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残暑

残暑

強烈な日差しの下
私が焼け付く
地面に黒い私がうまれる
地に張り付いた平らなものは
じりじりと動き始め
そのうちするりと這い回る
次の季節を求めて

献歌2023

飛べない代わりに歌う麗人
空を翔けるハイトーンに憧れて
ただ ただ 憧れて
声を待ち侘びて

突然の雷鳴に 動かなくなる
冷たくなったカナリア
埋めて
花を手向ける代わりに
歌を
あなたとは違った形の
歌を

まねてさえ似てる者すら居ない声
こだましている数多の空で

ex.Laputa akiに捧ぐ

目は凪

ドンドン ドドンドン
チンドン屋みたいな 太鼓の音
デモクラシーの叫び声
吹き荒ぶ
これは嵐か
荒れ狂う
竜巻 上空へ巻き上げる



畑のキャベツ
カイト
あっ カイト?
捕まえておこう
長く垂れ下がった赤い糸を引く
風は止まない
手に入れたカイトは飛ばない
ここは中心
凪いでいる
荒れ狂う周囲の
君は何に声を上げている?

ピンク

ピンク

窓を開けると
じんちょうげ
春の香りが胸を刺す

去年の今は 桜を見てた
一面ピンクの道を行き
これから起こる結末なんて
何も知らずに
幸せで

全てを知った瞬間に
全てが崩れてしまうなんて
夢にも思うことがなく

風に舞う じんちょうげ
はじけ散りゆく 桜の花びら
ほら
今年の春は
とても冷たい

雲

できることならば
このままずっと何も変わらずにいたいのです
できることならば
何もせずに漂っていたいのです
そう
雲のように
空を漂っていたいのです

罵ることもなく
いがみあうこともなく
切なくなることも 淋しくなることも
嫉妬することも 愛しく思うこともなく
ただ淡々と
ただぼんやりと
漂っていたいのです

この世界には 要らないものが多過ぎる
全て棄ててしまいたいけれど
棄てられないものが多

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ショコラティエ

ショコラティエ

魅惑のチョコレートを携えて
君にあいにゆく
チョコレートの祭典になってしまった愛の日を
避けて
透き通った台詞を届ける
どんなフレーバーが好きなのか
そもそも甘い物は苦手じゃないのかすら
気にもせず
熱を帯びて溶けそうな両手いっぱいに
抱えきれない程の
想いを

死に物狂いで生きよう

死に物狂いで生きよう

坂を転がり落ちるように
目まぐるしく変化する社会
未来は闇
走り続ける真夜中の点滅する黄色信号

屍を見たことがあるか?

志半ばで病に倒れる
崖から足を踏み外す
怨念が手を伸ばし足に纏わりつく
振り払う
必死で振り払う
生きているか?
必死で生きているか?
行き着く最後に死はあるのか?

駆け抜ける暗闇の点滅する黄色信号

愛犬愛歌

愛犬愛歌

フカフカのソファーをトイレ代わりにしてから
ソファーに乗っちゃダメってママが言う
夜のご飯を食べ終わるといつも
ママはリビングのソファーにゆったりと腰掛けて
隣にお兄ちゃんがくっ付いて大きな本を読んでいて
あたしは胴長短足のからだを尻尾に丸めてママの足元にいる
そのうちパパが帰ってきて
どかっと床に座るから
パパのお膝にいちもくさん
あたしもママみたいにソファーに座るんだから

***

7歳児に

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ライムライトの光

ライムライトの光

同じ時代に
同じ言語で
関わり合える奇跡よ
何十年もの時間を積み重ね
目と目を合わせられる喜び
ほんの些細な笑い声さえ
録音して繰り返し聞き返したくなるような
幸福な瞬間
貴方の問いに
私が応える
私の好むものを
貴方が量産する
フィードバックが加速して竜巻がおこり
中心から龍が出る

カロル

カロル

太陽よ
万物の恵みの大御神よ
12の月にいなくなる
3日後に新たに見えなさる
大きな生まれ変わりのこの良き日に
宴を催し
歌い狂おう
凍える大地から生まれた我らの
生命をたたえるこの歌を

レモンイエロー

レモンイエロー

檸檬をがりりと噛む苦さは
青春の香りと昔の人は言ったが
レモンは爽やかな甘さの印象
皮なんて齧ったりしない
農薬とか気になるじゃん
唐揚げにかける かけない論争くらいが丁度良い

火種から上がるのは

火種から上がるのは

立ち昇る香りに何を想う
舞い上がる火の粉に何を見る
果てのない記憶の沼に沈んで
底にある哀しみに涙する
浅はかな己を呪っても
君の瞳に映るのは
神を求める真っ直ぐな笑顔
半狂乱の果てにあるのは
なりきり ハラキリ
そう見えるそれっぽいパフォーマンス

真夏グラス

真夏グラス

強い日差しが照りつけて
氷が
もう ない

ガラスのコップは汗びっしょりだし
味の薄くなったオレンジジュースを
ストローで
ジュルジュルすする音が響いて

もう なくなっちゃった

ドラァグクイーン

顔の見えない人の素顔を探るより
すべてそのままを受け止めよう
いまだかつて見たことのない程美しく
咲き誇る大輪の花を