2024/11/06 「アパート記念日」
「これってアパートメント?」
同居人がテレビの中の江戸時代の長屋を指さしてそう聞いた。意味を私の中で再翻訳しようかとおもったけれど、諦めて調べる。
『アパートメント=集合住宅』
「そうだね。アパートメント」
「今もあるの?」
「この形のはない。建築基準法に違反するから」
板張りの家なんて今の時代には存在しないけれど、時々『時代劇にあるもの』が今も普通にあるのかと聞いてくるので、聞かれる前にくぎを刺しておく。
「それはそうだよね。燃えちゃうもの……あ」
同居人がしまったという顔をした。戦時中の話でも思い出したのだろう。
「間違ってないよ。燃えるからないの。そんなに気にしなくて大丈夫」
「腐ったりはしなかったの?どう加工してるの?」
私の反応を見てから、同居人は話題を『家』へと変えたようだ。
「知らない。古い大きな家なら、燻すことで耐久性を高めたとか見た気がするけど……囲炉裏が長屋にあったのかどうかもわからないし、かまども見たことない」
「古い家にはないの?」
「だから、古い家の大半は燃えたんだって」
「あ……」
話が元に戻ってしまった。
「散歩に行こう。現代のアパートなら、外から見ることができるよ」
「この辺り、一軒家だけだと思ってたけど?」
「うん。でも一つだけあるから、散歩コースを少し伸ばせば見える」
同居人が首を傾げた。世襲制の土地持ちが多いこの場所にアパートの必要性はない。私も、なぜあのアパートがあるのかはわからない。
「珍しいね」
「うん。珍しいけど、需要があったのかもね」
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