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紫陽花と水機関(ショートショート)

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紫陽花や水に関わる話をまとめてあります。 水機関(みずからくり)を自由に操る少年が、語り部のように不思議な話をします。
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紫陽花と水機関(さいしょの話)

「紫陽花のきれいな場所があるんだよ」  教室。  隣の席から話す声。  梅雨の曇り空と、空…

空気の切り取り方(ショートショート)

 空や空気を食材として使いたい時、近くに生えている植物に目をやりましょう。特に、その葉っ…

サンドイッチ(雑記•ショートショート)

 八切りの食パンを買ってきます。  サンドイッチを作りましょう。  具材にレタス、きゅうり…

流水歯ブラシ(ショートショート)

 近頃、巷で話題になっている歯ブラシを購入し、使ってみることにした。  この歯ブラシの軸…

宝石が流れてくる話(ショートストーリー)

 少年は、川から流れてくる宝石を集めるのが趣味でした。  その川は、人工的に作られた用水…

虹色の尾びれ(ショートショート)

 空に浮かび上がる虹。雨上がりの街は洗濯したみたいにさっぱりとした匂いがする。  濡れた…

紫陽花と水機関(はなしの続き)

「水機関って知ってる?」 「みずからくり?」  僕らは植物の生い茂る林の中を歩いている。僕と、同級生のAさん。それから、僕らを先導する不思議な少年。  少年の問いかけに、Aさんは首を傾げる。僕もよく分からず、彼女と顔を見合わせる。 「水機関はもともと、水の力を使って人形を動かしたりする演芸のことなんだけどね」  少年は目の前の草をかき分けながら進む。その動きは随分なれたもののようで、むしろ僕らが親に連れられる子どもみたいに感じる。  “おそらく道になっている場所”を進んでいく

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紫陽花と水機関(イラスト)

水たまり(ショートショート)

 雨が降ると水たまりができる。  子供の頃の僕は、その中に映る景色に、別の世界を夢見てい…

空想と呼吸(ショートショート)

 いつだったか読んだ漫画で、”今自分がいる街が水没する空想”をしている少女の話があった。…

傘(ショートショート)

 世界の半分に雨が降らなくなって、かなりの時間が過ぎた。  どうやらその理由は、星の半分…

雨粒羊羹(ショートショート)

 名前から勘違いされることも多いですが、雨をそのまま羊羹にしているわけではないので、安心…

レインオールドファッション(ショートショート)

 久しぶりにドーナツ屋さんに来た。  普段はコンビニやスーパーなんかで買っているため、こ…

水と靴紐(ショートショート)

「水はどんなところにでも行けるんだよ」  小学校の頃、彼女はそんな事を言った。ちょうど僕が、親の仕事上の理由で引っ越しを一週間前に控えた日のことだった。  当時の僕らは男とか女とかの区切りはなく、友達とかバディとか、そんな言い方が似合うような感じだった。 「どんなところにでも?」僕は聞き返した。夕暮れの空を眺めながら。とても綺麗だと思っていた。そんなことをぼんやり考えていた僕を後目に、彼女は続けた。 「そう。どんなに狭い隙間にも入っていけるし、目の前から無くなったように見