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歌舞伎座

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歌舞伎を見に行った感想です。
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明治座十一月『花形歌舞伎』*抜いた衣紋が気になる一階席

明治座十一月『花形歌舞伎』*抜いた衣紋が気になる一階席

着付け教室でお世話になっている円居さんのイベント「きもので観劇」に参加し、明治座の『花形歌舞伎』夜の部を観劇。明治座はほぼほぼ、初ですが、事前にお話会「きもので観劇を楽しむコツ!」をやってくれるので、安心です! (後ろの席に座っている人には後頭部が丸見えなので、着付け教室の先生をガッカリされないよう、座る席は慎重に選びましょう) 

私の初モノは他にもありまして、直近で、同じ演目を観るのも、初なん

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錦秋十月大歌舞伎『婦系図』『源氏物語』*歌舞伎座は小紋と紬の花盛り。色無地も飾り紋で

錦秋十月大歌舞伎『婦系図』『源氏物語』*歌舞伎座は小紋と紬の花盛り。色無地も飾り紋で

夜の部は悲恋の二本立て。立役は大変、不利である。どんなに美しくとも、観客に恨まれかねない。

一幕目は泉鏡花作の新派『婦系図』。イヤフォンガイドの解説によると、泉鏡花の実体験を原点に書かれた話だそうで、小説はドロドロの展開になるのだけれど、舞台化するにあたって『湯島境内』の場に結末を置き換えた。

ストーリーの変更を泉鏡花が快諾した理由は明治の、「身分」や醜聞に縛られた結婚の馬鹿馬鹿しさというテー

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吉田修一・著『国宝』を読んで歌舞伎役者の夢を共に追う

吉田修一・著『国宝』を読んで歌舞伎役者の夢を共に追う

七代目菊五郎の『100年インタビュー』では歌舞伎に何が大事かを知りえたが、映画版の主要キャストが情報公開された吉田修一の新聞小説『国宝』には歌舞伎役者の生涯が描かれていて興味深かった。

小説では歌舞伎囃子の雪をイメージさせる「語り調の文体」でドロドロを鎮めているが、朋友のライバル(横浜流星)は才も熱意もありながら(吉田修一の作品らしく)幸せにはなれず、小説の結末に至っては、歌舞伎舞踊を極めようと

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七代目・尾上菊五郎 100年インタビュー

七代目・尾上菊五郎 100年インタビュー

一昨日、歌舞伎座の舞台で82歳の誕生日を祝った七代目菊五郎。七代目菊五郎の『100年インタビュー』を振り返って視聴した。

長いインタビューは閉館した国立劇場の舞台を借りて行われた。(※2024年3月12日放送)

七代目菊五郎の腰が低いようでいて、斜に構えたお人柄がわかると共に、頭の中が整理されて何が歌舞伎には大切かを実感できた。歌舞伎の芝居には、役に定められた台詞と動作があり、何度も演じるうち

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秀山祭九月大歌舞伎『妹背山婦女庭訓』『勧進帳』*歌舞伎座の秋単衣は九寸帯がマストアイテム

秀山祭九月大歌舞伎『妹背山婦女庭訓』『勧進帳』*歌舞伎座の秋単衣は九寸帯がマストアイテム

一幕目『妹背山』の『花渡し』の場、上手の襖から現れた玉三郎丈(定高)動く人形のように隙がなく、松緑丈(大判事)はいつものお茶目さを封印。そして、定高と大判事、二組の親子の不遇を息を詰めて見届けた客席は二幕目の『勧進帳』で大はしゃぎ。亡くなった吉右衛門丈が「孫の丑之助を義経に、また、弁慶をやる」という「八十路の夢」を息子・染五郎丈と共に果たす幸四郎丈の弁慶を応援したいのだ。拍手に応えて幸四郎丈が熱演

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八月納涼歌舞伎『狐花』の小説版を楽しんでみた

八月納涼歌舞伎『狐花』の小説版を楽しんでみた

NHKの番組『百鬼夜行』に出ている京極夏彦さんの姿しか知らなかったので、小説を拝読。なかなか、おもしろかった。

驚いたことに小説なのに地の文がちゃんとあるのは数箇所だけで、状況説明も誰かの語りとして会話の中で進んでいく。独特だ。「 」の中の言い回しや言葉のテンポが美しい。中でも、舞台では深掘りされていない近江屋と辰巳屋の娘ふたりの開き直り→そして、破滅のくだりが特におもしろかった。一方、ラストシ

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八月納涼歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行』*浴衣は綿絽や綿紅梅をカラフルに

八月納涼歌舞伎『狐花 葉不見冥府路行』*浴衣は綿絽や綿紅梅をカラフルに

災害続きでコワイです。我が身と皆様の御無事を祈っております。さて、歌舞伎座前は流水が涼やかです。

また、風鈴の音は激しく!

京極夏彦さんが「歌舞伎の台本を書いた」と話題の『狐花』を見てきました。曼珠沙華の多面的な解釈には言葉に対する執着を感じ、結末にはやられたと唸る。

作家は刃物でなく、言葉で相手を突くのです!

幸四郎丈へのインタビューにある通り「京極歌舞伎」は会話劇なんです。ほぼ、現代語

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七月大歌舞伎『裏表太閤記』*梅雨明け前の夏着物は、化繊に自然布の帯が鉄板か?

七月大歌舞伎『裏表太閤記』*梅雨明け前の夏着物は、化繊に自然布の帯が鉄板か?

「和服姿でエライ」と言いたくなるような荒れたお天気の日。澤瀉屋の『裏表太閤記』を松本孝四郎が再演するということだけを知り、予習もせずに観に行った。描くのは太閤秀吉の出世の裏で起きたドラマだ。「想定外」の連続に驚き、クチをあけて楽しんだ。歌舞伎座ではタブレット式字幕も扱っていて、歌舞伎なのに史実の役名なのも、インバウンド対応なのだろうか。ちなみに、新春にやる忠臣蔵は役名変わらずなのね。

序幕の一場

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六月大歌舞伎『山姥』 初の全幕観賞と初の推しグッズ

六月大歌舞伎『山姥』 初の全幕観賞と初の推しグッズ

今月の歌舞伎座も残すところ、あと四日。先週、縁あって、夜の部を観劇することができました。五月は昼の部&幕見席でしたが、六月は昼の部&夜の部。お初なんです。

特に役柄の違いが印象的だったのは米吉丈で、昼は貫禄だったのに、夜の部は十五、六の初々しい娘役。一幕目『南総里見八犬伝』の娘浜路です。「あれ~」と帯を解かれる場面があって『八犬伝』はなかなかのエンタメ。山中で出会った、後の八犬士の面々が闇の中で

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六月大歌舞伎『妹背山婦女庭訓』*舞台の熱気で雨は滝のよう。人生初の雨コート

六月大歌舞伎『妹背山婦女庭訓』*舞台の熱気で雨は滝のよう。人生初の雨コート

先週の土曜日に初日を迎えた歌舞伎座。昼の部、中村時蔵丈と梅枝丈の劇中口上が行われる襲名披露狂言『妹背山』を3階席で、観て参りました。歌舞伎座の入口では、「萬屋」の屋号を白く染め抜いた半纏の男性陣がお出迎え。真っ赤な祝幕は千住明の滝の絵。幕が開き切る直前までは片方の腹に腕に貯めておくらしく、少しずつ、幕の開いていく側に美しいドレープの重なりが出来ていました。乱れ飛ぶ「萬屋」「播磨屋」の声。客席には紋

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團菊祭五月大歌舞伎『伽羅先代萩』*赤い衣裳といえば政岡

團菊祭五月大歌舞伎『伽羅先代萩』*赤い衣裳といえば政岡

評判を聞きつけ、幕見席で夜の部を観劇。上演は今週いっぱい。幕が開いた瞬間、この演目の人気がわかるようでした。大向こうも立派で、憎々しい悪役・八汐は代役の中村芝のぶ丈でした。芝のぶ丈は国立劇場の養成所から成駒屋に入門し、昨年の『マハーバータラ戦記』に続く、抜擢。お顔立ちなのか、お若いからなのか、目元がギラギラしていて、スピード感があり。傍らで、米吉丈も堂々と。

さて、その感想は? うぁ〜ん、政岡、

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團菊祭五月大歌舞伎『鴛鴦』『毛抜』『幡随長兵衛』*今月は趣向が盛り沢山!

團菊祭五月大歌舞伎『鴛鴦』『毛抜』『幡随長兵衛』*今月は趣向が盛り沢山!

一幕目は51分、二場の舞踊劇『鴛鴦襖恋睦(おしのふすまこいのむつごと)』。ラストで鴛鴦の羽を描いた袖をパタパタと。綺麗でした。

さて、そのストーリーは?

河津三郎は曽我兄弟の父。後に、暗殺される人物だけに、なんやかやで敵が多い。赤っつらの股野五郎もそのひとり。河津三郎を妬む股野は、遊女・喜瀬川を彼から奪おうとして彼に相撲を仕掛け、負けてしまったのである。泉のほとり、河津に生き血を飲ませて狂わせ

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三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』*メンズ着物をウォッチング

三月大歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』*メンズ着物をウォッチング

狂気の美しさを堪能した幸四郎丈、振り返り。

近頃「無我」について、良く考える。例えば、マラソンのゴール目前にトップ争いをする選手たちは無我だ。狂気というのは、やがて「無我」に繋がるのかもしれない。『伊勢音頭恋寝刃』の松本幸四郎丈はスッキリと美しく、心の底にあるモノを見たようで、大満足だった。

通し狂言なので、スピンオフ・ドラマ風に場ごとの主役が登場し、金儲けを企む小悪党を退治して活躍する。「伊

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スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』*千秋楽。大人の礼装をウォッチング

スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』*千秋楽。大人の礼装をウォッチング

あれもこれも、初めてづくしの新橋演舞場。千秋楽なので、客席へ挨拶をして回る礼装姿の女性を幾人も見かけた。この日は札止めだったそうだ。1回目のカーテンコールは花道から、團子丈が登場。2回目は米吉丈とおふたり。米吉丈の手を取り、團子丈からの「お疲れ様でした」の仕草があって「ああ! 大阪では壱太郎丈とやるんだもんね」と客席の観客は思ったに違いない。スタンディングオベーションも初めて、見たけど、かかげた掌

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