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紫陽花と水機関(ショートショート)

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紫陽花や水に関わる話をまとめてあります。 水機関(みずからくり)を自由に操る少年が、語り部のように不思議な話をします。
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紫陽花と水機関(さいしょの話)

「紫陽花のきれいな場所があるんだよ」  教室。  隣の席から話す声。  梅雨の曇り空と、空…

たけなが
6か月前
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流水歯ブラシ(ショートショート)

 近頃、巷で話題になっている歯ブラシを購入し、使ってみることにした。  この歯ブラシの軸…

たけなが
2週間前
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宝石が流れてくる話(ショートストーリー)

 少年は、川から流れてくる宝石を集めるのが趣味でした。  その川は、人工的に作られた用水…

たけなが
1か月前
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虹色の尾びれ(ショートショート)

 空に浮かび上がる虹。雨上がりの街は洗濯したみたいにさっぱりとした匂いがする。  濡れた…

たけなが
1か月前
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紫陽花と水機関(はなしの続き)

「水機関って知ってる?」 「みずからくり?」  僕らは植物の生い茂る林の中を歩いている。僕…

たけなが
6か月前
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紫陽花と水機関(イラスト)

たけなが
6か月前

水たまり(ショートショート)

 雨が降ると水たまりができる。  子供の頃の僕は、その中に映る景色に、別の世界を夢見ていた。  どうにかして、何か特別な方法を使えば、水面に映る“もう一つの世界”に行けるのではないかと本気で思っていた。  水たまりの向こうの世界では、地面が空で空が地面。空の上を歩くのが普通。  空を歩ける靴を履いて、階段を下るようにどこまでも空を散歩する。ずっと下っていくと、やがて宇宙にたどり着いて、その宇宙の中では魚みたいに星たちが泳いでいる。  子供の頃の空想を思い出したのは、とある休

空想と呼吸(ショートショート)

 いつだったか読んだ漫画で、”今自分がいる街が水没する空想”をしている少女の話があった。…

たけなが
6か月前
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傘(ショートショート)

 世界の半分に雨が降らなくなって、かなりの時間が過ぎた。  どうやらその理由は、星の半分…

たけなが
6か月前
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雨粒羊羹(ショートショート)

 名前から勘違いされることも多いですが、雨をそのまま羊羹にしているわけではないので、安心…

たけなが
6か月前

レインオールドファッション(ショートショート)

 久しぶりにドーナツ屋さんに来た。  普段はコンビニやスーパーなんかで買っているため、こ…

たけなが
6か月前
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水と靴紐(ショートショート)

「水はどんなところにでも行けるんだよ」  小学校の頃、彼女はそんな事を言った。ちょうど僕…

たけなが
6か月前
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水サイコロ(ショートショート)

 小川の流れる音が聞こえてくるとき。  その中にコロコロと転がるような、不思議な音が聞こ…

たけなが
6か月前
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紫陽蝶(ショートショート)

 道に迷ってしまった。僕は今、深い森の中を歩いている。  先ほどまでジメジメと蒸し暑かったはずの空気が、急に冷たくなってきた。  そのせいか、汗がひんやりと肌に凍みる。  どこかの方向へ歩いていれば、いつか抜け出せるだろうと思っているけれど、一向に終わりが見えない。  足を酷使しているせいか、指先が痛い。歩くことでしか現状から抜け出せないことは分かっているけれど、どうにも気が進まない。惰性でなんとか行動しているせいだろう。  日々の生活の疲れを癒すために、ハイキングに繰り出