詩 1〜5
悪い子供
悪い子供の住むところ
校舎の裏の焼却炉
あの子の声をとじこめて
銀のロボットくしゃみした
悪い子供はひとりきり
アサガオの種のみこめば
プールの水もにがくなる
真昼の月とゆるい坂
いまはなんにも分からない
色えんぴつで描いたうそ
手と手をつなぐ 心 みつけて
やさしい人に出会えたら
雨も強いし風邪ひくし
もっときれいに生まれたかった
くちぶえ
泣く泣く蜂の羽を織る
あんなふうにはならないで
くらげのような恋をする
さあ ゆきなさい ゆきなさい
きみの右手はまっ白だ
ゆれる羊歯にもはにかんで
夏のにおいにむせかえる
自転車こいでゆきなさい
歌いたいのに気づけない
生まれ変わってなんになる
わたしはずっと覚えています
ブリキの筆箱 虫めがね
ちいさな胸を波うたせ
昨日の夢を 今日の天気を
朝
裏山の上 観覧車
どこかで蝉がないている
友達みんなもういない
生まれた町に手をふった
砂くいあさる 午前中
赤土ふんで 昼さがり
ぜんそく気味のあの景色
もう帰りたい 帰りたい
焼けた瓦の小屋のなか
片目つむってひざかかえ
入学式は終わっただろう
にわとり うさぎ 背のびする
レンガの広場にねころんで
夢を見ている 松はそびえる
少年世界
真夏の雲は文房具
かばんの底でかたかたと
まるいひとみの本の虫
あなたのことが好きでした
わたしをもっと見てほしい
顔をあらって靴をはき
じょうずに歌をくちずさむ
うつろな胸にかたつむり
そんなに怒ってどうするの
だれもひとりでいたくない
渡り廊下で歯をくいしばる
風邪の心が語りだす
はじめましてのそのあとで
お茶にしましょう 一時間だけ
黄昏製造機
版画にきざんだ竜のひげ
ひっくりかえって からまって
ニスでぎらつく爪をかむ
先生 ぼくは帰ります
いつも分かってほしかった
おなかが痛い 目は赤い
息をとめてはまた死んで
だからじょうずに絵を描こう
球根くさったヒヤシンス
これじゃあ ほめてもらえない
もっとじょうずに声をだしたい
うるさい風が吹きつける
どうせここではみんな椅子
やっぱりぼくは帰るよ 先生
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