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365日のてのひら話

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200文字を基本に500文字までの物語。
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2024年11月の記事一覧

2024/11/08 「刃物の日」

サクサクとよく切れる包丁を手に同居人はご機嫌だった。 「切るの好きだね」 「そっちは好きじ…

名野凪咲
3時間前

2024/11/16 死霊風(しりょうふう)

ふわりと嫌な湿気とともに風が体にまとわりつく。一定に吹いている風というよりは漂っている空…

名野凪咲
13時間前

2024/11/07 「ソースの日」

「こっちのソースって甘いよね」 ソースが甘い? そう思って振り返ると同居人の手にはとんか…

名野凪咲
1日前

2024/11/15 花暦(はなごよみ)

「来年の暦?」 同居人が花だらけの暦を見て聞いてきた。 「少し違う。今年の。うちで咲いた…

名野凪咲
1日前
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2024/11/06 「アパート記念日」

「これってアパートメント?」 同居人がテレビの中の江戸時代の長屋を指さしてそう聞いた。意…

名野凪咲
2日前

2024/11/14 厚物咲(あつものざき)

まあるい菊が綺麗に咲き誇っている。 「あれは、ボールをつけてるの?」 同居人がそれを指さ…

名野凪咲
2日前

2024/11/05 「縁結びの日」

コロコロと転がり落ちてきた五円玉を拾う。 「何してるの?」 同居人の手元にはたくさんの五円玉。そしてなぜか綺麗に五円玉の面が見えるように編んでいる。 「ご縁には五円玉のネックレスがいいって聞いたから」 何かが間違っている。悪友の一人がおかしなことを吹き込んだらしい。 「そういう迷信はさすがに無いかな。お賽銭……えっと。お布施、寄付に五円玉はいいかもしれないけど」 「寄付なのに5円だけ?それとも、五円玉で寄付なの?」 同居人が手を止めて、顔を上げた。 「お賽銭……。神

2024/11/13 吾亦紅(われもこう)

移りゆく日々の中で、風が冷たくなる。 「寒いね」 同居人が風に舞う葉っぱを見ながら言った…

名野凪咲
3日前
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2024/11/04 「いいよの日」

「いいよ。それ、やってみよう」 それは小さな提案だった。ただ、『道具のネームプレートを付…

名野凪咲
4日前

2024/11/12 神送風(かみおくり)

この時期はどの土地でも神が送り出されるという。 「ねぇ。聞きたいんだけどさ。イズモって場…

名野凪咲
4日前

2024/11/03 「文具の日」

ガシガシと消したつもりの消しゴムの痕は真っ黒になっていた。 「こういう消しゴムは使わない…

名野凪咲
4日前

2024/11/11 水粒(みつぼ)

水粒がたたんと跳ねた。 ビニール傘は面白いほど水の行方が見える。それを眺めてると、人にぶ…

名野凪咲
5日前

2024/11/02 「書道の日」

かすれた文字が紙に浮かぶ。かすれてるだけではない。歪んでいる。 「はぁ」 盛大なため息と…

名野凪咲
6日前
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2024/11/10 菊の雫(きくのしずく)

その雫は長寿を与えるという。 「迷信よ。菊の雫なんて」 そんな声にその古木の様な皮膚が動いたような気がした。 そのミイラがなぜここに祭られているのか誰も知らない。けれど、菊の雫を与えると未来を語るという。一説にはそれは過去だという人もいるけれど、そのミイラが語る『未来』は一年以内に起こる災厄だった。 何もない年は何も語らない。 それが崩れたのは三年前。何も語らず、人々がホッとしたその年に地震が起こり多くの人が死んだ。二年前は大火が起き、今年もミイラは何も語らなかった。