詩 46〜50

　　ユートピア

見知らぬ瞬間　ここはどこ
ここは空白　珊瑚駅
無実の領域　目をあけて
安心していい　色白の

横顔　肯定する　平和
よごれた空気は入れない
失意のうろこ　ひとつぶも
おまえはだめだ　思い出せ

遠いむかしの　くちづけだ
苦手だ　ちらかる　この事実
宝石　幸運　屈辱でもいい

なにか産めればよかったよ
あいにく　あなたはいそがしい
でも　いや　ただの　ハッピーエンド

　　下校

その橋　行くな　しもやけの
きみには　つらい　悪化する
病気　手おくれ　人みしり
見てられないよ　その表情

土手の上から　道　わかれ
小川にそって　とぼとぼと
草笛　吹いて　靴　捨てて
あきれたものだ　未練です

催眠術や　夢うらない
無力だ　なにも分からない
第一印象　やさしい　イグアナ

どんなに言っても　むだだから
わたしは機關　反射する
きれながの目が　ぎざぎざの歯が

　　休憩

ＵＦＯなんて夏の泡
これが胎動　それとも死
友達だけが本当で
踏み鳴らす床　窓にクモ

遊んでくれとは言ってない
真相なんて　すれちがい
笑う　笑った　蚊帳のなか
寝顔　苦しい　朗読の

ページ　飛ばした　それでいい
だってあなたは気づかない
永遠　ちぢめた　十五秒間

そろそろ勉強　はじめよう
また　きれいごと　好きになる
畳のにおい　太陽　まるい

　　一夜

添い寝しながら　ココア　なめ
安楽椅子の上で　石
空気銃なら息の根を
とめて　錯覚　ゆるぎない

耳を貸します　悪と闇
選びだされた　いちじくの
あまい露かもしれません
そうかもしれない　なつかしい

交尾の果てに食事して
迷惑なんて言わないで
ため息　まねて　無価値な犠牲

どこに結び目　あるのかと
探すあなたを見守って
よみがえる　愛　タバコ　くわえて

　　羽化前夜

透明人間だからかも
坂の上から見はらした
屋根の海には柿ひとつ
置かれているのが気になって

ひまわり畑で昼寝して
日焼けでもして黒くなり
ミルクを飲んで白くなり
あと二時間で影法師

とどろくチャイム　羽化前夜
飢えたおなかをつらぬいて
八つ裂きにした　まっ赤なマント

誰も言ってはくれなくて
目　指　心臓　すけている
もう一度だけ　きみを選ぼう