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かる読み『源氏物語』 【明石】 明石の君、逆転サヨナラホームランを打つ

どうも、流-ながる-です。『源氏物語』をもう一度しっかり読んでみようとチャレンジしています。今回は【明石】を読み、源氏の新たな女性・明石の君について考えてみました。

読んだのは、岩波文庫 黄15-11『源氏物語』二 明石になります。【明石】だけ読んだ感想と思って頂ければと思います。専門家でもなく古文を読む力もないので、雰囲気読みですね。

土壇場で勝利を決定づける、逆転サヨナラホームラン

明石の君に注目して読むと思ったのは「大逆転した!」ということでした。いきなり野球用語で申し訳ないですが、野球のゲームセット、試合終了を決めるのは大概投手です。最後のアウトをとって終わるというのが基本です。もちろんチームでアウトをとっているわけですが、投手がとるという意識が強いですね。
そして、唯一、バッターボックスに立つ打者が決めるゲームセットが、サヨナラゲームですね。

ごめんなさい、しばらく野球の話になります。

さっきまで負けていたのに、一振りで逆転しそのままゲームセットという爽快な決まり方というのが逆転サヨナラホームラン。無論、サヨナラヒットで決めるということもありますが、明石の君のそれについて、自分は”逆転サヨナラホームランだ”と思いました。

自分は阪神タイガースの大山悠輔選手を応援しているのですが、大山選手が今まで(2023/04/28現在)プロで打ったサヨナラホームラン3本のうち、最も印象に残っているのはプロで初めて打ったサヨナラホームランです。

プロ3年目でまだ若手といってもいい頃、大山選手は4番を任されていました。いろいろな見解はありますが4番バッターというのは責任の重い打順で、当時4番にふさわしいのか、任せられるのか、という意見も多く見られました。

4番に抜擢されたシーズンが始まって長く4番で出場し続け、8月頃、調子が落ちて少ししんどいんじゃないのか、難しいんじゃないのかと監督が思われたのか、打順が6番になった日があったんです。野球の打順は前にいくほど打席も多くなるので、良いバッターは前の打順になります。ファンはただ見守るしかありません。

まさにその日です。4番から6番になった日、大山選手は逆転サヨナラホームランを打ったのです。底力に感動したその瞬間のことを今でも覚えています。そうして同時に思いました。将来きっと4番を打っているはずだと。
それから数年経った今、大山選手は4番を任されています。

「もうだめかも ここからどうなるんだ?」
そんな状況から大逆転する、明石の君もそれだ、と思いました。

はじめから彼女は勝利していたわけではない

明石の君は源氏が須磨から明石へ移ってきて、父親の明石の入道に猛プッシュされ契った女性です。後から見ると、源氏に重んじられて、読者視点から見ても非常にスペックも高く運も強い優れた女性というふうに見えます。

改めて読んでみますと「あれ? あれ?」となりました。どうにもこうにも明石の君ははじめから源氏に”絶対に手放したくない! 罪が許されて都に戻ったら絶対に呼ぶ!”と思われていたわけではないなと思いました。

明石の君は何かに導かれるように源氏と出会った女性という印象が強いです。父親の夢のお告げというもので、人生を決められていて、それしか歩めないといった、進むことだけを意識づけられた女性です。もしつまらない男に縁付くようなことになるぐらいなら、海に入ってしまおう、といった極端さです。

自分は明石の君を強い女性だと思っています。そんな彼女もはじめから強いわけではなく、一歩進むごとにつらい思いをしては、また一歩進むといったのを繰り返してそうなったというふうに見えますね。いざ源氏と契ったとしても、自身の身分のことを考えてしまいますし、訪れが途絶えがちになることで、やっぱり自分はそんな程度の相手なのだつらいつらいと考える。

こういう明石の君のような成り上がりストーリーというのは、あるあるだとは思いますが、結構本人は自身の運というものに対して、後ろ向きになることもあるのですね。少なくとも父親の夢のお告げに対して、「よし! だったらやってやる!」とはなっていないなと。

源氏が帰る! その直前で大逆転

源氏は許されて都に帰ります。これは明石の君にとって大事件です。
明石の君は当たり前ですが都の人ではありません。源氏が帰るとなっても一緒に行くことはできませんね。そうなるとあとで呼びよせてもらうしかないわけです。

源氏からすればその地での恋人ということになるので、そのままさようならとなってもおかしくありません。明石の君はもとより身分が違う。言い方悪いですけど軽い扱いになります。

源氏は明石の君のもとへ初めて行く時も都に残した紫の上のことを想っています。明石の君と契ってからも考えるのは紫の上のことで、明石の君と会うのは夜が更けてからでそれはひそやかに通っていたのです。

しかしもう都に帰るということで、ぎりぎりになって源氏は明石の君とじっくり何回も会うということをします。いざ、会えなくなると惜しむ気持ちになる、ということですかね。

その最後の最後で、明石の君は源氏の心を掴みきることになります。確かに明石の君は源氏の子を宿していたのでそのままということにはならない、とも思われますが、この最後の源氏と明石の君のやりとりは、明石の君が源氏相手に”都へ呼ぶ”と決意させた場面というふうに見えたのです。

明石の君は楽才がありました。箏の琴の音色を聞きたいという口実で源氏は明石の君に会ったのですが、実はここでやっと明石の君が演奏をする場面がくるんですよね。切り札は最後までとっておく、これほどのすごい武器をこれまで見せてこなかった。その強かさが好きです。この時も全部じゃなくて、もっと聴きたいと思わせるぐらい程度しか奏でないというのですから、逆にいじらしいと思うばかりですね。

それはもう主人公・源氏のことですから、そのままさようなら、とはなりませんが、絶対というか、決定的にしたのがこの最後の逢瀬だと思いました。しっかり源氏の心を惹きつけておきながら、後ろ向きな感情を見せて、源氏に「そんなことない」と言わせているのですから、もう勝ちだなと。

ここで明石の君がやっとこの物語に登場したという感覚です。ここからなのです。ここから彼女が最後まで源氏の側にいる女性の一人として確かな立場を得るというところまでが、彼女の物語だと思いました。

ここまで読んでくださりありがとうございました。

参考文献
岩波文庫 黄15-11『源氏物語』(二)紅葉賀ー明石

続き。引き続き明石の君についてと、紫の上のある一面について考えてみました。


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流-ながる-
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