詩 16~20
うぶごえ
蚕の王様 手紙 書く
アルコールランプ 麦 燃やす
ガスか ボタンか ホウセンカ
きみは友達 肩 たたく
ペンギン ヒロイン 蛇 すすき
今年最初のヤマブドウ
ツタのからまる天秤に
釣り合うものはなんだろう
磁石でまわる三角形
プレゼトには糸車
贈っておこう 全部 遺伝子
肺の隙間で 球根は
心のかわりにならなくて
だけど今夜がたのしみでした
ミカンの川
飛びこめばいい 海 わたる
声 いたずらに 響くから
頭上をこえて 流れ星
汗でにじんで見えないか
青いひとみは水たまり
残したものは心だけ
帽子をひとつ選べない
髪を切る日も雨が降る
矢印どおりに転がった
少しすっぱいデザートを
食べるとき 爪 爪 爪 爪が
猫背のきみがさみしげに
枯葉の下で息をとめ
眠るとき 花 花 花 花は
生命讃歌
まるい頭の妹の
リンパが枯れて限界だ
それでも だけど 知っている
自由を叫ぶ人々の
町にただよう霧 晴れて
光を飲んだ胎盤で
クジラとトンボの戦争だ
テラスのわたし タバコ 捨て
タンパク質が 全部 罪
恐竜までもあごをなで
銃痕の穴 描いた星座
あの風景は あの川は
白黒になる マエストロ
知らない子供をベッドに寝かせ
渦
まどろみながら 肘をつき
あなたがなでる幻灯機
見せたいものは ひとつだけ
暗い炎がおどる海
信じてほしい 一度だけ
あなたに愛してほしいから
願ったものは ひとつだけ
夏休みには伝えます
鐘がなる朝 音の渦
光のなかで目を覚ます
そこは図書館 さみしいのです
かくれんぼして 風の渦
無垢な拍手の思い出に
溺死できない くやしいのです
ベランダ
行ってしまった きみは月
ノートの罫線 二十本
ひとつ ひとつ と足をかけ
星の最後に 水色の
花瓶を捨てて きみは月
そこから見たら虫たちは
どんな心に見えますか
髪を結いあげ 待ってます
ネクタイしめたビー玉が
むかえにくる日 のどは裂け
沈黙のなか はばたくでしょう
未来も過去も咀嚼中
水上 野バラ 温室で
雨は降らない 光もつめたい
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