きもの本棚⑮『大原千鶴さんの京都きもの暮らし』*季節の迎え方を知る
桐箪笥の中身が見てみたい…。続いては『きょうの料理』でお馴染み、大原千鶴さん。
私が最初に大原さんを知ったのは、BSの番組『京都人の密かなたのしみ』だ。ドラマにミニコーナーがあって、大原さんは男性アナウンサーを相手に、京都の食文化を紹介していた。料理をしながら、淀みなく繰り出す京言葉。『花背』のドキュメンタリーや、カウンターキッチンのアトリエで、ゲストに料理を振る舞う『あてなよる』を楽しみに見ているうち、大原さんは『きょうの料理』でコロッケでカツ丼を作る大胆さに至り、シュウマイのお味噌汁を「見慣れない景色が続きます」と笑っていたが、本来は料理旅館で育ったお方。
大原さんの大胆さは着物でも、健在。『大原千鶴の京都きもの暮らし』は世界文化社『きものsalon』2017年から2023年までの連載を書籍化したもので、前半が真田紐を始め、大原さんの愛用品とコーデの流儀。後半が一年の着こなしの紹介だ。
大原さんのテッパンコーデは、白地やクリーム色に縞や絣、微塵格子、霞模様などなど、細かい柄が全体に入った織の着尺。だんだん、暑くなる季節にはブルーを、そして、9月からは葡萄色などの秋色の登場回数を増やし、気温が下がるにつれて色は濃くなり、お正月から、定番の薄い色にリセット。というのが、この本での提案。定番を夏色の青に寄せたり、逆に葡萄色に寄せたり。街中でのリアルな着姿をずらりと並べて見られる機会はまれなので、飽きずに眺めていられる。自分の手持ちの着物も、色で並べてみた。「あら、今日は珍しい色を着てるのね」って言われる一着が加わると、季節の変化を感じ安いのかも。