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【小説編】蛸文(たこふみ)の読書記録

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僕の読書記録・小説編です。
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#小説

【ストーンサークルの殺人】満足度の高い傑作サスペンス

【ストーンサークルの殺人】満足度の高い傑作サスペンス

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜連続焼死体殺人事件〜本作はM・W・クレイヴンによるサスペンス小説で、英国推理作家協会賞のゴールド・ダガー賞を受賞した話題作である。2025年2月現在で5作品発表されているワシントン・ポーシリーズの第1作目だ。

物語は、ストーンサークルで発見される焼死体連続殺人が行われる中で、主人公・ワシントンポーが事件と繋がりをもつことが明らかになるところから始まる。

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【倒錯のロンド】(ネタバレあり)

【倒錯のロンド】(ネタバレあり)

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜叙述トリックの名作〜ミステリー小説において、「叙述トリック」というワードを出してしまうとそれ自体がもはや「半分ネタバレ」になってしまうのだが、本書は出版社の紹介文にも「叙述トリックの名手・折原一の”原点”に位置づけられる名作」という記載があり、「これは面白い叙述トリックですよ」と宣伝しているため、まぁ、ネタバレ前のこの時点で「これは叙述トリックものですよ」と

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【注文の多い料理店】宮沢賢治の名作3遍

【注文の多い料理店】宮沢賢治の名作3遍

これまでいくつか呼んでいるハルキ文庫の280円シリーズ。
今回は宮沢賢治の「注文の多い料理店」など3作品が収録された短編集である。

今回もこんな名作に僕なんかがオススメ度をつけるわけにはいかないので(笑)、各話の拙い感想だけ書いていくこととする。

〜注文の多い料理店〜たしか、小学生の教科書に載ってたのだろうか?あらすじはもちろん知ってるのだけど、改めて大人になって読んでみると懐かしさがあって良

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【兇人邸の殺人】僕はここでこのシリーズ読むのをやめます

【兇人邸の殺人】僕はここでこのシリーズ読むのをやめます

オススメ度(最大☆5つ)


「屍人荘の殺人」が傑作すぎて、続編の「魔眼の匣の殺人」もなかなか面白かったので、かなり期待して読み始めた剣崎シリーズ第三弾となる本作。

冒頭からこんなことを書いてしまうが、僕はこのシリーズはここで読むのをやめようと思う。
というのも、第三作目となる本作があまりにも残念な内容だったからだ。

前の2作は素晴らしい出来だった。一作目で起きた異常事態(ネタバレを避けるた

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【口に関するアンケート】(ネタバレあり)小さな見た目とは裏腹に作り込まれたホラー

【口に関するアンケート】(ネタバレあり)小さな見た目とは裏腹に作り込まれたホラー

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜メモ帳サイズのホラー短編〜ホラー小説が好きで、色々検索していたところ何かと目にした本作。
気になって書店で見つけたところ、その見た目にまず驚いた。文庫本よりも小さい片手に収まるメモ帳ほどのサイズであり、ページ数もそんなになさそうであった。

見た目の珍しさに思わず即購入してしまったのだった。

〜余白部分が怖い〜さて、そんな見た目とは裏腹に結構怖くて良かった

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【十戒】(ネタバレなし)どうしても「方舟」と比べてしまう。

【十戒】(ネタバレなし)どうしても「方舟」と比べてしまう。

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

以前読んだ「方舟」がかなり衝撃的なミステリ小説であった。その同シリーズとも言える本作は以前からずっと気になっていた作品である。

あらすじは、
リゾート開発計画の視察のために、とある無人島に来た9人の男女。
島には大量の爆弾があることが判明した後、とある殺人事件が起こる。犯人からは「犯人を見つけようとする者がいた場合、島を爆破する」というメッセージが。島に残され

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【残像に口紅を】究極の「思いついてもやんないよ」小説

【残像に口紅を】究極の「思いついてもやんないよ」小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

いやぁ、すごい小説だった。
本作は世界から一文字ずつ文字が消えていき、その名称にその文字を使うモノ自体も世界から消えていく、というトンデモ設定のメタ小説である。
例えば、その世界から「あ」の文字が消えると、世界から「愛」や「あいつ」の存在が消えてしまう。さらに、消えた文字が氏名で使われている人はその人自体が消えてしまう。例えば、「た」の文字が世界から消えたら「

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【生殖記】○○○視点の日常系小説

【生殖記】○○○視点の日常系小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜朝井リョウさん最新作〜「正欲」以来、三年ぶりとなる朝井リョウさんの新作。
朝井リョウさんは大好きな作家さんの1人で、今まで読んだ作品はどれも心を打たれてきた。
その大きな理由の一つは、朝井リョウさんが常に現代的なテーマに対してメスを入れる鋭い視点を持っているからだ。

「正欲」では「多様性」という言葉に鋭いメスを入れてきた。多くの人が感じていた違和感を見事に

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【さかさ星】細かすぎて伝わらない小説

【さかさ星】細かすぎて伝わらない小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆

〜貴志祐介最新作〜貴志祐介さんは「黒い家」「青の炎」「悪の教典」などの代表作で知られるホラー・ミステリー作家で、僕が学生時代にどハマりした作家である。

当時刊行されていた作品は全て読んでおり、作品数だけで言えば1番多くの作品を読んでいる作家さんである。
しばらく貴志祐介さんの作品には触れていなかったのだが、この度11年ぶりのホラー新作が刊行されたと知り、すぐに書

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【地雷グリコ】ギャンブルゲーム系小説

【地雷グリコ】ギャンブルゲーム系小説

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆

読み始める前はこんな小説だとは思わなかったのだが、面白くて夢中になって読んでしまった。
わかりやすく言うと、「カイジ」や「嘘喰い」のようなギャンブルゲーム漫画の小説版、といったところ。
とは言っても、主人公が女子高生であり、血生臭い暴力や血肉の争いは無く、純粋なゲーム対決が繰り広げられる。

ゲームは5つ。どれも独創的なゲームでルール説明の段階でいろんな戦略を考

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【逆転美人】(ネタバレ無し感想)

【逆転美人】(ネタバレ無し感想)

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜こんな記事読んでないで、気になったらさっさと読むべし〜「紙の本ならではの超絶トリック」「電子書籍化不可能」という文句でネット上で話題になってた本作。以前読んだ「世界でいちばん透きとおった物語」に雰囲気としては似ているかもしれない。

まぁ、この手の作品は前情報を一切入れずに読むのが良いと思う。読めば誰でも理解できる解説のいらないトリックなので、僕はわざわざこ

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【虐殺器官】ディテールの緻密さに圧倒される上質なSF

【虐殺器官】ディテールの緻密さに圧倒される上質なSF

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜ゼロ年代最高のフィクション〜ネットでSF小説を検索していると「ゼロ年代最高のSF小説」という触れ込みでよく見かけていた本作。前々から気になっていた作品で今回読んでみたわけだが、その没入感に圧倒されてしまった。要は最高に面白かったのだ。

戦争、内戦が本作のメインテーマであり、その世界観や作中で使われる用語などはゲームの「メタルギア・ソリッド」によく似ている

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【うたかたの日々】ひとつのジャンルでは言い表せない独創的な物語

【うたかたの日々】ひとつのジャンルでは言い表せない独創的な物語

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆

〜ひとことで恋愛小説とは言い難い〜個人的に映画にしても小説にしても恋愛ものというのが苦手である。
他人の恋模様を見ているだけで(読んでるだけで)自分が恥ずかしくなってしまうので、腹の中がむず痒くなって最後まで見ていられないのである。

本作も「青春ラブストーリーの傑作」なんてどこかで紹介されているのを見かけて最初は気にもとめなかったのだが、色んなまとめサイト等

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【チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク】ロボット悪ざんまい

【チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク・チク・タク】ロボット悪ざんまい

オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆☆☆

〜ロボット・ピカレスク〜本作を一言で言うならば、制御回路が作動しないロボットが次々と悪事に手を染める話である。

舞台は、ロボットが当たり前のようにいる近未来。家事から製造、医療まであらゆる分野でロボットが使役されている。人間の安全を守るために全てのロボットには「アシモフ回路」(詳しくは「われはロボット」の「ロボット三原則」を参照のこと)が組み込まれているが

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