『懸想文売り』参の文〈ボンボニエール〉
参の文〈贈歌〉
忘れられない。
どんなに消去しようとしても、記憶の隅に蹲ったまま離れない。あの日のことが。
高校三年生の、最後のホームルーム。
受験を控えた私たちに、話し合い事項があるはずもなく。
最後に遊ぼう、と誰かがいった。
机を後ろに下げて、丸く椅子を並べて。
始めたのは、椅子取りゲームの〈フルーツバスケット〉。
クラスを苺、蜜柑、桃、檸檬のグループに分けて、鬼役は先生。
一脚ずつ椅子を減らしていき、座れなかった人は輪に戻れないルールで。
私は林檎グループだったかな