詩 11〜15
プールで浮き輪
真夏に死んで 胸が割れ
にじんで たれる 消毒薬
谷間の底で寝しずまる
水玉模様のリノリウム
耳が 額が ちがうから
同じジュースを飲んでいた
桜並木の午後三時
あの花は でも ゼラニウム
空のまんなか 生まれ 泣く
スカートはいた女の子
水族館で待ち合わせよう
「いつか きっと」が口ぐせの
アイという名の女の子
いま なんにでもなれる あなたは
きみの墓
それがトンボの首の骨
光っています 青白く
おもちゃのような きみの墓
空気はレンズ 煙 砂
じゃまをするのが朝顔の
花と葉と蔓だけならば
かたづけるから待っていて
となりの席にいてほしい
町を見下ろす鉄のいす
みんなピアノをひいている
かなたには本 ここには栞
百おくまん年むかしから
人は握手を知っていた
神さまが吐くすいかのにおい
どうせあなたは
どうせあなたは泣くでしょう
昨日は髪を切りすぎた
今日は虫歯が痛むから
明日はわたしが帰るから
廊下を歩く幽霊は
きっとさみしい男の子
オレンジ色に影をのみ
もの音ひとつ聞こえない
星のタトゥーがあせていく
校庭はもう夜が開ける
入学式ははじまったばかり
死んでいく日も笑ってた
気がつけば また 繰り返す
わたしの名前 わたしのくしゃみ
待ちぼうけ
夕焼けの赤 そのままに
まっ赤なままに アンブレラ
目じるしもある 藍色の
水玉模様の 染みが まだ
生きるのでしょう 熱がある
また風邪なのか もういやだ
テレビはヒマワリ そればかり
忘れられても芽を出して
きみはいつでも悪魔の子
窓が割れては 首かしげ
三脚の上 爪先立ちで
ゼンマイ仕掛け シャンデリア
ドミノと歌う ダリア さあ
しずかにまわれ さあ シャンデリア
テント
パジャマを脱いで 日が落ちて
ホタル 花咲く 電柱を
流して 狂う 時刻表
まだまだ人に慣れてない
空気はあるから大丈夫
死なないように息つぎを
あなたの時間にすればいい
はじめはゆっくり そして 早く
まるで悪夢のような目が
霜に埋もれて泣いている
夜の巨人が溶けて 蜂蜜
耳は捨てても大丈夫
誕生日には庭一面
金貨を降らす ヤシの実をまく
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