マーコ・ナカガワ

かつて銀行員として、バブル期、リーマンショックの時代に、頭の上をハゲタカが飛び回る中、…

マーコ・ナカガワ

かつて銀行員として、バブル期、リーマンショックの時代に、頭の上をハゲタカが飛び回る中、堆く積み上がる不良債権の山を崩し、お宝を発掘しては再生する仕事に没頭。 素敵なモノを作る会社の見張り役。アート・ナビゲーター。クラシック。コントラバス。上方落語。歌舞伎。水泳。読書。歴史。経済。

最近の記事

音楽を愉しむ~久しぶりにフルヴェン「第九」を聴いて

 音楽を聴くと、とても不思議なことが起こります。 それは、アートや文学に接するときにもある程度は起こりうるものなのですが、音楽の方がずっと顕著に頻繁に起こるのです。  こんな経験がありませんか?  みなが帰りを急ぐある夕暮れどき、喧騒の道を歩いていて、ひょんな調子で頭の中にある聞き覚えのある音楽のひとふしが流れてきます。 それをきっかけに、記憶の底に眠っていた「ある」甘美な思い出が頭の中に鮮明に浮かび上がってくる、あるいは、はっきりとは浮かび上がってくるものはないが、胸の奥

    • 「ジャパノミクス」って、なんどいや?(30)  その後の三つの日本経済論~その1「金森久雄氏の宿題」

      1990年代、バブルが崩壊した後でも、日本経済センター理事長であった金森久雄氏は次の三つの理由から、日本経済が、引き続き力強い発展を続けることができるはずだと論じていました。 ⑴    積極的な経営者、優秀な労働力、労使協調、官僚、中小企業について、日本は外国に対し断然たる優位にある ⑵    技術革新や周辺国との平和な国際環境が維持されている ⑶    ⑴と⑵を前提として、日本経済が本来的に有する「高い転換能力」の基盤の上に立っている。 そして、これからの日本は、持ち前

      • 「ジャパノミクス」ってなんどいや?(29)~コーポレートガバナンスのあれこれ

        (ドイツのコーポレートガバナンス改革) 近年、企業の会計不正や品質不正、あるいはハラスメントなどコンプライアンス上の不適切な事件が起こるたびに、問題視されるのはその企業のコーポレートガバナンスです。 アメリカにおいて、2001年のエンロン事件や2002年のワールドコム事件のような大規模な会計不正が相次いで明らかとなったことで世界経済は大きく動揺しました。これを契機に、コーポレートガバナンス(企業統治)における透明性と適切性を保証するためのガイドラインが必要であることが再認

        • (「ジャパノミクス」ってなんどいや? (28)~自由市場における「われわれ」と「彼ら」

          (J.S.ミルとハイエクの自由論) 「自由論」を書いたジョン・スチュワート・ミルは、その中で「自由」というものについて、およそ次のように語っています。 ー自由という原則は、人々が何の制約も受けずに対等に議論して、それによって社会の改善が行われる段階に達して、ようやく適用されるようになる。人びとはこうした自由が尊重される社会を目指さなくてはいけないー もともと人間は不完全な存在であり、必ず間違いを犯す、また、「時代」というものも個人と同じくらい間違いを犯す、だから、自分が

        音楽を愉しむ~久しぶりにフルヴェン「第九」を聴いて

          「ジャパノミクス」ってなんどいや?(27) ~ 自由市場資本主義という「物語」(ナラティブ)~

           (経済事象を解釈する。「事実」と「観念」ー「価値判断」の関係) 1980年の理論経済学会会長であった置塩信雄教授は「経済学の課題と方法」(「経済学研究のために1979年増補改訂第二版」神戸大学経済経営学会)の中で、経済学を学ぶとはどういうことであるか、その基本的な姿勢はどうあるべきか、ということについて、初学者に次のように説いています。 「ある特定の社会を対象とする経済学は、それがどのような社会であれ、次の諸問題を事実に基づいて理論化しなくてはならない。 ⑴    その

          「ジャパノミクス」ってなんどいや?(27) ~ 自由市場資本主義という「物語」(ナラティブ)~

          PBR>1は「結果」か「目標」か? 「ジャパノミクス」ってなんどいや?(26)

          2024年8月5日日経平均は一日で4551円下げ、1ヶ月前の7月5日の40912円から、実に▲9454円(▲23%)の下落になりました。東証の要請を受けてPBR>1倍以上を目指すとした会社も、さすがに顔色なしといったところでしょう。 2013年、第二次安倍内閣により「日本再興計画」が発表され、いわゆる「伊藤レポート」が公表されました。 「伊藤レポート1.0」では、ROE(自己資本利益率)8%以上を目指すこととし、企業には、そのための自由市場資本主義的なコーポレートガバナンス

          PBR>1は「結果」か「目標」か? 「ジャパノミクス」ってなんどいや?(26)

          宝山鋼鉄との合弁解消に思う   「ジャパノミクス」ってなんどいや(25)

          第25講 「異質論」と自由主義 先日、日本製鉄は「宝山鋼鉄」(宝山宝武鋼鉄集団傘下)との合弁を解消する、とホームページで発表しました。 「宝山鋼鉄」の上海宝山製鉄所は、鄧小平の指導の下、開放経済、市場化に向かおうとする新中国を象徴する国家的プロジェクトで、日中経済協力の象徴として新日本製鐵(現日本製鉄)が延べ1万人の従業員を投入し、「スネルの屈折点」の1985年に完成しました。その後、これを題材に、山崎豊子氏が「大地の子」という長編小説に仕立てて、ドラマ化もされましたので

          宝山鋼鉄との合弁解消に思う   「ジャパノミクス」ってなんどいや(25)

          日本的な、あまりに日本的な・・・       「ジャパノミクス」って、なんどいや?(24)

           第24講 「ジャパノミクス」は転生できる? とある小学校の社会の授業・・ 「ここに、ある目的地にある商品を運ぶことを仕事とする一台のトラック(会社)があります。目的地には商品を受け取る人(お客様)、出発地には商品を運び入れる人(従業員)がいます。車の中には運転手(社長)と助手席にナビゲートする人(取締役・監査役・経理部長)がいます。トラックの持ち主(株主)は家でテレビを見ています。」 さてここで、先生が、教室の子供に対して「誰が一番大事な仕事をしている人ですか?」と質問

          日本的な、あまりに日本的な・・・       「ジャパノミクス」って、なんどいや?(24)

          「半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(下)  「ジャパノミクス」って、なんどいや(23)

          第23講    金融行政の「バタフライ・エフェクト」  1988年「アメリカンバンカー誌」調べによれば、世界の銀行総資産ランキング20位中13行、しかも1位の第一勧業銀行から7位までは日本の銀行が独占していました。この時点で、都市銀行10行、長期信用銀行3行、信託銀行7行の計20行がいわゆる主要商業銀行という位置づけでした。 その後、国有化や合従連衡を経て金融危機がほぼ終息した2004年時点で、いわゆる主要銀行は、メガバンク3行に三井住友トラストの4行のみとなりました

          「半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(下)  「ジャパノミクス」って、なんどいや(23)

          「半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(中)            「ジャパノミクス」って、なんどいや? (22)

          第22講 「三つの試練」 (「金融ムラ」に対する「三つの試練」) その1.「金融ビッグバン」~金融の自由化と開放 1996年、自民党単独の第二次内閣を立ち上げた橋本龍太郎首相は「フリー、フェア、グローバル」を旗印とする「日本版金融ビッグバン」を政策の目玉に掲げます。 「金融ビッグバン」とは、もともとイギリスのサッチャー首相が「シティ」(ロンドンの金融街)の国際競争力を高めるために、一連の自由市場資本主義的政策の一つとして1986年に断行した金融制度改革で、証券取引手数

          「半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(中)            「ジャパノミクス」って、なんどいや? (22)

          [半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(上) 「ジャパノミクス」ってなんどいや? (21)

          これから、退屈でわかりにくい金融の話になります。 最初に、あるエピソードから。 2000年代の金融危機のただ中で、ある会社の再建のために十数行もの取引銀行団の協力を取り付ける必要があり、ある地銀の常務取締役東京支店長さんを訪れた時の話です。 「・・・・というわけで、当行がメインバンクとして会社を支えますので、御行には準主力行として、是非ご協力願いたいのですが・・・」 「暑いところ、わざわざお運びいただきご苦労様です。わかりました。当行は協力をお約束します。」 「あり

          [半沢直樹」的世界と「ジャパノミクス」(上) 「ジャパノミクス」ってなんどいや? (21)

          「ジャパノミクス」の壊し方  「ジャパノミクス」って、なんどいや?(20)

          日本経済の強みが、「ジャパノミクス」日本型経営システムにあるとすれば、「ジャパンプロブレム」を早期に解決する近道は、それを壊してアングロサクソン的な経済システムに近いものに「構造改革」させるということになります。つまり、貿易品目の制限や関税交渉だけで解決することはできないので、これまでの日本の社会に根付いた土着的経済思想そのものから否定していく、ということです。   折しも、1990年代以降「ジャパノミクス」の「異形性」を際立たせる格好の経済思想が欧米では主流になりつつありま

          「ジャパノミクス」の壊し方  「ジャパノミクス」って、なんどいや?(20)

          ジャパン・バッシング!!      「ジャパノミクス」って、なんどいや? (19)

          第19講 「ジャパン・バッシング」とは、ずばり「日本叩き」 アメリカの外交政策には、「60%ルール」というものがあるといわれてます。ある国の経済規模がアメリカの60%になり、さらに追い越そうという勢いのある場合、アメリカはあらゆる手段を用いても必ずそれを潰そうとするというのです。1980年代、日本はこれに抵触しました。 そして、その40年後、中国がこれに抵触し深刻な米中経済摩擦を招いています。 摩擦が激化するに先立って、まずは「異質論」が、決まって持ち出されます。 「異

          ジャパン・バッシング!!      「ジャパノミクス」って、なんどいや? (19)

          「ジャパノミクス」って、コレでしょ?  「ジャパノミクス」って、なんどいや?(18)

          猪木武徳氏は、「経済社会の学び方」(中公新書 202125日25日)の「因果推論との向かい合い方」のなかで、社会問題を考える上で事実と理論の関係において陥りやすい「プロクルーステースの寝台」(自らの価値観に事実を合わせる喩え)の陥穽に陥ることは避けなければならないと戒めています。 ですので、1980年代と「失われた20年」の間に起こった経済上の「事実」と、当時の人びとが「事実として信じたこと(信念や理論)」についての因果推論が、その陥穽に落ち込んでいないか、考えてみたいと思

          「ジャパノミクス」って、コレでしょ?  「ジャパノミクス」って、なんどいや?(18)

          「スネルの屈折点」 1985             「ジャパノミクス」ってなんどいや? (17)

          光学理論で「スネルの法則」という有名な公式があります。ストローをコップに斜めに刺したときストローが曲がって見えます。光が異なる媒体を通るとき、光の進行方向が屈折する原理を明らかにしたのがこの法則です。 振り返ってみると、1985年前後が、日本経済のその後の成功と失敗をともに準備する屈折点だったといえるでしょう。この時期の前後を境に、媒体、つまり社会の「空気」が一変したからです。 では、1985年には、どんなことが起こったのでしょうか。クロニクルにしてみましょう。 1月 

          「スネルの屈折点」 1985             「ジャパノミクス」ってなんどいや? (17)

          「ジャパノミクス」のいちきゅっぱ     「ジャパノミクス」ってなんどいや?(16)

          「ジャパノミクス」日本型経済システムとは何であったのかを知るためには、それが最も有効に機能していたと思われる1980年代(いちきゅっぱ)を詳しく見ることが必要です。 1970年代後半は、ベトナム戦争後のアメリカ経済の低迷、円高と2度にわたるオイルショックによるコストプッシュインフレ、鉄鋼・自半導体半導体を中心に日米貿易摩擦が激化します。 そして、1980年に、ロナルド・レーガン大統領が「レーガノミクス」を発表します。イギリスの「サッチャリズム」とともに、以後米英両国は、政

          「ジャパノミクス」のいちきゅっぱ     「ジャパノミクス」ってなんどいや?(16)