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2018年11月の記事一覧

詩 46〜50

詩 46〜50

  ユートピア

見知らぬ瞬間 ここはどこ
ここは空白 珊瑚駅
無実の領域 目をあけて
安心していい 色白の

横顔 肯定する 平和
よごれた空気は入れない
失意のうろこ ひとつぶも
おまえはだめだ 思い出せ

遠いむかしの くちづけだ
苦手だ ちらかる この事実
宝石 幸運 屈辱でもいい

なにか産めればよかったよ
あいにく あなたはいそがしい
でも いや ただの ハッピーエンド

  下校

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詩 41〜45

詩 41〜45

  ふたりきり

よろこびあふれる 空き地では
あなたの名前は セ、リ、ア
確信している かたくなに
そこに意味でもあるように

消去しようよ いやなやつ
算数しても分からない
国語の教科書 つまらない
どこなの ただしい植物相

うれしいよ そのシンパシー
だけど 歯向かう 否定する
だから 減らない 体重は まだ

もう絶対に 上機嫌
これでおしまい しあわせだ
呼吸困難 がまんしたなら

 

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詩 36〜40

詩 36〜40

  木陰

たまごの黄味をくりぬいて
その敬虔さ 亀が知る
無理に ため息 つかないで
無理矢理 にごって すねないで

蒼茫 無情 手錠の輪
うたかた 錯覚 無関心
はっきり言って興味ない
吹き荒れる 時 それが なに

ポプラにかかる火山灰
嘲笑 しぼり 深紅の目
自分の影の犠牲になって

不老不死でも こわい でも
凶器は未練 豊饒の
こだま 消えても がんばりなさい

  変身

わたしの

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詩 31〜35

詩 31〜35

  空想

きつね 嘘つく また懲りず
ペットボトルは点々と
ガルガンチュアのお姫さま
非常口への目印だ

「自転車ですか」「船でした」
サンタクロースが見つからず
ホームズまでも健忘症
時計回りに苦笑する

つばめ 帰らず 定数化
阿修羅の眠り 去勢中
母の電話で 加速する 無知

コーヒー 紅茶 コーラ でも
水が飲みたい ただの水
その味こそが わたしのハート

  ヒロイン

胸を裂かれる

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詩 26〜30

詩 26〜30

  はだしの日々

不器用だけど上手です
きみは本当によく笑う
だけど 書けない カタカナで
カエルの名前 かわいそう

きらいな野菜 たくさんで
手を洗えない あやふやで
目の奥 もっと 強くなれ
きみは本当にいい子です

なんにも なんにも 言わないで
はだしの日々を守るから
右手 左手 そう にぎれます

ただしいものと ちがうもの
すてきなものと いやなもの
きみは本当に上手に笑う

  

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詩 21〜25

詩 21〜25

  田園の秘密

乳母車にはリンゴだけ
リンゴをつめて木陰まで
豆電球の イチジクの
かたちはくずれ カモメの目

ステンドグラス たたきつけ
粉々になるフライパン
青いレンガのトンネルだ
通り抜けたら 雨 光

私の姉は二階から
花壇に落ちた 目がまわる
だから帽子は大切にして

あなたの枝にシャツをかけ
かがやく種もばらまいて
灰になるまでここにいるから

  いつかどこかで

ナイフ 水筒 

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詩 16~20

詩 16~20

  うぶごえ

蚕の王様 手紙 書く
アルコールランプ 麦 燃やす
ガスか ボタンか ホウセンカ
きみは友達 肩 たたく

ペンギン ヒロイン 蛇 すすき
今年最初のヤマブドウ
ツタのからまる天秤に
釣り合うものはなんだろう

磁石でまわる三角形
プレゼトには糸車
贈っておこう 全部 遺伝子

肺の隙間で 球根は
心のかわりにならなくて
だけど今夜がたのしみでした

  ミカンの川

飛びこめばい

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詩 11〜15

詩 11〜15

  プールで浮き輪

真夏に死んで 胸が割れ
にじんで たれる 消毒薬
谷間の底で寝しずまる
水玉模様のリノリウム

耳が 額が ちがうから
同じジュースを飲んでいた
桜並木の午後三時
あの花は でも ゼラニウム

空のまんなか 生まれ 泣く
スカートはいた女の子
水族館で待ち合わせよう

「いつか きっと」が口ぐせの
アイという名の女の子
いま なんにでもなれる あなたは

  きみの墓

それ

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詩 6〜10

詩 6〜10

  神さまだった少女
 
なんて気圧だ まるで月
窓際が好き はなつ 花
スカートゆれる 嘘の春
少し泣いたら もう夏だ

右むけ右した馬鹿がいる
ガラスが割れて 魚の目
排水溝で見つかるの
あのころじゃない そうじゃない

神さまだった少女には
約束なんてできなくて
きみは偽善者 心を食べる

神さまだった少女でも
ぼくの気持ちは分からない
なんにもないよ 「あるけど」「ないよ」

  夏至

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詩 1〜5

詩 1〜5

 悪い子供

悪い子供の住むところ
校舎の裏の焼却炉
あの子の声をとじこめて
銀のロボットくしゃみした

悪い子供はひとりきり
アサガオの種のみこめば
プールの水もにがくなる
真昼の月とゆるい坂

いまはなんにも分からない
色えんぴつで描いたうそ
手と手をつなぐ 心 みつけて

やさしい人に出会えたら
雨も強いし風邪ひくし
もっときれいに生まれたかった

  くちぶえ

泣く泣く蜂の羽を織る
あん

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