2024/09/27 無月(むげつ)
月がない夜は足元まで真っ暗だ。
そこにガサゴソと嫌な感じの音がなる。
クマ……という単語が浮かび、離れた場所の街灯の灯りを頼りに目を凝らすが、見えるものは木々の影ぐらいでそれ以上の情報を手に入れることはできない。道路と田んぼの境すら見分けがつかない闇の中で『クマ』なんて黒いものが見えるわけがない。白線すら『何とか見える』程度だ。
私は諦めて、当たりの草を蹴り上げて音を出してこちらの存在を知らせる。そこに遠くから車のヘッドライトの光が届く。それだけで、少しホッとする。クマの