詩 26〜30
はだしの日々
不器用だけど上手です
きみは本当によく笑う
だけど 書けない カタカナで
カエルの名前 かわいそう
きらいな野菜 たくさんで
手を洗えない あやふやで
目の奥 もっと 強くなれ
きみは本当にいい子です
なんにも なんにも 言わないで
はだしの日々を守るから
右手 左手 そう にぎれます
ただしいものと ちがうもの
すてきなものと いやなもの
きみは本当に上手に笑う
白銀祭
鐘はあおむけ 藍 求め
ゼリーの温度にどきどきと
体の暗さ やわらかさ
鏡と凪いで でも ゆれる
ふるえる わたし 待ちわびる
終わりの合図が見えたのに
スターマインの逆上がり
忘れたころに 鐘の音だ
空に一滴 祝砲だ
まっぷたつに裂く 円舞線
どんな風船 むらさきキャベツ
キャベツの子供は元気な子
生命だけが輝ける
なぜ なぜ どうして 死んでいきます
果樹園戦記
ケトル 永遠 それはない
そんなはずない 果汁 脈
暴力さかえる カブトムシ
卑怯者さえ このしまつ
シャベルを忘れ 盾を捨て
三角形も 十字架も
まるでサーカス 夜の海
こわれた楽器を許さない
有刺鉄線 少しだけ
長くて 痛い 暑すぎる
しあわせの音 アイスクリーム
小鳥のこころ ガーネット
天国までの五十二歩
イチゴのねがい 爆発しそう
花嫁
ここは密室 駐車場
あなたの右手 すばらしい
かけがえのない芸術で
ストーブのなか 琥珀病
ここに犯人 洗濯機
グラジオラスが咲いている
プラスチックのガイコツと
タイムマシンに放火した
髪を切ります あせらずに
ゆっくりでいい へたでいい
鏡の前で 見える イグアナ
腰かけている乳母車
機械は光って かたいから
泣きそうな指 助けてあげない
同級生
なんにかさねた この青を
地震の夜明け カーテンか
それとも 病室 また 受話器
影にぶつかる人の影
塔から落ちた けがれなき
嘘よ ひとみよ 音楽よ
薬を飲んだら また会って
川をなぞれる 自転車で
息をとめても死ねません
夜中に起きた魔法つかい
一生懸命 笑う練習
小さな叫び 髪かざり
ただしいことなど言わないで
軽蔑されて生きていなさい
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