マガジンのカバー画像

365日のてのひら話

617
200文字を基本に500文字までの物語。
運営しているクリエイター

2024年9月の記事一覧

2024/09/30 寒蝉(かんせん)

涼しくなるとセミたちの声が変わる。 ツクツクボーシ カナカナカナ もの悲しい音が夕暮れに…

名野凪咲
1か月前

2024/09/21 「靴市の日」

「ああ。これ、靴かぁ」 客の声が店内に響き渡る。靴屋で靴以外のなにがあるんだと思いながら…

名野凪咲
1か月前

2024/09/29 曼殊沙華(まんじゅしゃげ)

赤い花がぽっと浮き上がって見える。辺りはすっかり茶色の枯草の中、そこだけが赤く燃えている…

名野凪咲
1か月前
2

2024/09/20 「空の日」

空には羊が浮かんでいる。これを羊雲というのかなと思っていたら、次は魚が浮かんでいた。イワ…

名野凪咲
1か月前

2024/09/28 月鈴子(げつれいし)

綺麗な『リーン リーン』という音が部屋の中で響き渡る。これが外ならば、微笑ましい音なのだ…

名野凪咲
1か月前

2024/09/19 「遺品整理の日」

「手伝ってほしい」 神妙な顔で同居人がそういってきたのは、国際電話がかかってきた翌日だっ…

名野凪咲
1か月前
1

2024/09/27 無月(むげつ)

月がない夜は足元まで真っ暗だ。 そこにガサゴソと嫌な感じの音がなる。 クマ……という単語が浮かび、離れた場所の街灯の灯りを頼りに目を凝らすが、見えるものは木々の影ぐらいでそれ以上の情報を手に入れることはできない。道路と田んぼの境すら見分けがつかない闇の中で『クマ』なんて黒いものが見えるわけがない。白線すら『何とか見える』程度だ。 私は諦めて、当たりの草を蹴り上げて音を出してこちらの存在を知らせる。そこに遠くから車のヘッドライトの光が届く。それだけで、少しホッとする。クマの

2024/09/18 「かいわれ大根の日」

「からい?? 葉っぱなのに」 同居人が一口食べて吐き出してしまったのは、かいわれ大根。私…

名野凪咲
1か月前

2024/09/26 朝顔の實(あさがおのみ)

朝顔の種がパラパラと落ちた。もう、種は茶色でカリカリに乾いている。 その中に、後から伸び…

名野凪咲
1か月前

2024/09/17 「キュートの日」

「キュート? 私が?」 思わず聞き返した。そんな言葉、今まで聞いたことがない。同居人はニ…

名野凪咲
1か月前

2024/09/25 秋旱(あきひでり)

「暑い……」 一度涼しくなった後の暑さは、身体にじわじわとくる。油断してしまった気力と体…

名野凪咲
1か月前

2024/09/16 「マッチの日」

「マッチはいりませんか?」 籠に入ったマッチは一つも売れていない。手元にあるのはマッチの…

名野凪咲
1か月前

2024/09/24 金化粧(きんげしょう)

「それ、別の花なの?」 赤と白の花を指さして、同居人が聞いた。でも茎を辿れば同じで、形も…

名野凪咲
1か月前

2024/09/15 「ひじきの日」

「黒い……根っこ? 毛?」 同居人が不思議そうに食卓の小皿を眺める。そういうえば、その食材は初めてだしたかもしれない。私もあまり好みではなくて、貰ったものだから食べる気になっただけだった。 「ひじきっていうの。海藻の一種」 「ヒ素が入ってるアレ?」 同居人が不審そうに小皿を眺めて、物騒なことを言う。そんなもの入っていただろうかと調べると、確かにそんな情報が出てきた。でも、日常で食べる分には影響がないともなっていた。むしろ、ひじきを食べない海外で『注意勧告』されている。