2024/11/16 死霊風(しりょうふう)

ふわりと嫌な湿気とともに風が体にまとわりつく。一定に吹いている風というよりは漂っている空気の流れのようだった。

「おかえり……。お客さん?」
リビングに入るなり、同居人が不穏なことを言う。

「一人だけど……何が見えたの?」
私は後ろを振り返る。廊下があるだけで、人はいない。
「もうひとつ気配があるような気がしたんだけど……見えたっていうか……」
同居人が少し考えこんだ。
「足音がもう一つしたような感じ?」
「怖いよ。私、一人なのに」
そう言いながら、椅子に脱いだ上着をかけるとするりと何かが手に触れたような気がした。思わず上着を落としてしまう。

「やっぱり、何かいる?」
同居人が不思議そうに聞いてくる。
「風……かな」

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