シン映画日記『ヴィレッジ』
ユナイテッドシネマ浦和にて横浜流星主演、藤井道人監督・脚本『ヴィレッジ』を見てきた。
『かぞくのくに』や『新聞記者』、『宮本から君へ』、『愛しのアイリーン』、『空白』など、2010年代、2020年代の邦画界に社会派の潮流を作り、惜しくも昨年6月11日に亡くなられた河村光庸プロデューサーの最後の製作総指揮作品、つまり遺作に当たる。
令和の日本においても能楽等の伝統芸能を伝えながら、村の山間部に作られたゴミ最終処分場で経済を回す田舎の村の人々の共同体の業と倫理・観念、日本の地方の限界集落の日常と闇を見事に描いた現代日本映画である。
主人公・片山優は母親を養いながら、山間部にある能楽の村・霞門村のゴミ処理施設で働くが、優が幼い時に優の父親が起こしたある事件が元で近所から疎まれながら暮らす。ある日、村に優の幼馴染みの美咲が東京から帰郷し、村のゴミ処理施設で働くことになり、美咲は内向的な優に手を差し伸べる。
霧がかった山間の麓の村・霞門村でゴミ最終処分場で昼も夜も働く主人公・優。序盤はギャンブル&アル中の母親を養い、殺人犯の家族として近所に疎まれ、職場では陰湿な虐め・パワハラに遭い、鬱屈な日々が本人目線と職場に新しく入ってきた金髪の若者・筧龍太の目線などで描く。
だからといって村人全員から嫌われているわけではなく、古田新太が演じる村長兼ゴミ最終処分場の経営者でもある大橋修作にはわりと温かな目で接してもらったりしている。
これが、黒木華が演じる優の幼馴染みが村に帰って来ることで化学変化が起き、引っ込み思案な優をやや強引に引っ張り、良い方向に導く。
それは優個人だけでなく、
薪能が盛んで、霧がかった山の風景が綺麗な村の光の部分と
景観や環境を壊すだけでなく、夜には反社会的勢力の闇の仕事も請け負う村の負の部分も描かれていた霞門村も
ゴミ最終処分場の社会科見学ツアーを軸に
テレビ等のマスコミに広くPRして村を明るい方向に導いている。
昔の今村昌平や山本薩夫などの社会派の日本映画なら田舎村の古い因習と閉塞的な限界集落の様子ばかりを映して終始鬱屈とした雰囲気になりがちな映画に新しい方向性を見せた。
そこが物凄く新鮮で、
河村光庸プロデューサーと藤井道人監督を中心としたKADOKAWAとスターサンズのスタッフチームらしい。
『ヤクザと家族 The Family』では令和の新たなるヤクザ映画を作り、本作では令和の新たなる限界集落映画を作り上げている。
村がいい方向に行くのも、過去の出来事を集団で疎む村八分も、
闇の仕事を引き受ける臭いものには蓋な体質も全て人間の集団心理を描いている。
そして、豪華キャストも見事に光っている。
横浜流星、黒木華、中村獅童、杉本哲太、作間龍斗といった河村プロデュース作品初参加の二人が新しい息吹を見せながら、
『空白』の古田新太、『宮本から君へ』の一ノ瀬ワタル、『愛しのアイリーン』の木野花、『MOTHER マザー』の奥平大兼など、かつての河村プロデュース作品の個性が強かったキャストが再集結をし、
河村光庸プロデューサーの遺作に華を添えている。
古くは木下恵介、山本薩夫、今村昌平らのイズムを継承しら
最近なら瀬々敬久、吉田恵輔らの社会派作品にも勝るとも劣らないニッポンの限界集落映画である。