『スト6』の「MRを気にせず楽しもう」は全部嘘。~MRとの向き合い方~
『ストリートファイター6』(スト6)が発売され1年以上が経ち、これまで様々なことが話題になった。その様相は"学級会"や"お気持ち表明"と揶揄されることもあるが、新規プレイヤーが多い本作においてそのような扱いをするのは無粋だろう。
さて、最近、否、発売後から常に話題になっていることがある。それは「MRとの向き合い方」。それまで勝率50%を少し下回っても増加傾向にあったLPというシステムをメインに据えてきたプレイヤーは、マスターになると新たにMRという数値と向き合っていくことになる。
このMRは勝敗時の増減幅が同じで、勝てば+8、負ければ-8が基本で、勝率が50%以上なければ上がらないというシビアなものになっている。そのため、それまで少しずつ増えていたLPに喜びを感じていたプレイヤーは、減ってしまうMRに大きなストレスを感じ、中にはMRは良くない、楽しくない、という人までいるのだ。
MRが実装された当初はプロゲーマーを含め称賛するツイートもたくさん見かけたが、より実力の近い相手と対戦できるのだからそりゃ嬉しいだろう。当たり前だ。しかし、多少の違いはあれど『スト4』時代のPPも似たようなシステムだったので、一度取り上げられたものを渡されてありがたがっているようにも見えて滑稽だったものだ。
話は逸れたが、プレイヤーの中には半ば悪とまで捉えられているMRというシステム、それとの向き合い方について話をしたい。
SNSにあふれる嘘「MRは気にしないで」
プロゲーマーや上級者がよく言うのが「MRは気にしないで」という言葉。しかし、実際のところそんなことが可能なのだろうか。
始めた頃はマスター到達という目標があり、少しずつでもLPが増えていった。マスターになったあかつきにはSNSで「マスターになった!ここまで辛かったけど頑張って良かった!」と投稿し、たくさんのお祝いの言葉をもらえた。そんな環境に慣れた人が、自分の実力を数値化され、1500という基準値から下がっていく可能性も多分にある対戦を、気にせず楽しむことが果たしてできるだろうか。
ゲームには何かとご褒美が付き物だ。苦労すれば必ず対価がある。敵をたくさん倒せばレベルが上がって、貯まったお金で良い装備品を買える。強くなったら今まで苦労していた敵を簡単に倒すことができて爽快感を得られる。それを繰り返していたらストーリーが進行し、真相にどんどん迫っていく。形式や見せ方が異なっても、多くのゲームはそういう風に作られている。
『スト6』はどうか。敵を選べず、敵は自分より弱いとは限らない。敵に負けるかもしれないし、対戦においてはストーリーもない。ご褒美がもらえるかも分からない。頑張ってようやく得られるのはMRという数字のみ。
『スト6』でマスター到達を目標にやってきた人が、得られるかどうかも分からないご褒美を目当てに対戦を続けるというのはかなり酷なことではないだろうか。中には「数字や他人からの評価は気にしないで」という人もいるが、SNS全盛のご時世にそれはなかなか難しい。
SNSに「今日たくさん負けてMR100も下がっちゃった」と書く人がいるが、あれは「今ゲーム内プロフィールを見ると低い数値になっていますが、本来のMRは現在値よりも100高いのです」という保険だ。あるいは「そういう日もありますよ。今度対戦しましょう」と慰めてもらうためのものだ。純粋に「自分の体験をシェアして自他ともに楽しい気分になりたい」という人なんかいない。そこには何からしら自己顕示欲やそれに近い心理的要因があるはずだ。そういった投稿は「ああ、君は本当は強いんだね、うんうん。でも強いと思われたいよね、うんうん」と保護者のような目線で見ると楽しめるのでオススメだ。
実力者は高みの見物
SNSへの文句を言ったらキリがないので話を戻すが、LPやマスター到達を目標にしてきた(システム的にそうさせられてきた)プレイヤーがMRを気にしないでプレイするなんて無理なのだ。「MRを気にしないで」というのは綺麗事で、そんなことを言う人は高見の見物をしている人か、仲の良いプレイヤーがいる人、つまりは実力か周りの人に恵まれている人だ。
プロゲーマーやレジェンドに到達しているような人は、あらゆるプレイヤーから認められる実力者だからそんな余裕があることが言える。彼らからしたらMR1300も1600も大して変わらないし、できていないことがたくさんあるのだから伸びしろもまだまだあって楽しいじゃあないか、そんなものだろう。彼らの言葉に嘘はないが、それは「ケーキを食べれば良いじゃない」みたいなものだ。あるいは一定のレベルまで辿り着いた賢者だからこそ言える言葉だ。彼らはマリー・アントワネットか仏陀なのだ。
プロゲーマーはレジェンド到達やMR2400を自慢できないし、注目される分一般人より称賛される機会も多いから、MRなんてあまり気にしないのかもしれない。大会で優勝して賞金や人気を得られれば、MRなんてどうでも良いのかもしれない。しかし、一般人は人から褒められる機会はそんな多くないし、MR1500、1600、1700と節目ごとに人に自慢をしたくなる。大会で賞金なんてもらえやしない。MR、気にして当たり前ではないか。
というか、プロゲーマーもMR2400チャレンジだとか、ランキング順位とかをテーマに配信しているので、少なからず彼らもMRは気にしている(単に配信用のネタかもしれないが)。流石に「MRは気にしないで」は、色々な意味で無理があるだろう。
「負けても成長を楽しもう」は恵まれた人だから言える
「負けても成長したところに目を向けて楽しもう。そうすればMRが下がっても気にならない」という人もいるが、普通は勝ったら楽しくて、負けたらつまらないものだ。特にランクマッチのような短期決戦では、対戦相手が同じように技を振ってくれる訳でもないし、同じキャラクターと連戦もできないし、反省する時間も少ないから、自分の成長を感じづらい。成長を分かりやすく感じられるのは、勝ってMRが増えたときだ。
そんな明確な成長の指標があるのに、1戦ごとに反省して「あの技に苦戦したことが分かったから、負けたけど得るものがあった!」、「対策が上手くいった!嬉しい!」なんて思える人はよっぽどの真面目さんだろう。普通の人は趣味にそんな真面目になれない。あるいは、マスター到達したばかりの人は、『スト6』が真面目に打ち込むほど自分にとって価値があるかを見定め切れない。
そもそもランクマッチは同じ実力の人と常にマッチングするようになっているので「自分はMR1600で、1500の人に勝てるようになったから上手くなったなあ」というような対比での実感は絶対に得られない。MR以外の方法で成長を感じるには、メモを取って練習や調べものをしたり、リプレイを見たりして、真面目に取り組む必要がある。あるいは成長を言語化してくれる仲間、連戦して成長を実感させてくれる仲間が必要だ。
だから、気兼ねなく対戦に誘えるような仲間がいる人は「MRは気にせず、成長を楽しもう」と言えてしまうのだ。
では、どうMRと向き合ったら良いのか
MRと上手く向き合うには、今まで私がつらつらと書いてきた文句と逆のことをすれば良い。
まず、MRは気にして良い。だって、気にしないなんて無理だから。気にして、ずーっと気にして、それでストレスを感じながらでも『スト6』を続けてしまう人は、単に負けず嫌いなのだ。
そういう人はそのうち真面目に取り組んで上達するか、漫然とプレイを重ねているうちにゆっくりと成長していく。そして、MRが上がったあかつきには、SNSで自慢して気持ち良くなれば良いのだ。自己顕示欲、堂々と満たせ。
次に、気兼ねなく対戦に誘える仲間を作る。これは他人を巻き込むので少しハードルが高いが、特定の人との連戦は成長を実感しやすい。また、『スト6』の楽しみをポイントの増加だけではなく、人との交流にも置くことでストレス以上の楽しみを感じられるようになる。
かく言う私はほぼソロプレイで、ときどき旧友と対戦することがある程度だが、それでも「またあの人たちと格ゲーの話がしたい」という思いがあり、それは少なからずモチベーション維持に役立っている。
加えて、バトルハブで格下のプレイヤーと対戦することもオススメだ。ポイントを賭けないご褒美もないモードだが、「自分はMR1600で、1500の人に勝てるようになったから上手くなったなあ」を気軽に実感できるのはバトルハブだ。
初心者狩りのようで悪く思われるかもしれないが、バトルハブでは1戦でやめることもできるのだから全然悪いことではない。連敗しているのにストレスを抱えているのであれば、それは相手の責任だ(情熱のあるプレイヤーなら「格上相手と連戦できるなんてむしろ嬉しいことだ」とか言うかもしれない)。極端な話、格下相手にばかり挑んで気持ち良くなるプレイヤーがいたって問題ない(対戦相手が抜けたのに執拗に乱入するなどの迷惑行為は例外だが)。乱入してみたら格下だったなんてことは往々にしてあり得ることだし、わざわざ「ストレス解消のために格下と対戦します!」なんてみっともなく公言する必要もない。しれっとやってしまえ。対戦履歴を見られても確証にはいたらないし、他人様の対戦履歴を見て嫌疑を掛けるような奴はケツの穴が小さいと一蹴してしまえ。
実際には、多くのプレイヤーは負けず嫌いで、格下相手に勝って気持ち良いのは長続きしないので、狙っての格下との対戦が問題視されるようなこともないだろう。たまにやれば良いのだ。
最後に
この記事はあえて強めの言葉を使って書いてみた。それでどれくらい閲覧数が稼げるのか気になったからだ。
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