋

夏の終わりの哀愁と

冬の始まりの静粛と

そんな季節に挟まれて

緑の葉がオレンジに変わり

生ぬるい風からスゥっと冷たい風になり

地面に散る夏の花びらが

俯き歩く私に

秋の訪れを唄うのだ

手書きの手帳

手書きの手帳

高校生までずっと手書きの手帳とカレンダーを使っていた

毎年友達と新調しに行くのが楽しくて、ついでにペンやシールやマスキングテープも買って、年明けは良く文房具屋に何時間もいたものだ

テストの予定や、遊ぶ予定、何もしない日も何かを書いた

手帳とカレンダーが私の予定で埋まっていくのが好きだった

スマホで予定を管理するなんて、断固として拒否!
ありえない!

と思っていたけれど、大学に入ってまもな

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個性のモザイク

個性のモザイク

丸くて大きな垂れ目はパパ譲り

大きな手のひらはママ譲り

昔話を人に話す癖はおばあちゃん譲り

引き出しに色んなものを詰めるのはおじいちゃん譲り

同じものを3つ買う癖は妹たちがいるから

なんでもおもしろ話に変えちゃうのはM子の影響

写真が好きなのはI子の一途な感受性に惹かれて

ギターを弾くのは先輩という師匠がいるから

沢山の要素に囲まれて、世界に1人だけの私がいる

個性のモザイクは遺

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画面越しの365日

画面越しの365日

2019年から2020年に変わった日のことをよく覚えている

ちらほらと雪が舞う12月31日だった

私はよく意味もない写真を撮るが、この日友人に指摘された
無闇に写真をとって未来の自分に残そうとしても無駄だと
そんな画面越しの景色を残すなら、もっと今を生きろと

それでこの友人は私にフィルムカメラをプレゼントしてくれた

2019年最後の日はお天気雨だった(お天気雪だろうか)

キリのいい数字に

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踊るように生きる

踊るように生きる

私は中高6年間、新体操部に所属していた

新体操には細かい評価基準が沢山ある

背筋、指先、足先、軽やかさ、ステップ、柔軟、表情、衣装、体の動き、リズム感、手具の使い方…

“1分半の演技の中でどれだけ美しく踊るか"
それを競うのが新体操という競技だ

新体操の大会は半年に1回しかない

選手は1分半の演技を半年間かけて練習する

とにかく痛く、とにかく厳しく、とにかく辛く
しかし楽しく、軽やかに

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時を告げる

時を告げる

少し前まで美味しいと思っていたものが、なんとなく違う味に感じて、あの時の私から一定の時がたったのを感じた。

それは、美味しいものをたくさん食べて、美味しい時間をたくさん過ごした中で、少しずつ"一番"が更新されて来た証拠なのだ。

嬉しくもあり、少し寂しくもあった。

ずっと続くと思っていたけれど、あっさりと、次々に、その日は過ぎてしまうし、思い出も味も蓄積されてゆく。

大好きは大好きのままでい

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秒速7メートルの人生

秒速7メートルの人生

昨日の大雨はさよならを言うにはちょうどいい土砂降りだった。
アスファルトを打つ雨の音は台湾の雨季らしい、声を掻き消すほどの激しさで、遠くで響く地鳴りのようだった。

雨粒の一生ほど短いものはないと思う。

でも宇宙からみた人間など、雨粒の一生にも満たないのだと、秒速7メートルにも満たないのだと思う。

明日も雨かな。

今日の雨粒を両手ですくって、明日に連れて行くことはできるかな。

雨粒は明日を

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好きって言う代わりに、

好きって言う代わりに、

夜明け前のキッチンでクッキーを焼こう

海岸に座って海を見よう

なんとなく隣町まで行こう

なんでもない日にワインを飲もう

たまには好きなものだけ食べよう

同じ匂いの洗濯物を一緒にたたもう

素敵じゃなかった日の終わりにお花を買おう

眠れない時は朝日が昇るまで待とう

世界はこんなにも広いのにちっとも丸くないねって笑おう

いつまでも捨てられないもの

いつまでも捨てられないもの

・可愛いくてつい切り取ったペットボトルのラベル

・何枚も連写してある写真

・「ノート貸してくれてありがとう」の付箋

・見栄

実家を出た時、18年分の荷物を冬物の服を入れるケース一つ分だけ残して、他はあげるか捨てるかして来た。

私は断捨離が得意だけど、きっとどこへ行くのにも連れて行くもの、どこに行っても捨てられないものが私の人生の大切なものなのだと思う。

このもの(形があるにせよ無いにせ

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不完全だから、好き

不完全だから、好き

「ダメな自分を認めたくない」

「人の怒りを避けて生きたい」

「私にも人にはない宝石が欲しい」

「羨ましいと嫉妬の境目」

「ほっといてよ」

「助けてって言えない」

「日に日に嘘が簡単になっていく」

「私らしいって何?」

「常に何かと繋がってないと怖い」

4年前の日記を開いたら、今とは別な私がいた
あの時は、あの時なりに一生懸命に生きていた
完全なんて、完璧なんてないけど、
いつもそ

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