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「ニーズが多様化する学校」×専門職を配置する「チーム学校」=多忙化の促進??

学校のニーズが多様化していることは、教育関係者でなくてもご存知の方も多いかと思います。


 学習面だけでなく、生徒指導面、特別な支援を要する子ども、そして近年では貧困の状況も芳しくないことも明らかになっています。


 これらの課題を全て、現状の教員で賄うことはもちろん不可能に近いでしょう。

 (もちろん、強靭な体力と精神力で、全力で現状に向き合っている方も多々いらっしゃいますが、それを全教員に強要することは無理難題です。教員の努力と根性に任せる時代は終焉させるべきだと思っています)


 ただ、その一方で、義務教育というシステムが、教育の土台となる福祉面に作用していることも事実です。

 


1 学校のプラットフォーム化とは??

 

 「子どもの貧困」という言葉で周知されているように、十分な成育環境ではない子どもが増えています。(※正しくは子どもを育てる保護者や環境の貧困ですが、キャッチ―なので使います)


 小学校や中学校は義務教育のため、ほぼ全ての子どもを把握することが可能です。

 例えば、保育や幼児教育は義務ではないため、下手をするとどこの機関にも周知されず小学校に入学してくる子もいます。


 また、幼児期は手厚い福祉の恩恵(定期健診等)を受けていても、就学してしまうと福祉の手から離れてしまうことも多いです。



 そこで、学校を福祉的な面でも捉えようというのが、学校の「プラットフォーム」化という方向性です。



家庭の状況にかかわらず、学ぶ意欲と能力のある全ての子供が質の高い教育を受け、能力・可能性を最大限伸ばしてそれぞれの夢に挑戦できるようにすることが、一人一人の豊かな人生の実現に加え、今後の我が国の成長・発展にもつながるものである。学校を地域に開かれたプラットフォームと位置付けて、スクールソーシャルワーカーが機能する体制づくりを進めるとともに、地域において支援に携わる人材やNPO等民間団体等が中核となって放課後児童クラブや地域福祉との様々な連携を生み出すことで、苦しい状況にある子供たちを早期に把握し、支援につなげる体制を強化する。 また、将来の貧困を予防する観点から、高校中退を防止するための支援や中退後の継続的なサポートを強化するとともに、教育の機会均等を保障するため、教育費負担の軽減を図る。

文部科学省「学校をプラットフォームとした総合的な子供の貧困 対策の推進」平成30年度概算要求主要事項4 参考資料5 



 学校自体は教育機関であり、福祉面の役割が主ではないことは以前述べた通りですが、主にスクールソーシャルワーカーを配置を推進して、福祉的な機能をもって子どもを支えようという発想です。




2 「チーム学校」の推進による教員と他専門職との協働


 このスクールソーシャルワーカーの配置ですが、別段新しいというわけでもないです。


 数年前になりますが、「チーム学校」という言葉が、教育関係ではちょっとした流行になりました。


 いわゆる、「チーム学校」とは??

近年,グローバル化や情報化が急速に進展し,社会が大きく変化し続ける中で,複雑化・困難化した課題に的確に対応するため,多くの組織では,組織外の人材や資源を活用しつつ,組織の力を高める取組が進んでいる。こうした中で,学校においても,子供を取り巻く状況の変化や複雑化・困難化した課題に向き合うため,教職員に加え,多様な背景を有する人材が各々の専門性に応じて,学校運営に参画することにより,学校の教育力・組織力を,より効果的に高めていくことがこれからの時代には不可欠である。

中央教育審議会「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について (答申)」2015.12.27

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2016/02/05/1365657_00.pdf

 
 スクールカウンセラーや各種支援員等がこれらに当たりますが、スクールソーシャルワーカーもこれに該当します。

 多様化するニーズに対して、各種の専門家を配置しようということです。

 

 教員は授業の専門家ですので、福祉面については他の専門家の力を借りようと。
 餅は餅屋に、理にかなっていますね。



3「教員職務曖昧型」から「教員職務限定型」へ


 新しくないとは言いつつ、この流れもここ10年くらいのことです。


 従前からの向きは、教員の仕事は「教員職務曖昧型」、平たく言えば「学校は何でもやります」「教員も何でもやります」ということでした。

 ブラックですね笑

これまでの日本の教職員等指導体制は,学校多機能教員職務曖昧型(第Ⅳ象限)に位置する。日本の教職員等指導体制には,固有に良さがあることから,今後とも継承していくべき点も多い。しかし,新しい時代に求められる資質・能力を育む教育課程を計画・実施するとともに,複雑化・多様化した課題を解決し,教員が子供と向き合う時間を確保するためには,教職員等指導体制の再構築が必要である。その際,学校多機能教員職務限定型(第Ⅰ象限)及び学校機能限定教員職務限定型(第Ⅱ象限)に移行することを検討する必要があるのではないだろうか。

国立教育政策研究所「学校組織全体の総合力を高める 教職員配置とマネジメントに関する調査研究報告書」2017.3 ※下線はTsukemen加筆

 


 つまり、多様化するニーズに応えていくこと、そのために教員が教員としての業務に注力するためには…

第Ⅰ象限:学校自体の機能は多様化したままで、教員の仕事は限定的にする

もしくは

第Ⅱ象限:学校の機能も教員の仕事も限定的にする

のどちらかにしましょう、という報告です。

 

 いずれにせよ、教員の仕事は限定的にしましょう、ということです。つまるところ、学習に関することだけにしましょう、という流れになるかと思います。

 

 「学校のプラットフォーム化」を踏まえると、現実的には、学校自体の多機能さはそのままキープしたいというところでしょうか。

 

 

4 分業化された職員が集う学校の円滑な運営は??

 

 そうすると、多様な専門性をもつ職員が、いわば分業化された状態で学校に勤務することになります。

 

 …が、子ども自体を分けているということではありません。

 同じ子どもを、学習面や生活面、それぞれの側面で、異なる職員が支えていこうということになります。

 

 ただ、それぞれの専門職が各学校に常駐するというのは、まだまだ難しい場合が多いようです。

 

 例えば保田(2014)では、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの連携についてまとめています。
 

 
この研究によると…

 

・スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの効果的な「キーパーソン」となる教員の存在が欠かせない

・そして、「キーパーソン」が同一の場合、連絡が取りやすい

・そしてそして、「キーパーソン」の時間的余裕がある場合、最も連絡が取りやすい


とのことです。

 


 

 

 つまり、多様なニーズに応えるために専門家を配置するが、効果を出すためには「パイプ役」になる教員が必要と。

 

…それ、教員の仕事多様化していませんか?笑

…もっというと、多忙化していませんか??笑

 

 

「ニーズが多様化する学校」の課題解決のために

専門職を配置する「チーム学校」を目指したら

多忙化の促進??

 

ここだけ切り取ると、落語みたいになってますね^^;

 

 

 子どもからすると、様々な大人からアプローチをされていることになります。

 

 守られている、といえば良いかもしれませんが、もしかしたら同じことを何度も話す事になるかもしれません。

 また、専門職の中にも、話したいと思える大人もいれば、そうでない大人もいるでしょう。

 

 そういったことを防ぐためには、業務が増えた感はぬぐえませんが、大人同士の連携は欠かせないのかもしれません。

 

 

5 終わりに

 

 いかがでしたか?

 

 多忙化解消ではなく、あくまで多様なニーズに応えるための専門職員の配置と言われてしまえばそれまでかもしれませんが、専門職を配置した結果、教員の多忙化が促進され、注力すべき授業に力が回せないとなれば本末転倒でしょう。

 

 

一旦、十分な教諭と専門職を学校に配置したらどうでしょう??と思うばかりです

 

ただ、それには人材不足という根本的な問題がありますが…
(予算についてはあえて触れません)

 

 

まずは、このような現状をご理解いただける方が増えるだけでも、改善への光が見えるかもしれません。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました^^



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