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きもの本棚

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着物好きさん、大集合! 着物エッセイや着付けとコーデのハウトゥ本
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きもの本棚㉖『還暦着物日記』*群ようこさんの着物歴40年の悩み

きもの本棚㉖『還暦着物日記』*群ようこさんの着物歴40年の悩み

着物のドレスコードが変わってしまった長唄演奏会の観客席。カムバック、国立劇場! にわかに紬が欲しくなった私は店頭で紅花染めの紬を「あてて」みた。シャリ感があって、今から誂えるにはタイミングを逸している。着物は季節のお支度が大切だ。

今回、手にした『還暦着物日記』の著者は作家の群ようこさん。映像化された『かもめ食堂』『パンと猫とスープ日和』はもはや、草分け的存在。簡潔で笑える文章にハッとする。

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きもの本棚㉕すなおさんの『楽しくなる着付け 100のコツ』*お太鼓は手直してナンボ

きもの本棚㉕すなおさんの『楽しくなる着付け 100のコツ』*お太鼓は手直してナンボ

コロナ禍にチャンネル数がグッと増えたが十年前に着物YouTuberといえば、木綿着物のトントンさんとはんなり系着付け講師•すなおさんだった。どちらも、進化を続けている。今回はすなおさんの本を片手に八寸帯の正方形のお太鼓にチャレンジしてみた。

さて。猛暑が続く今日のコーデは縞の縮みに合わせる帯揚げを駅ビルで買ったワインレッドに変えた定番の秋の色。

襟、よーし! 脇、よーし!

続いて、おはしょり

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きもの本棚㉔『六十代は、きものに誘われて』*木綿と紬、着るか着ないか問題

きもの本棚㉔『六十代は、きものに誘われて』*木綿と紬、着るか着ないか問題

『六十代は、着物に誘われて』は津田塾大の教壇に着物で立ち続けた三砂ちづる先生の新刊だ。時代が時代だけに、林真理子さんのような大人買いはない。「毎日、着物」「雪の日も着物」「飛行機での出張も着物」という執着に三砂さんの着物熱の症状は出たという。前著『きものは、からだにとてもいい』は新書っぽい傾向があったが、『六十代は、…』は着物初心者への気遣い、優れた言葉の選び方が見られ、読後感がよろしい。「着物は

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きもの本棚㉓『着物の悦び』『着物をめぐる物語』*着物は何枚必要か? 

きもの本棚㉓『着物の悦び』『着物をめぐる物語』*着物は何枚必要か? 

ある帯屋さん曰く、歌舞伎座に来ているお客さんは着物に対して真剣なのだという。この夏の歌舞伎座では、雨対策の洗える着物や綿紅梅、原色緑の小紋など、話題のお着物をウォッチングすることができた。これら全部を揃えるとしたら、着物は何枚必要だろう。「一脇」さんの木草履のお客さんはどの方も三十年以上は着物を楽しんでいる様子だった。おひとりは和菓子屋の娘だったけれど、他の方も特種な家庭環境に生まれついているのだ

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きもの本棚㉒『きもの語辞典』*イラストレーター岡田知子さんの着物愛にほっこり

きもの本棚㉒『きもの語辞典』*イラストレーター岡田知子さんの着物愛にほっこり

noteの記事で説明できるように紋様の名前を覚えたいと考えて、Amazonでお取り寄せしたイラストレーターの岡田知子さんの本。岡田知子さんは『七緒』他、着物の専門誌でお馴染みのお方。ひとつひとつの用語にイラスト(一部、物撮り写真)が添えられていて、説明文にある、着物歴30年の著者が書き添えたちょっとした工夫やアドバイスを「そうだったんだ」と気付化される事もあれば、「ほら、やっぱり!」と公認された気

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きもの本棚㉑『大人の着物コーディネートブック』*帯締めのポイントカラーはどうやって選ぶのか?

きもの本棚㉑『大人の着物コーディネートブック』*帯締めのポイントカラーはどうやって選ぶのか?

主婦と生活社のムック本。お宅拝見の家の代わりに自前の着物を見せて貰ったよという内容。ギャラリー店主が多数登場し、箪笥の中の『作品』と呼びたくなるような帯を紹介する。

江戸小紋を愛用するギャラリーオーナーさんは「無地っぽい江戸小紋には、大柄やカラフルな大胆な柄の帯」を合わせて「大きめの柄には、正統派の名古屋帯」で柄を抑えている。こうした法則は知っているはずなのに、いざ、売り場で選ぶとトンチンカン。

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きもの本棚⑳ 『青嵐の庭に座る』『老いてお茶を習う』*お茶の世界にびっくり

きもの本棚⑳ 『青嵐の庭に座る』『老いてお茶を習う』*お茶の世界にびっくり

茶道の本!

リサーチのキッカケは愛読書のコミック『銀太郎さんお頼み申す』。主人公のさとりちゃんが「大寄せの茶会」に初参加する話があったのだ。着物が着られて、お抹茶が美味しくて、風情のある場を見学できる茶会って、楽しいの? 私でも、自宅で珈琲を淹れるかわりに、お茶を立てられるの? か? そんな折に時間潰しに入った駅の書店で、興味深い本と出会った。

『青嵐の庭に座る』は森下典子さんの書籍を原作にし

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きもの本棚⑲『浅草でそろう江戸着物』で夏仕度。浅草でバレッタを手に入れた話

きもの本棚⑲『浅草でそろう江戸着物』で夏仕度。浅草でバレッタを手に入れた話

江戸時代、芝居小屋の移転でスタートした「芸能の街・浅草」。今も和装とは縁が深い。そこで、伝法院通りにある履物屋『辻屋本店』の四代目女将が2018年に出した『浅草でそろう江戸着物』を頼りに浅草の和装品の店を周ってみた。

仲見世は平日でも、かなりの人出。大半が外国人だ。アーケードにあるレンタル着物の店は、行く度に数が増えている。そんな中でインバウンドの大波をどこ吹く風とかわし、浅草の老舗は力強く店の

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きもの本棚⑱『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』を参考に、単衣と夏物の準備をする

きもの本棚⑱『お茶の先生に教わる きちんときもの手ほどき帖』を参考に、単衣と夏物の準備をする

令和五年の猛暑を受けて「単衣着物の先取り」がトレンドである。気に入った着尺を選んで「袷にしますか、単衣にしますか?」と選択するケースとはまた、違った感覚の「単衣向きの薄い布」だ。

お馴染みの「楊柳」や「本塩沢」の他にも、シボを目立たせない、透け過ぎない織りの工夫が様々、生まれている。私が「円居」で誂えたのは「江紋屋」のお品物で、シボの入った縮緬。夏用だけど、四ヶ月着られるタイプ。地の色は紫がかっ

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きもの本棚⑰『きものsalon』『女優きもの』は実用的なコーデの教科書だった!

きもの本棚⑰『きものsalon』『女優きもの』は実用的なコーデの教科書だった!

訪問着に縁の薄い私が『きものsalon』に興味を抱いた理由は、昨年の「キモノサローネ」のトークセッションの動画を見たからだ。

かの『家庭画報』の別冊として出されている『きものsalon』は、訪問着の絢爛豪華な写真が持ち味と受け止めがちだが、読者の人気を得ているのは帯締めコーデだという。そんな人気のコーディネートを手掛けているのが「強者」編集者の相澤慶子さんだ。本誌から単行本化された『女優きもの 

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きもの本棚⑯青木奈緒さんの本で、着物の過去と未来を知る

きもの本棚⑯青木奈緒さんの本で、着物の過去と未来を知る

青木奈緒さんは映画で話題の『木』を書かれた随筆家・幸田文さんのお孫さんだ。著書『きものだより 他が袖、わが袖』とは二子玉川の蔦屋書店で出会った。茶道雑誌『なごみ』での十二ヶ月に渡る連載テーマは、幸田文さんが奈緒さんのために誂えた「濡れ描き」の手描き友禅のイマから、取材がスタートする。訪問先には、茶席では着ない「伊勢木綿」や「デジタル捺染」が含まれていた。多くは「〇〇〇を復刻する」などして、市場にの

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きもの本棚⑮『大原千鶴さんの京都きもの暮らし』*季節の迎え方を知る

きもの本棚⑮『大原千鶴さんの京都きもの暮らし』*季節の迎え方を知る

桐箪笥の中身が見てみたい…。続いては『きょうの料理』でお馴染み、大原千鶴さん。

私が最初に大原さんを知ったのは、BSの番組『京都人の密かなたのしみ』だ。ドラマにミニコーナーがあって、大原さんは男性アナウンサーを相手に、京都の食文化を紹介していた。料理をしながら、淀みなく繰り出す京言葉。『花背』のドキュメンタリーや、カウンターキッチンのアトリエで、ゲストに料理を振る舞う『あてなよる』を楽しみに見て

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きもの本棚⑭工芸ライター・田中敦子さんの無地系紬とは?

きもの本棚⑭工芸ライター・田中敦子さんの無地系紬とは?

目下の関心事項は、着尺の枚数だ。アンティークの愛好家は30枚以上をお持ちというお方もチラホラ。では、正統派コーデなら?

工芸ライターの田中敦子さんは『和楽』の森田空美さんの連載を手がけ、着物の分野の書籍も多い。田中敦子さんが自前の着物と、師と仰ぐ森田空美さん、染色史家の吉岡幸雄さんとの対談、“憑かれたように”語られる帯や履き物の歴史と、見た目はコンパクトながら、濃いぃぃぃ内容の本。知りたかった日

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きもの本棚⑬『銀太郎さんお頼み申す』と私の振袖写真

きもの本棚⑬『銀太郎さんお頼み申す』と私の振袖写真

近頃、月刊誌で『銀太郎さんお頼み申す』を毎月、買うようになった。新宿のカフェで働くさとりちゃん(25歳)が元芸妓で、器のギャラリーを営む銀太郎さんに魅せられ、着物に目覚める話だ。四月号では、さとりちゃんがホテルの結婚式に振袖を着て出るために奔走し、友達だけでなく、いろんな世代の人が振袖の価値を見直す。読んでいて、腑に落ちた。去年の夏、私が長唄の演奏会に集まった着物姿の観客について書いたのも、こうい

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