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希望の糸@東野圭吾

書名:希望の糸
著者:東野圭吾
出版社:講談社
発行日:2019年7月5日
読了日:2019年7月7日
ページ数:354ページ
備考:書き下ろし

おすすめ。是非読んで欲しい!

東野圭吾さんの新刊「希望の糸」
サスペンスでありながら
人間・家族模様を描いた
素晴らしいヒューマンドラマ。

最近、ビジネス本・新書ばっかりでしたが
やっぱり小説、特に東野圭吾さんの作品は
読者を引き込む力が圧倒的で
今回の作品は特に胸を打たれました。

ネタバレなしとありに分けて感想書きます。

✅ネタバレなし

一気読みしました。(というか、一気読みしてしまう)

ある殺人事件で絡み合う、容疑者と若き刑事。
この若き刑事については読んでもらえればわかります。

帯にあるように「家族」がテーマです。
一つの事件の背後に隠された「家族」
昨今、痛ましい事件が多い世の中ですが
「家族」と言っても、色々なあり方がありますよね。

結婚だけじゃなく、事実婚、内縁状態
お相手もLGBTや最近なんかだと夫婦別姓など
も議論されるような世の中になってきています。

どんな家族形態であろうと
この世に生を受けるという事は必ず
親というものがどんな人にもいるはずです。

親子って特別だと思います。
切っても切れない仲。
親子って血が繋がっているかどうかも
あまり関係ないのかなって思います。
育ての親とか言いますけど、もし仮に私の親が
今になって実の親でないとわかったとしても
ここまで愛情を注いでくれた事にかわりはないので
本当の親がいたとしても会いたいとは思いません。

親子ってそういうものかなって思います。

本作品のほかのテーマとして私が感じたのは
「愛情」「親子」「秘密」
かな。

私自身は両親と妹の4人家族で育ちました。
両親には今も育ててもらった恩を感じるし
妹にも感謝しています。
今はそれぞれが遠方で暮らす環境ですが
「希望の糸」で繋がっているのは間違いないです。
今一度、家族を大切にしたいと思います。

✅ネタバレあり

ここからはネタバレありです。
少しでも本に興味のある方は
読了後にスライドしてくださいね。
すでに読まれた方は、共有しましょう。

「子は鎹」っていうのをふと思いました。

親は子どもを可愛がると共に
子供がいるだけで、生きがいという人は
多いのかなと思います。

✅子どもの心

萌奈は父である行伸から
自分が生まれる前に亡くなった
兄・姉の話を聞かされて、代わりのような
扱いを受けて、すごく複雑な気持になる。

こういう事って子どもは敏感です。
兄妹であってもどちらかを贔屓してるつもりなくても
子どもはそういうのを察して
自分に対する愛情が不足していると
誤解する事もある。

期待されて生まれてきた
望まれて生まれてきた
事に間違いはないけれども
萌奈をいきがいにする親の気持も
わからなくないけれども
子どもからしたら、それは重いと
感じてしまう気持もわからんでもないかな。

「萌奈のことが大好きだからだ」

これだけで十分だよという
萌奈の最後の気持を考えると
子供って血が繋がっていなくても
その愛情を受けていると思えば嬉しいもの。

難しい事を言うよりストレートに伝える
これって家族の中では結構大切だよね。

✅悪人はいない

この作品では殺人が起こるわけだけど
誰一人として憎めるような人物がいない事。
もちろん殺めてしまった”多由子”は許されるべきではないが
2度にわたる中絶や子どもを欲しいという
彼女の生き方を考えてみると
悲しい気持にもなる。

殺された弥生も”めぐり合い”を大切に
してきた事がきっかけに
殺されるとは思ってもいなかっただろう。

この作品を通して感じたのは
人それぞれ育った環境や
抱えているものが違うから
簡単に家族・子供などの話題に触れるのは
相手を傷つけてしまう恐れがあるという事。

子供が欲しくてもできない人もいるだろうし
それを気にしないと口にする人もいるだろうけど
そこに至るまでの葛藤などはあったと思うと
気軽に話に持ち出したりはできない。

行伸と怜子は体外受精で授かった
我が子が実は我が子でない可能性が
高いとわかっていても産むという決断をする。
それくらい子供って欲しいのだなって思った。

✅加賀恭一郎

「刑事というのは、真相を解明すればいいといものではない。取調室で暴かれるのではなく、本人たちによって引き出されるべき真実というのもある。その見極めに頭を悩ませるのが、いい刑事だ」


なんという人情に溢れた刑事…。
実際、こんな刑事がいたら惚れてしまう。

今回のもう一つのテーマは「秘密」かなと思う。

・遺言書での秘密
・体外受精の秘密

どちらも隠し通せる秘密ではあったけれども
共通しているのは、墓場まで持っていけなかった事。
秘密というのは当然抱えなければならない。
それを抱え続けるというのはかなり大変である。
良心の呵責に悩まされたり
罪悪感だったり
その秘密を誰かに打ち明ける事で
自分自身が楽になりたいといった気持も
少しはあるのではないのかなって思いました。

もちろん、真実を伝える事で
誰かがハッピーになったりする事もあるだろうけど
その真実が伝わらなかった場合
今の幸せが持続するという事もあっただろう。
どっちが正解とかはないとは思うけれども
私が思うのは秘密を持つものではないなと思った。

とにかく本作品は「家族」「子供」「秘密」「愛情」と
いった人間を軸に置いた
すごく共感もできる素晴らしいサスペンスであり
ヒューマンドラマであると思いました。

加賀恭一郎、松宮といった刑事の温かみもあり
なんかやっぱり東野圭吾って
すごいなって思いました。

これ絶対映画化するよなって思った。
というか、ぜひして欲しいな。


<以下、登場人物、完全なネタバレあり>

・汐見家
汐見行伸(父)
汐見怜子(母)*白血病で亡くなる
汐見尚人(長男)*新潟中越地震で被災・死亡
汐見絵麻(長女)*同上
汐見萌奈 *体外受精で生まれた子
(実の両親は弥生と哲彦)

・芳原家
芳原正次(父)*婿養子、末期ガン
芳原正美(母)*事故で障害
芳原亜矢子(娘・たつ芳の女将)

花塚弥生(51歳・被害者)
綿貫哲彦(弥生の元旦那)
中屋多由子(内縁の妻)

・松宮家
松宮克子(母)
松宮修平(長男)
*実の父は芳原正次、亜矢子とは異母姉弟

・警察
長谷部(若手刑事・所轄)

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