小説「きみを わする」幕間モノローグ
境界線を浮かばせて、いつ来た水際に男はまた身を置いた。
以前男はここで、死を思った。自らが死ぬことで世界は何が変わるだろうかと。その事を想像することでしか、自分の存在意義を確認することができなかった。そして今、あのチケットに導かれるように、あの例の女の前で幽霊になってみせる。時々、自分が本当に幽霊なのではないかと思い込んでしまいぎょっとする。世界にはノイズがあって、その歪みの中に生きる、そんな存在なのではないかと。少し歩いてみる。地の感覚。足の裏に伝わる。
今日もこの