【連載小説】地獄の桜 第十八話
「金を返して下さい」と僕は静かに言った。
「金? 何のことだ」
「全部僕にツケましたよね」
「あれ、昨日は酔っ払っていて何をしたか良く覚えてねえんだよなぁ……そういえばあんたって誰だっけ、そもそも人違いな気もするけど……まあいいや、じゃあまた」
急によそよそしくなった中年男はどこかへ走り去ってしまった。もはや追いかけるのも馬鹿馬鹿しかったので、そのままにしておいた。
僕は見捨てられた子犬のような気持ちでバス停まで歩いた。そのためか散歩に連れられていた大型犬が通りすがりに僕