シェア
店を引き継いでから初めてのことだった。 暑さはつづくものの蝉の声が増してきた八月下旬か…
もとは客として顔を出していた店を引き継ぐことになって十余年、いまの客の多くはわたしが二…
あまり活動していないが決まりなのですみませんと、近所の店が町会費の集金にやってきた。つ…
暖冬と思いきや粉雪が舞う夕暮れ、客が帰ったあとのテーブルを拭いていると、人の気配があっ…
正月は三が日を店休とした。 元日は近所の神社に詣でて、人の減った商店街や川沿いを散歩…
ひとりでやっている店なので、月に何度かでも来てくれる客は、だいたい記憶している。 1…
店の一部でペンキを塗り替えると話すと、もぐもぐさんはしばらく店にやってこなかった。そろそろ姿を見せるかという2月中旬、履き物屋の隠居が店で桜餅をほおばりながら「最近アルバイトを雇っているのか」と尋ねてきた。 もぐもぐさんのことだろうか。厨房を見せてくれと言われた日からすっかりうちとけて一緒に餡を作ったことはあるが、働いているわけではない——そう言おうとしたが、話は違った。若い男が店の片付けをしているのが見えたという。 誰でしょうねと答えておいたが、内心は「またか」で